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悪質なリフォーム業者の撲滅を目指す!業者の選び方をサイディングのプロに聞いてみた

外壁材で日本で最も採用されているサイディング。とくに窯業系サイディングは一般住宅では80%以上で採用されているスタンダートな外壁材です。

今回はそんなサイディングのプロ、一般社団法人木造住宅リフォーム協会の代表であるDr.サイディングこと古畑 秀幸さんに外壁業界での活動経歴、最近の悪徳業者や今後の展望についてお話をお聞きしました。

いままでの経歴と協会設立のきっかけ

編集部

古畑さんの今までの経歴は活動内容を教えてください。

古畑さん:

1997年22歳の時に日本ハードボード(現:ニチハ)に入社し、主に窯業系サイディングの市場開拓業務を担当しました。 窯業系サイディングとはセメントを水で練って固めた外壁材のことです。

日本では、窯業系サイディングが普及するまではモルタルが一般的でしたが、窯業系サイディングは防火性能が均一で、表面に凹凸が付けられ、さらに色々な印刷ができるとあって非常に優れた性能を持っているため1995年頃を境にモルタルから切り替わっていきました。

現在大手ハウスメーカーのほとんどが窯業系サイディングに切り替わっていて、現在3階建て以下の住宅の8割以上は窯業系サイディングを使用しています

1985年には旭硝子に入社し、窯業建材事業部名古屋支店にて愛知・岐阜・三重の市場開拓を経て、後に東京本社で窯業系サイディングの営業統括として業務を行っておりました。

その後2002年に旭硝子を退職してニューライフ・アカデミーを設立し、塗料メーカー、窯業系サイディング工事会社、建材メーカーなどの支援活動をスタートしました。2014年には現在の一般社団法人木造住宅塗装リフォーム協会の代表理事となり、現在に至っています。

木造住宅塗装リフォーム協会は、簡単に言えば「国土交通省からお墨付きをいただいた安心できるリフォーム事業者団体」の一つです。診断技術及び施工技術の向上と普及、及び消費者への正しい外装リフォームの情報提供と相談窓口の設置を目的として設立しました。

目的の中には、「悪質なリフォーム業者を業界から撲滅する」も含まれています。

昔からリフォームや塗り替えを「金儲けの手段」に使う人たちは多く、会社員時代にも悪質業者による問題をたくさん見てきました。現在でも、ただただ金儲けに走る業者が多く、消費者が私どもに相談するケースも増えています。

 こうした問題を防ぐため、また解決するために活動を続けております。

 最近はわざと外壁を壊す悪質なリフォーム業者も存在する

編集部

昨今、悪質なリフォーム業者によるトラブルが多いと聞きましたが、どういったトラブルが多いのでしょうか?

古畑さん:

近年増えているのは、点検商法による被害相談です。例えば屋根の点検商法では、ある家の屋根点検を行った業者が点検ついでに周りを見渡し、次の点検先、言葉は悪いですがいわゆる「カモ」を探します。

点検の対象にされやすい家の条件には色々とあるのですが、例えば日中にお年寄りや女性が一人しかいない家などは点検商法の業者に狙われやすいです。

そうした家を探し、「そこで工事をやっているんですが、たまたまお宅の屋根の板金がめくれているのが見えて…。ちょうどそこで工事やっているので、ついでにお宅の家も点検しますよ」みたいな話をします。

そして、半ば強引にその家の屋根に登り、点検する振りをしてペンチで問題のない板金箇所をわざとめくりあげて壊すんです。

壊したら写真を撮り、その写真を家主に見せて「やっぱり傷んでました!今だったら近くで工事をやっていますし、ここに足場を持ってくるだけなので安く工事できますよ」と話をして修理を勧めます。

これはあくまでも一例で、点検商法を行う業者はその時の事件やニュースを見て不安を煽るように話をしてきます。

例えば地震後とかは、倒壊を免れた家を訪れて「点検したらやっぱり地震の影響で家が大きく傷んでます」みたいな話をするケースも多いです。

こうした相談は特に地震や台風の災害後に増える傾向にあるので、災害後で不安になっているときは悪質な業者に十分注意してほしいと思います。

災害の起こった地域の建て替えやリフォームの情報は、国土交通省の「住まい再建事業者検索サイト」で優良な団体・業者を検索できます。ここを利用すれば、ほぼ100%悪質な業者は除外できますので、ぜひ活用してください。

