今回はサイディング外壁の部分張り替えと塗装、屋根塗装をおこなった施工事例です。補修箇所も多く、以下のような方はとても参考になります。
この記事が参考になる人
- 築20年以上のサイディング外壁住宅に住んでいる
- ベランダの外壁が剥がれている
- 外壁が白く汚れいている(チョーキング)
- 外壁を部分的に張り替えたい
築年数 | 23年(2階建て) |
使用材料 | 関西ペイント アレスダイナミックトップ(外壁) 関西ペイント アレスダイナミックルーフ(屋根) ロックペイント エバーロック(軒天) 日本特殊塗料 シルビアNADシリコン(破風・雨樋) 日本特殊塗料 タフシール300(ベランダ) |
工事費用 | 250~270万円 |
施工の流れと内容
屋根 | 雨染み、苔が全体的に発生しています。特に北面が重度の劣化と言える状態ですので高圧洗浄でコケを除去して再塗装しました。 |
外壁 | バルコニー外壁が剥がれ、高い水分量(50%以上が異常値ですが60~70%台)が全般的に測定されました。剥がし検査の結果、バルコニーの柱が腐食していた為、交換して補強しました。また、ベランダ部分はサイディングを張り替え、ベランダ床部分は防水塗装しました。 ベランダ以外は全体的にチョーキング現象が起きていたため、再塗装しました。 |
雨樋 | 新築時からの設置されているものは色褪せ劣化がみられたため再塗装しました。一部欠落している箇所は部分的に交換しました。 |
破風 | ドーマ、庇の一部などで塗膜の剥がれがありましたので、再塗装しました。 |
軒天 | 出窓下、庇下で剥がれている箇所がありしたので、再塗装しました。 |
鉄部 庇 雨戸 | 特筆すべき劣化はみられませんでしたが、性能維持のために外壁とあわせて再塗装しました。 |
シロアリ | 床下や周辺土壌を防蟻処理しました。 |
施工の流れ
- 依頼・点検
- 剥がし検査
- 外壁の部分張り替え(サイディング)
- 外壁・屋根・付帯部の塗装
- ベランダ防水
- シロアリ防蟻処理
- 完成点検
外装診断の結果
お客様から外壁リフォームのご相談を受け、外壁の調査をしたところ以下のことが判明しました。
外装診断の結果
- ベランダのサイディングの水分量が極めて高い60%~70%台が測定された
- 下地(木材)に腐敗やシロアリが発生している可能性が極めて高い
- 一度サイディングを剥がして下地調査をする必要がある
- 外壁の塗膜が劣化し粉を吹く「チョーキング現象」が発生
- シーリングの硬化と肉痩せがみられる
- 屋根全体に雨染みと苔が発生
- 破風の塗膜の著しい剥がれ
今回はベランダ部分のサイディングに湿気が多く検出されました。ベランダのサイディングが湿気を含む原因は複数考えられます。例えば「ベランダだけサイディングが著しく劣化した」「ベランダの手すりのついた笠木や小窓の継ぎ目から雨水が侵入した」などです。
しかし、外から見ただけでは外壁内部の正確な劣化状況はわかりません。そのためベランダのサイディンの剥がし調査をおこない、劣化したサイディングは張り替え工事を実施しました。
また、ベランダ以外の外壁ではチョーキング現象が起きています。チョーキングは塗膜による撥水性が失われているサインのため、必ず塗り替えをしなければいけません。また、コケは水分をため込む性質があるため屋根に発生した苔は高圧洗浄機で除去します。
サイディングの剥がし検査
ベランダのサイディング材を剥がす。
防水シートの裏。
湿度60%を超えている。
腐食・シロアリ被害。
サイディングを剥がした結果、湿気による木材の腐敗とシロアリ被害を発見しました。柱は交換と補強が必要なほどボロボロな状態です。シロアリは湿気を帯びた木材を好むため、外壁の劣化を放置すると写真のように柱の食害が進み、最悪の場合、建物の倒壊に発展する恐れがあります。
サイディングの剥がし検査について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
