築20年ほど経過したサイディングは、ひび割れが起きても珍しくありません。ひび割れを放置すると雨漏りや躯体の腐食の原因になり建物はボロボロに……。さらに放置しておくと建物が倒壊する危険性もあります。
では、サイディングのひび割れを見つけた場合、どうしたらよいのでしょうか?
この記事では、サイディングがひび割れる原因や補修方法、費用相場、放置リスクについて解説します。また、優良業者の見分け方についても触れているので、補修業者を探いしている方もぜひ参考にしてください。
おさえておくべきこと
- 0.3mm以上のひび割れはすぐに業者に見てもらう
- ひび割れの放置は雨漏りだけでなく健康被害や倒壊のリスクがある
- ひび割れ補修の費用相場は20,000円/箇所
- 業者選びは施工実績や口コミ、保証内容を踏まえて相見積もりを取る
サイディングのひび割れの症状
サイディングは、デザイン性が高くコストパフォーマンスに優れた人気の外壁材です。
しかし、サイディング自体は耐水性が低いため、塗装によって防水性を高めなければいけません。もし塗膜が劣化すると水を吸収しやすくなり、早ければ築10年程度でひび割れが発生する可能性があります。
そのため、サイディングは定期的なメンテナンスを要するとともに、ひび割れを発見した際は早めの補修が必要になります。特にくっきりと視認できるようなひび割れを放置すると外壁だけではなく、柱や梁といった構造体が腐食して建物自体が劣化する「二次被害」につながりかねません。
そこでこの章では、2種類のサイディングのひび割れと、その緊急性について解説します。
ヘアークラック|幅0.3mm以下のひび割れ
ヘアークラックとは0.3mm以下のひび割れを指す建築用語で、言葉通り「髪の毛程度の幅のひび割れ」を意味します。具体的には、塗膜やサイディングの表面が経年劣化や乾燥によって細かくひび割れている状態です。
ヘアークラックは急いで修繕をする必要はありませんが、ひび割れの幅の拡大してしまうと修繕費が高くなったり、劣化速度が速くなったりするので、サイディングにヘアークラックを発見したら外壁塗装を検討しましょう。
ヘアークラックは築7~10年ほどで発生することもあります。塗膜の撥水性が失われている証拠であり、外壁塗装のタイミングのサインです。
構造クラック|幅0.3mm以上のひび割れ
構造クラックとは、幅0.3mm以上のひび割れのことをいいます。構造クラックは外壁の奥深くまでひび割れている状態で、外壁の劣化を加速させる可能性があるため早急に修繕する必要があります。
また、ひび割れから雨水が侵入することによって外壁の耐久性を低下させるだけでなく、雨漏りや建物の内部構造にも深刻な被害をもたらしかねません。
放置すると建物の寿命を縮めたり、修繕コストが高くなったりすることも考えられるため、構造クラックを見つけたらすぐに専門業者に見積もり依頼をしましょう。
構造クラックは経年劣化だけではなく、地震などの自然災害によっても発生するため、築浅の住宅でも注意が必要です。
サイディングのひび割れ補修にかかる費用相場
サイディングのひび割れ補修にかかる費用相場は、以下のとおりです。
補修内容 | 価格 |
---|---|
ひび割れの部分補修 | 20,000円/個所 |
サイディングの張り替え | 15,000~30,000円/㎡ |
上記の価格は、補修範囲やひび割れの深刻さによって異なる場合があります。また、上記の費用には足場代が含まれていません。高い場所にあるひび割れ補修には、足場代が20万円程度加算されると思っておきましょう。
また、ひび割れの補修費用は安すぎても高すぎてもいけません。安すぎると工事の品質が損なわれる可能性があり、高すぎると無駄な出費になってしまいます。そのため、費用相場を把握したうえで、複数の業者から見積もりを取ることが重要です。
なお、サイディングのひび割れ補修や張り替えを検討する際には、価格だけでなく、業者の信頼性や実績も確認することが重要です。特に契約内容や保証内容を確認し、追加費用や隠れた費用がないかも事前にチェックしましょう。
外壁塗装がまだの場合は、時期をずらして工事をすると足場代が2回かかってしまうので、ひび割れ補修と外壁塗装は同じタイミングでおこなうと経済的です。