ただ、よほど法外な金額を請求されたとか、非常に強引な売り方をされない限りお客様が被害に気付いていないケースも多く、悪質な業者による被害の実態が見えてこない部分もあります。例えば、今はお客さまもインターネットで相場が簡単にチェックできることもあり、法外な料金を請求するあからさまな「ぼったくり業者」は減っています。

また最近で多いのは、大体相場通りの金額で請け負い、その仕事をそのまま安く仕事を請け負う粗悪な下請け業者に丸投げするパターンです。

粗悪な下請け業者は安い料金で利益を出すため、材料や塗料の量をケチったり、海賊版・汎用品といった安価で低品質な部材を使用します。すると、本来10年持つはずの工事なのに、3年ほどでシーリング目地の塗膜剥離や切れなどの劣化が始まってしまう。

ほかにも、「うちの塗料は40年の耐久性がある最高級の塗料を使用していますよ」と効果不明な塗料を勧め、高額な費用を請求する手口もあります。

悪質リフォームでも被害にあっていることに気づかない人も多い

古畑さん:

手口がより巧妙化してきているため、そもそも被害に遭っているのに気づかないお客様も多いようです。すでにある住宅のリフォームトラブルだけではなく、新築時にしっかりとした工事を行わなかったことによる、新築のトラブルも増えてきています。

住宅メーカーでは、ローコスト住宅として価格の安い住宅をアピールしていますよね。ところが、売値を下げて住宅を販売するとそのしわ寄せは当然下請け業者に行きます。その結果、先ほどのように下請け業者による安価な部材の使用や手抜き工事が行われ、新築から10年以内、下手すると5年もしないうちに様々なトラブルが発生します。

ローコスト住宅の場合、そもそも品質保証が新築から2年といったケースもあり、3年や5年で住宅に劣化が発生した場合、「リフォームできますが費用がかかります」となってしまうわけです。業者の本音としては「安く建てたのだから我慢すべきところは我慢してほしい」みたいに考えているところはあるんだと思います。

5年10年先まで考えて、真面目に工事をやっている業者からするとこうした業者のやり方は非常に無責任な態度だとは思いますが、残念ながらこうした業者はかなり増えています。

まず業者や見積もりを疑うことから始めよう

編集部

リフォーム依頼時のトラブルを防ぐコツや、優良な業者を選ぶためのポイントについてお聞かせください

古畑さん:

悪質な業者に引っかからない方法としては、まずは「訪問営業はいったん疑ってみる」ことです。トラブルに遭った方の多くが訪問営業で契約したケースでした。

もちろん訪問営業する業者すべてが悪質というわけではありませんが、訪問営業をする業者の中に悪質な業者が多く紛れているのは事実です。特に、玄関先に足を突っこんで強引に話を進めてくる業者は疑った方がいいでしょう。

「そもそも訪問販売に来てほしくない」「実際に来た営業マンを断るのが苦手」という方は、警視庁や消費者庁が作った「訪問販売お断りステッカー」を玄関先に貼っておくのも有効です。

ステッカーを貼るだけでも多くの業者は「この家は対策しているからやりにくいそう」と思い、訪問を避けるので一定の効果はあります。それでも営業マンが来るようであれば、ステッカーを指して「警察に電話します」というだけでほぼすべての業者が帰ります。

というのも、住民が拒絶の意思を示しているにも関わらず、敷地内に入ってきたり営業を行う行為は違法とされているからです。万が一、悪質な業者と疑われる業者の話を聞いてしまった、見積もりをしてしまった場合は、「住まいるダイヤル」か「消費者生活センター」に連絡をしてください。

住まいるダイヤルhttps://www.chord.or.jp/
消費生活センター(国民生活センター)https://www.kokusen.go.jp/map/
消費者ホットライン電話番号:188(いやや)