〉〉【写真付き】サイディングで剥がし検査すべき劣化症状は?メリット・費用・実例まで徹底解説
高圧洗浄
外壁を高圧洗浄。
屋根も高圧洗浄。
まずは高圧洗浄で建物全体の汚れとコケを除去します。今回は屋根部分に苔が多く付着していたため、しっかりと取り除きます。
防蟻防腐工事
薬剤散布。
床下も散布。
周囲の土壌も散布。
はがし検査での木材の腐敗とシロアリの発見を受けて「防蟻・防腐剤」の散布作業を実施しました。薬剤は被害箇所だけではなく、シロアリの被害にあいやすい場所や侵入経路にも散布します。
特に高温多湿になりやすいキッチンや浴室の床下などはシロアリが好む環境なため薬剤散布は必須です。さらに、シロアリの侵入経路と考えられる敷地内の通路(犬走り)も丁寧に土壌処理をおこない、シロアリの侵入防止措置を講じます。
サイディングの部分張り替え
使用外壁:ニチハ フォストライン リスタMGスモーク
ベランダのサイディングを剥がす。
内部の柱もボロボロ。
新しい柱と防水シート。
新しいサイディング。
外壁内部のシロアリ駆除が完了したら、柱の交換・補強をします。そのあと防水紙を張り、新しいサイディングを取り付けて張り替え工事は完了です。張り替えをする際は、胴縁というものを取り付けることで空気の通り道を確保することで湿気がたまりにくいように工夫をしています。
また、今回の物件はベランダ全体のサイディングを張り替える工事だったため、大胆なデザイン変更が可能でした。そのため元のデザインとは異なる色や模様のサイディングを採用し、スタイリッシュでモダンな印象に生まれ変わり、美しい外観が完成しました。
数枚だけサイディングを張替える際は同じデザインのサイディングを採用するのがおすすめです。元の製品が生産終了している場合は似たデザインのサイディングを探しましょう。
サイディングの張替え工事についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
〉〉サイディングの張り替えは必要?費用からタイミングまで徹底解説!
外壁塗装
使用材料:関西ペイント アレスダイナミックトップ
下塗り材を塗布。
1回目の上塗り。
乾燥したら2回目の上塗り。
外壁塗装の塗料はお客様のご予算や将来のメンテナンス計画を考慮し、関西ペイントの「アレスダイナミックトップ」を使用しました。アレスダイナミックトップは、耐用年数約15年という優れた耐候性を誇り、紫外線による劣化を抑制するラジカル制御型シリコン塗料です。
ラジカル制御塗料とは塗料の顔料の成分である「酸化チタン」が紫外線の影響を受けることで発生する劣化因子である「ラジカル」を制御する性能を備えた塗料のことです。
シーリングとはサイディングの目地や窓のサッシ周りなどにあるゴムのようなもののことです。
シーリングはサイディング同士の緩衝材としての役割と内部への水の侵入を防ぐ防水の役割を果たしています。そのため、外壁塗装をする際は劣化したシーリングを新しいものに打ち替えをしなければいけません。
シーリング補修についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
〉〉【超重要】サイディングのシーリングは放置NG!補修方法や注意点まで徹底解説
屋根塗装
使用材料:関西ペイント アレスダイナミックルーフ
下塗り材を塗布。
タスペーサー挿入。
中塗り。1回目の上塗り。
上塗り。2回目の上塗り。
屋根は建物の中でもっとも紫外線によるダメージを受けやすい箇所です。そのため屋根塗装には紫外線に強い塗料を使用する必要があります。そこで屋根塗装には関西ペイントの「アレスダイナミックルーフ」を使用しました。
アレスダイナミックルーフは外壁塗装に使用した塗料と同様にラジカル制御効果があり、耐用年数は約13~15年になります。