サイディングのひび割れを放置すると起こる5つのリスク
サイディングのひび割れを放置すると起こるリスクは、以下の5つになります。
ひび割れの放置が招く5つのリスク
- 雨漏り
- 凍害
- シロアリ、カビの発生
- 柱や梁など構造体の腐食
- 美観性の低下
1.外壁内部に雨水が入り込み雨漏りにつながる
サイディング外壁は1次防水(サイディング)と2次防水(防水シート)によって建物を守っています。そのため、通常はひび割れが発生しても即座に雨漏りを引き起こすわけではありません。
しかし、ひび割れを通じて防水シートまで水が到達すると、通常よりも早い速度で防水シートの機能が低下して雨漏りに発展します。
また窓のサッシや通気口など、室内と外が貫通している構造物付近にひび割れが発生すると、雨水が直接室内に侵入しやすくなり、すぐに雨漏りする可能性があります。
サイディングのひび割れは幅の広さだけではなく、発生した位置によっても緊急性が異なります。
2.外壁内部に雨水が入り込み凍害を起こす
凍害とは、サイディングのひび割れから水分が侵入し、その水分が凍ることで起こる劣化現象のことです。水分が氷になると体積が約10%も増えます。つまり、水分が凍結するとサイディングが膨らんでしまうということです。
一度の凍結でサイディングがひび割れすることはありませんが、何度も凍結と解凍を繰り返し、サイディングの膨張と縮小が頻繁に起こると、やがてひび割れや剥がれに発展します。
サイディングはもともと防水性がない外壁材のため、塗膜で防水性を補っています。もし仮に塗膜の撥水性が生きていても、地震などでひび割れが発生すると、その断面からどんどん水を吸収してしまい凍害の発生リスクが高まります。
特に冬場が氷点下になりやすい地域や、雪の多い地域では凍害のリスクが高まります。サイディングのひび割れを見つけた際は、冬になる前に修繕を済ませておきましょう。
3.外壁内部の湿度が高くなりシロアリやカビが発生する
サイディングのひび割れを放置し、雨水が建物内部まで到達すると、木材が湿った状態になりシロアリやカビが繁殖しやすくなります。
シロアリは湿った木材を好みます。そのため、外壁内部の湿度が高くなるとシロアリが柱や梁を食い荒らしてしまい、破損や倒壊のリスクが高まるため非常に危険です。
また、建物内部にカビが発生すると、室内の空気が汚染されてしまいます。カビによって汚染された空気を吸い込むと「シックハウス症候群」と呼ばれる健康被害を引き起こす可能性があります。特に小さい子供や高齢の方はカビの影響を受けやすいため注意しましょう。
シロアリは人にも噛み付く可能性もあるので注意が必要です。
4.柱や梁が雨水を吸収し腐食する
サイディングのひび割れから雨水が建物内部に浸み込んで柱や梁が湿った状態が続くと、腐朽菌が定着して腐食させてしまいます。柱や梁の腐食は建物の耐久性を著しく低下させるため、補強や修繕では対応できない場合、建替えや取り壊しするしかなくなります。
最悪の場合、建物が倒壊する危険性があるので、決してサイディングのひび割れは放置しないようにしましょう。
腐食が心配ならサイディングの内部検査をしよう
内部構造の腐敗やシロアリの発生が心配な場合は、サイディングを剥がして検査する選択肢があります。すでにひび割れを長期間放置してしまっている場合は、一度内部検査をしてみましょう。
サイディングの剥がし調査についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
>>サイディングの剥がし検査のメリット・デメリットや費用を徹底解説!
5.補修跡が残り美観を損ねる
サイディングはヘアークラックであれば外壁塗装のみで十分対応できるので補修跡を残さずに済みます。
しかし、ひび割れを放置し構造クラックにまで発展してしまうと、コーキングでの補修作業が必要になり補修跡が残ってしまいます。たとえ補修箇所の上から塗装をしても修繕の跡がどうしても残ってしまうため、美観を損なってしまいます。
補修跡が残るのを避けたいのであれば、ヘアークラックの段階で外壁塗装をしましょう。
サイディングのひび割れを見つけたらどうすればよい?