住まいるダイヤルは、国土交通省の外郭団体が運営している住宅の総合相談センターです。住宅に関するあらゆる相談を受け付けており、また問題が起きた後の対応についても教えてくれますので、リフォーム関係で困ったことがあれば、まずは住まいるダイヤルに相談してみるといいでしょう。

優良業者を見分けるポイントは「正しい知識をつけること」

古畑さん:

逆に優良な業者を見分けるポイントですが、まずは国土交通省のリフォームガイドブックを見ていただき、リフォームに対する正しい知識や進め方を学んでください。

悪質な業者に騙されないためには、「お客様が知識をつける」ことも重要だからです。お客様側もある程度知識がないと、業者にいい様にされてしまいます。

塗装というのは見えない作業のため、どんな適当な業者が適当に作業しても仕上がり直後は綺麗に見えてしまいますが、適当な仕事だと1年くらいで問題が起きてきます。

こうした工事品質が見えない作業を行う業者を選ぶ際は、技術力や知識の有無で判断しないといけませんが、そのためにはお客様側もある程度知識を学び、無料診断に来た業者に色々と質問するなどして見極めなくてはいけません。だから、まずはリフォームガイドブックを読んで、リフォームに関する最低限の知識を持ってください。

また、リフォームガイドブックの中には、安心できるリフォーム業者の探し方も載っていますのでそちらも参考にして欲しいと思います。

ほかにも、国土交通省の「住まいるダイヤル」や、木造住宅塗装リフォーム協会が運営する「窯業系サイディング材メンテナンス技術研究所」のサイトを見れば優良な業者が見つかるでしょう。

悪質な業者の相談例

地元の業者に外壁塗装を依頼しましたが、契約違反が発生しました。見積もりではシーリングに「オートンイクシード」を使用予定でしたが、「ペンギンシール」が使われていました。業者は補修に使用しただけと説明しましたが、証拠はありませんでした。

さらに、オートンイクシードは後打ちが推奨されていますが、業者は先打ち後塗装で問題ないと主張しました。サッシ周りでのほこりの上に増し打ちも確認されました。

業者を信用できなくなり、契約解除を希望しています。工事代金の支払いを拒否し、違約金を請求することは可能でしょうか?

古畑さんのアドバイス
国土交通省運営の「住まいるダイヤル」へご相談して下さい。経緯をまとめと工事請負書、約款と見積書をお手元へご用意してご相談してみて下さい。

隣近所や知り合いからの「生の声」で業者を探すのも有効

古畑さん:

アナログな探し方も有効です。例えば隣近所や知り合いで、きちんとリフォームを行ってくれた業者さんと付き合いがある方がいれば、その方に直接話を聞くのもいいでしょう。実際の相場や作業の様子といった「生の声」を聴けるという意味では、非常に有益な探し方だと思います。

できればその業者が担当した、10年くらい経過した施工事例を見せてくれる業者だとベストですね。実際の作業品質も見られますし、また作業を依頼したお客様との関係がいまだにきちんと構築できている、やりっぱなしの無責任な工事をしていない証拠にもなります。

近年では、手軽に調べられるネットで施工事例や相場をチェックする方もいますが、ネットには最終的に特定のリフォーム業者へ誘導するための記事も多いため注意が必要です。

例えば、ネットでとある業者が40万でリフォームしてくれると書いてあったのに、実際に見積もりを取ったら結局追加工事や補修工事が入って、最終的に100万円近い見積もりになったケースもあります。

インターネットでチェックするなら、業者や企業のサイトではなく「リフォーム評価ナビ」(国土交通省が支援のサイト)のような公共性の高いサイトでチェックしてください。

このように、業者の探し方にはいろいろな方法があります。

もし依頼したい業者が見つかったら、最後に必ず国土交通省が推進している住宅リフォーム事業者団体かどうかもチェックしてください。これは必須条件です。

業者への連絡は「見積もり依頼」ではなく「無料診断」がおすすめ

古畑さん:

業者に連絡するときは、まずは見積もりではなく「無料診断」をお願いしてください。無料診断の結果を見れば、技術力や知識があるかどうかという業者のレベルがはっきりと見えてくるからです。

「まずは見積もり」と思う方もいるかもしれませんが、リフォームではいきなり見積もりを取ってはいけません。見積もりから入ると業者の売り込みが強くなり、訳が分からないうちに押し切られて契約してしまい最終的にトラブルになるケースがあります。

もちろん無料診断は業者にとっても面倒です。ただ、面倒だから無料診断には対応しないとか、渋々やるような業者であればそもそも依頼しないほうがいいでしょう。

いずれにしても、数十万円以上もの大きな費用を払うお客様に対し、誠実な対応や回答をしない・できない業者は論外です。

ただ、無料診断の結果をもらっても一般の方ではなかなか判断が付かないと思いますので、無料診断後に業者から提出される「現場調査書・診断報告書」を受けとったら、窯業系サイディング材メンテナンス技術研究所で行っている無料チェックを受けてください。

無料診断後、実際に業者に見積もりを出してもらったら、今度は見積書を手に持って住まいるダイヤルに相談し、施工料金が適正かどうかを確認してもらうといいでしょう。あくまでも目安程度ではありますが、もし相場を大きく逸脱しているようないわゆる「ぼったくり」であれば教えてくれます。

木造住宅塗装リフォーム協会の「見積書のチェック方法」を見て、自分でも細かく確認してみるのもおすすめです。

実際に依頼する段階になったら、工事品質の担保のために業者に工程表を必ず出してもらってください。そして工程表に基づいて毎日「今日はなんの工事をやりました」などの連絡や、温度・湿度の情報、そして現場の写真を毎日もらうようにします。

要は「お客様側で毎日ちゃんとチェックしている」という姿勢を見せることで、業者や職人さんの手抜きを抑止できるわけです。記録は残りますし、しかも毎日お客様がチェックしているという雰囲気の中では業者もそうそう変なことは出来ないでしょう。

最後は写真付きで工事完了報告書を出してもらう。これだけやっておけば、ある程度工事品質は担保できるはずです。

顧客もリフォームの知識をつけてこまめにチェックすることが大事

編集部

今後リフォームを検討している方にお伝えしたいことはありますか?

古畑さん:

リフォームを希望している方は、国土交通省のホームページや公共性の高い団体のホームページをチェックし、住宅リフォーム事業者登録団体の中から自分が希望しているリフォーム業者を探す。そしてまずは無料診断をしてもらう。これだけでトラブルのほとんどを防げます。

そのうえで、お客様もリフォームの知識を学び、業者の対応や見積書を細かく確認し業者にいろいろ質問をしてみる。さらに業者が作業に入ったら、作業現場をこまめにチェックする。これだけやれば、リフォームのトラブルに遭う可能性はかなり低くなるでしょう。

その流れの中で、どうしてもわからない専門的な部分に対し、国土交通省や我々木造住宅塗装リフォーム協会を知恵袋として頼っていただけたらと思います。

最後になりますが、サイディング含め、リフォーム業界の見通し自体は決して明るいものではありません。

現在は窯業系サイディングの塗膜保証30年(期待耐用年数が40年)の製品が新築工事で多く採用され、また塗料の耐久性能も上がってきており、リフォームの頻度はどんどん減っていくでしょう。また、日本の人口減少を考えると、今後新築の数が大きく伸びることは考えにくいです。

景気低迷や物価高の影響でリフォームの余裕がない方もたくさんいます。このように、さまざまな理由で今後リフォームの件数はどんどん減っていくと考えています。

そのため、サイディング業者含めリフォーム業者は、塗装だけではなく今後は貼り替えも扱っていくといったように、周辺のビジネスを取り込んで多角化を進めていく必要があります。多角化や付加価値をつけていかないと、数年先には仕事が取れなくなるでしょう。

当協会では、こうした業者の多角化支援も行っていますので、リフォームを希望される方だけではなく、リフォーム業者様もぜひ当協会にご相談いただければと思います。

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