タスペーサーとはカラーベスト(コロニアル)同士が塗料でくっついてしまうのを防ぐための道具です。
カラーベスト同士が密着すると屋根に湿気がたまり、結露の発生や木部が腐敗しやすくなり、最悪の場合は雨漏りに発展する可能性があります。
そのため、屋根塗装の際にタスペーサーを事前に差し込むことでカラーベスト同士が癒着を予防し、湿気の逃げ口を確保します。
破風塗装
使用材料:シルビアNDAシリコン
ケレン。
上塗り1回目。
上塗り2回目。
今回の物件では、屋根の妻側にある破風板の既存塗膜が剥がれていました。そこで、剥がれかけた塗膜をケレン作業によって丁寧に除去し、表面をきれいに整えたあと塗装をおこないます。破風板は湿気がたまりやすい箇所であるため、耐久性を考慮して溶剤系塗料「シルビアNADシリコン」を使用しました。
雨樋塗装
使用材料:日本特殊塗料 シルビアNDAシリコン
ケレン。
上塗り1回目。
今回の物件の雨樋は、戸建て住宅によく使用されるポリ塩化ビニル(塩ビ)製です。塩ビ素材は紫外線に弱く、劣化すると割れやすくなる特性があります。しかし、塗装をすることで紫外線から雨樋を守り寿命を延ばすことが期待できます。
実際、雨樋に色褪せが見られ一部欠損しているか箇所があったため、今回は黒色で塗装をおこないました。塗装色は建物全体の調和を保つため、外壁の色に合わせて色を選びましょう。また、雨樋は外観の輪郭を引き立てる効果があるため、白、黒、ダークブラウンの3色の中から選ぶのがおすすめです。
軒天塗装
使用材料:日本特殊塗料 シルビアNDAシリコン
上塗り1回目。
上塗り2回目。
軒天は屋根から降りてくる湿気を外部に逃がす役割があります。そのため、軒天には通気性の高い塗料であるロックペイント社のエバーロックを選定しました。
エバーロックは優れた通気性を持ちながらも、外部からの湿気や雨を防いでくれる効果があります。これにより、軒天が持つ湿気排出の機能を損なうことなく、耐候性を向上できます。
鉄部塗装
使用材料:ロックペイント エバーロック
ケレン。
上塗り塗装。
鉄は錆が発生すると脆くなり、耐久性が低下します。そのため、塗膜によって雨水や潮風などから鉄部を守っています。しかし、塗膜が劣化すると鉄の劣化も進んでしまうため、再塗装が必要です。
鉄部は錆止め処理をしたあと溶剤系塗料の塗料を塗布します。使用した塗料は破風や雨樋同様「シルビアNADシリコン」です。
ベランダ防水
使用材料:日本特殊塗料 タフシール300
アセトン拭き。
中塗り1回目。
中塗り2回目。
トップコート1回目。
トップコート2回目。
実は雨漏りの原因としてベランダの床面に施されている防水層の劣化がよくあげられます。軽度な劣化の場合は表面塗膜の塗り替えだけで済むので、外壁塗装と一緒に工事をするのがおすすめです。
今回の物件は一般的な戸建て住宅に採用されている「FRP防水」というものだったので、日本特殊塗料のFRP防水専用の塗料「タフシール300」を使用して塗り替えをおこないました。
施工完了・ビフォーアフター
今回の工事内容は、シロアリによってボロボロになってしまった柱の交換とサイディングボードの張り替え、外装全体の塗装、そしてベランダの防水工事です。
まるで新築のようなきれいな仕上がりになり、安全に過ごせる家へ生まれ変わりました。サイディングの色や柄を変えたことにより、ツートンカラーが際立つ仕上がりになっています。
今回この工事が成功したもっとも大きなポイントは事前調査でした。
建物の構造に詳し専門業者が外壁や屋根の劣化度合いを詳細に確認したことで、内部の木材の腐敗やシロアリの発生に早く気づくことができました。その結果、適切な方法でメンテナンスをすることが可能となったのです。
もし調査不足で内部の劣化やシロアリに気づけていなかったら大変なことになっていたかもしれません。
今後外装リフォームを考えているという方はしっかりとした知識を持っているかつ丁寧な調査をしてもらえる業者へ相談するようにしましょう。