弾性塗料は伸び縮みすることで塗装の割れや剥がれが起きにくい機能性塗料。
外壁材は経年劣化や地震などによって表面が変形することありますが、弾性塗料は柔らかく伸び縮みするため塗装表面の劣化を防ぎます。
今回は、塗料の剥がれやひび割れが起きにくい弾性塗料の種類やメリット・デメリットを紹介します。費用相場や効果的な塗装方法も解説するので、これから外壁塗装を検討している人はぜひ参考にしてください。
おさえておくべきこと
- 弾性塗料はひび割れ防止・防水機能向上に効果的
- 単層弾性塗料工法・複層弾性塗料工法・微弾性塗料+上塗り工法の3種類
- 費用相場は1平米あたり3,000円
- 施工が難しいためDIYには向いていない
弾性塗料とは?ひび割れ防止に効果的
弾性塗料の特徴や種類について解説します。弾性塗料は特徴や施工方法をしっかり理解してから選びましょう。
弾性塗料とは?何が良いの?
弾性塗とは通常の塗料よりゴムのように伸びる弾力性がある塗料です。おもにモルタルやコンクリートなどの塗り壁の塗料に用いられます。
弾性塗料が外壁の変形やひび割れに効果的とされる理由は、伸び縮みする塗料が外壁の動き・変形に追随するからです。経年劣化などで外壁本体がひび割れても、症状の表面化を防ぎます。
弾性塗料の種類は2種類
弾性塗料には、微弾性塗料と高弾性塗料の2種類が存在します。違いは塗料の硬さで、下記が弾性塗料の種類を決める基準となっています。
弾性塗料の種類 | 基準 |
---|---|
微弾性塗料 | 気温20度で伸び率が50〜100% |
高弾性塗料 | 気温20度で伸び率が120%以上 |
高弾性塗料は、JIS規格で定められている基準ですが、微弾性塗料は明確な基準がありません。通常の塗料よりもよく伸びるが、高弾性塗料のような伸び率ではない塗料の総称です。
色のバリエーションはほかの塗料と変わらないものの、微弾性塗料は2〜3年程度しか弾力が維持できないのも認識しておきましょう。
弾性塗料の塗装方法は3種類
弾性塗料の塗装方法は、仕上げ方に特徴があります。おもに3つの種類に分けられるので、下記を参考にしてください。
工法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
複層弾性塗料工法 | 5回塗りの仕上がり。塗装表面のひび割れ防止や防水に効果あり。10年以上の耐久性。 | 工期が長く、費用も高くなる |
単層弾性塗料工法 | 中塗りと上塗りで弾性塗料を使うため、ひび割れ防止や防水効果が安定している。3回塗りなので費用が安い。 | 弾性が3〜5年程度しか持続しない |
微弾性塗料+上塗り工法 | 上塗りに使う塗料によって耐久年数や費用が変動する、デザインの幅が広い | 塗料によっては1〜3年程度しか弾性が持続しない |
弾性塗料のメリット・デメリット
弾性塗料はひび割れ対策や防水機能の向上が期待できますが、採用する際は注意しておきたいポイントもあります。まだ弾性塗料の使用を迷っている人は、メリットとデメリットを比較して利用を検討してみてください。
メリット1:塗装のひび割れを防ぐ
弾性塗料は、塗装表面のひび割れを防ぐメリットがあります。塗装がひび割れを起こすおもな原因は下記です。
おもなひび割れの原因
- 塗装の経年劣化
- 塗装時の施工不良
- 地震
- 車や電車による振動
- 建物の構造上の問題
外壁のひび割れは建物内部へも影響し耐久性を低くする恐れがあります。さらに外観の美観を損ねてしまう原因にもなるため、耐久性を維持し、美しい外観を保つには弾性塗料の使用がおすすめです。
大きな地震や大規模な台風、軟弱な地盤などによって予想以上の振動を受けた場合、弾性塗料であってもひび割れを防げない恐れがあります。
外壁のひび割れの原因や対策はこちらで詳しく解説しています。
>>外壁塗装がひび割れはどうする?補修が必要?原因と対策を徹底解説
メリット2:防水性能を高める
弾性塗料は、防水機能を高めるメリットがあります。雨水が内部に侵入する原因は、ひび割れによってできた隙間ですが弾性塗料は伸びるためひび割れに追従して雨水の侵入を防ぎます。
ひび割れは雨漏りやシロアリにつながる