サイディングのひび割れを見つけた際は、専門家の助言を得て迅速に対処することが大切です。
ひび割れを見つけた際の行動
- ヘアークラック(幅0.3mm以下)なら経過観測でOKだが外壁塗装を検討する
- 構造クラック(幅0.3mm以上)なら複数業者へ修繕の見積もりを依頼する
- DIYでの補修はせず、業者に任せる
ヘアークラックならしばらく様子を見ても問題ありませんが、外壁塗装が必要なサインになります。一方、構造クラックは早めの修繕が必要です。すぐに修繕が必要なひび割れなのか判断が難しい場合は、信頼できる外壁塗装業者に相談し、見積もり依頼をしましょう。
信頼できる業者に修繕を依頼するには、複数の業者に見積もり依頼をする「相見積もり」が欠かせません。なぜなら、相見積もりをすることで価格差や対応の丁寧さなどを比較でき、より良い業者に出会えるからです。
また業者選定の際は、施工事例や口コミ、資格の有無、保証内容、瑕疵保険の加入状況もチェックしておきましょう。
ひび割れ補修のDIYは劣化の進行や費用増加のもと
正しい知識や技術を持たない素人によるDIYは、むしろ劣化を早める可能性があります。また、DIYが原因で修繕が複雑化し、業者による修繕時に本来必要のない工程が増えて費用がかさむこともあります。
また、高いところにあるひび割れを修繕する際、はしごなどを利用して補修すると転倒して怪我をする危険性もあるため、DIYは控えましょう。
DIYのリスクについてはこちらの記事でさらに詳しく解説しています。
>>外壁はDIY補修すべきでない!おすすめしない理由や失敗談まで解説!
サイディングがひび割れする3つの理由
サイディングのひび割れの主な原因は「劣化」と「衝撃」です。その中でも以下の3つが具体的な原因としてあげられます。
サイディングのひび割れ3つの理由
- 紫外線や雨風
- 寒暖差による膨張と収縮
- 地震などの自然災害
1.紫外線や雨風などの外的要因によるひび割れ
サイディングは紫外線や雨風などに弱く、湿気や熱によって反り返ってしまいひび割れを起こします。特にサイディングボードの端は、打ち付けた釘がボードの反り返りの力に抵抗するため割れやすい箇所です。
サイディングは普段、塗膜(サイディング表面の塗装面)によって雨水や紫外線から守られています。そのため、塗膜が劣化しチョーキングやコケが発生している場合は注意しましょう。
2.温度変化や天候によるひび割れ
温度変化によるサイディングの膨張と収縮はひび割れの原因の一つです。
雨が降ると雨水を吸収して膨張し、晴れた日の熱によって水分が蒸発して収縮。冬は凍結によってサイディング内の水の体積が拡大。この繰り返しにより、サイディングの内部が徐々にスカスカになり、耐え切れなくなった箇所がひび割れを起こします。
3.地震の揺れによるひび割れ
サイディングは耐震性に優れた外壁材ですが、大きな地震などの強い揺れによってひび割れることがあります。特に劣化しているサイディングは、地震など外部からの力によって簡単にひび割れを引き起こす可能性が高いため注意が必要です。
なお、ひび割れが地震などの自然災害によるものの場合、被害にあってから3年以内であれば、ひび割れ補修や外壁塗装などの工事に火災保険が適用される可能性があります。
ただし、保険が適用されるかどうかは保険会社によって異なるため、具体的な契約内容を確認しておきましょう。
火災保険についてはこちらの記事で詳しく解説しているので合わせてご覧ください。
>>外壁塗装で火災保険が適用される災害は?保険が使えないケースや申請の注意点まで徹底解説!
サイディングのひび割れの補修方法
サイディングのひび割れ補修は、ヘアークラックであれば外壁塗装のみで十分です。一方、構造クラックであればコーキングによる部分補修かサイディングの張替えが必要になります。
例えば、サイディングの劣化が著しく構造クラックが複数ヵ所に見られる場合や、見た目を重要視したい場合はサイディングの張替えが適しています。
反対にサイディングの劣化はそこまで進行しておらず、部分補修だけで問題ない場合は、コーキングでの擦り込み補修が可能です。このように、構造クラックの補修方法は、サイディングの劣化状況や補修後の見た目を重要視するかによって異なります。
そこでこの章では構造クラックの具体的な補修方法についてみていきましょう。
シーリングのひび割れも要注意
サイディング外壁はボード同士の緩衝材や防水の役割りとしてシーリングと呼ばれるゴム状のものが目地に施されています。シーリングがひび割れを起こすと、サイディングのひび割れと同様に、雨漏りや内部構造の劣化につながるため早めの補修が必要です。
サイディングのシーリング補修に関する詳細記事はこちら
>>【超重要】サイディングのシーリングは放置NG!補修方法や注意点まで徹底解説!
コーキングの擦り込み補修
サイディングのひび割れ補修で一般的なのはコーキングを擦り込む方法です。
コーキングの擦り込み補修の施工手順
- ひび割れ箇所の清掃
- プライマー塗布
- コーキング充填
- ヘラでひび割れに擦りこませる
- 必要に応じて塗装で仕上げる
ひび割れの奥までコーキングを行き届かせることでひび割れに追従し、しっかりと密着するため、雨風などの侵入を防いで外壁材を保護する効果があります。
この補修方法は工程がシンプルで材料も少ないため、コストがおさえられる点や外壁材を傷つけずに補修ができることが利点です。しかし、補修後にミミズ腫れのような跡が残り、見た目が良くないというデメリットがあります。
サイディングを張替える
サイディングのひび割れや劣化が深刻な場合、補修ではなくサイディング自体を張替えることも解決策の一つです。サイディングは部分的な張り替えが可能なため、ひび割れたボードだけを新しいものに交換できます。
サイディングの張替えの施工手順
- 既存のサイディングを剥がす
- 必要に応じて外壁内部の補修
- 防水シートを張る
- 新しいサイディングを張る
- 目地をコーキングで埋める
サイディングの張替えはコストが高いことや、生産終了により同じサイディングが手に入らない場合は色や柄が異なってしまうデメリットがあります。
しかし、サイディングの張替えは補修跡が残らないため美観が保てることと、根本的な解決になることが大きなメリットです。
サイディングの張り替え工事についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
〉〉サイディングの張り替えは必要?費用からタイミングまで徹底解説!
予算に余裕がある場合、サイディングの張替えはおすすめです。
サイディングのひび割れでよくある質問と回答
サイディングのひび割れに関するよくある質問をまとめました。ぜひ、ひび割れを見つけた際の対応の参考にしてください。
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サイディングのひび割れはDIYで補修できますか?
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サイディングのひび割れはDIYでの補修は可能ですがおすすめしません。誤った補修方法や素材の選択は、ひび割れの深刻化やケガのリスクがあります。そのため専門家による診断や補修をおすすめします。
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サイディングのひび割れは火災保険や地震保険で直せますか?
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ひび割れが地震や台風などの自然災害によるものである場合、火災保険や地震保険が適用される可能性があります。保険会社によって適用条件が異なるため、契約の詳細を確認しましょう。
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サイディングのひび割れを放置し続けるとどうなりますか?
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サイディングのひび割れを放置すると、雨漏り・柱や梁の腐敗や劣化・カビやシロアリの発生などのリスクが高まります。健康被害や建物の倒壊にまで発展する危険性があるため、ひび割れの放置は厳禁です。
サイディングのひび割れのまとめ
サイディングのひび割れを見つけ場合、以下のことに注意して適切な対処をおこないましょう。
この記事のまとめ
- ひび割れのDIY補修はおすすめしない
- 二次被害に発展させないために業者へ早めの相談をする
- 補修方法はコーキングでの部分補修かサイディングの張替え
- 補修業者は価格の安さだけで選んではいけない
サイディングのひび割れは劣化や衝撃が原因となります。そのため築20年ほどたったタイミングや、地震が発生した後などは注意深くサイディング外壁を観察してください。
ひび割れを放置すると思わぬ二次被害に発展する可能性があります。
ヘアークラック程度であれば急いで補修をする必要はありませんが、外壁塗装をおこなうサインになります。もし構造クラックが発生している場合は、自分でDIYするのではなく専門業者に補修を依頼しましょう。
また、補修費用は相場価格より安すぎても高すぎてもいけません。相場の価格帯で、より良いサービスを提供してくれる業者での施工がおすすめです。業者を比較する必要があるため必ず相見積もりを取りましょう。