外壁のひび割れから雨水が侵入すると、外壁内部を腐食させたり、外壁自体の劣化が進行する原因となります。深刻化すると雨漏りやカビを発生させるリスクがあり、普段の生活にも影響しかねません。
メリット3:外壁の劣化を防ぐ
弾性塗料は、外壁の劣化を防ぐメリットがあります。経年劣化や地震によって起こるひび割れは外壁の劣化を早め、耐久性を低くします。
デメリット1:耐用年数が短い
弾性塗料の耐用年数は短く、8年〜12年ほどです。耐用年数が長いとされるフッ素樹脂塗料は最長20年持つので、耐用年数が長い塗料を求めている人に弾性塗料の使用は向きません。
弾性塗料でも分厚く塗れば耐用年数を伸ばせますが、塗料を消費する分だけ費用も上乗せされます。
ひび割れを防止するのか、耐用年数を伸ばすのかは建物の状況によって変わるので、専門業者に相談してから決めるようにしましょう。
デメリット2:塗装が膨らみやすい
弾性塗料で塗装すると、塗膜の一部が膨らむ現象が起きる場合があります。これは弾性塗料の通気性が低く、内側の湿気を外に逃がせないためです。
塗膜が膨らんだ部分は放置しても元に戻りません。補修しなければ外観の美観が損なわれてしまうので、膨らみを懸念して弾性塗料の使用を避ける人もいます。
最近では通気性を高めた弾性塗料も出回っているので、不安な人は専門業者に尋ねてみてください。
デメリット3:施工が難しい
弾性塗料は施工が難しく、職人の技術で完成が左右される塗料です。
通常外壁塗装を行うときは高圧洗浄で外壁の汚れを落とします。その後乾いてから塗装を開始しますが、弾性塗料は完全に乾いた状態で塗り始めなければ、湿気がこもって塗膜が膨らんでしまいます。
つまり、弾性塗料の使用は現場の判断力や技術力、専門的な知識量が必須であるため、業者選びは慎重に行わなければなりません。経験が浅い職人や、施工事例が少ない業者は避けるようにしましょう。
デメリット4:汚れが落ちにくい
弾性塗料は柔らかく、伸びが良い塗料であるがゆえに、汚れが付着しやすい性質を持っています。
選ぶ外壁の色によってはさらに汚れが目立ちやすくなるので、弾性塗料を使用する場合は汚れが目立たない色を選ぶのがおすすめです。
デメリット5:サイディングに使用できない
弾性塗料は窯業系サイディングでの塗装はおすすめしません。
窯業系サイディングは熱を溜め込みやすい性質をもっており、その熱によって塗膜が柔らかくなってしまいます。
そのため、サイディングから蒸発する水分や空気の膨張によってふくれが発生する可能性があります。
デメリット6:費用が高い
弾性塗料はひび割れ防止、防水効果を高めるなどの機能がありますが、費用の高さが難点です。一般的な塗料の施工単価は、下記を参考にしてください。
塗料 | 費用 |
---|---|
弾性塗料 | 2,500〜3,900円/㎡ |
ウレタン塗料 | 1,500〜2,000円/㎡ |
アクリル塗料 | 900〜1,300円/㎡ |
シリコン塗料 | 1,800〜2,800円/㎡ |
ラジカル塗料 | 2,000〜4,000円/㎡ |
弾性塗料での費用相場【1平米あたり3,000円】
弾性塗料の費用相場は、業者やメーカーによって差があるものの、1平米あたり3000円とされています。さらに、3種類の塗装方法によっても費用相場に違いがあるので、それぞれの塗装方法の相場を詳しく解説します。
複層弾性塗料工法の相場価格
複層弾性塗料工法による相場価格は、5,500円/㎡です。弾性塗料で中塗りを2回行う塗装方法で、仕上げまで全て入れると5回塗りになります。
5回塗りを行うとその分塗膜が分厚くなるので、ひび割れ防止や防水に効果的です。ただし、手間や費用も上乗せされ、工期は長く、費用は高くなる傾向にあります。
単層弾性塗料工法の相場価格
単層弾性塗料工法による相場価格は、2,000円〜2,500円/㎡です。中塗りと上塗りにそれぞれ1回ずつ弾性塗料を塗装する方法で、シーラーでの下塗りを入れて仕上がりは3回塗りになります。
複層弾性塗料工法のように塗膜が分厚くないので、ひび割れ防止や防水面での機能は劣ります。しかしながら、使用する塗料の量が少ない分、費用が安く済むことが特徴です。
微弾性塗料+上塗り工法の相場価格
微弾性塗料+上塗り工法による相場価格は、1,200〜2,400/㎡です。微弾性フィラーで下塗りし、通常の塗料で中塗りと上塗りを行う方法で、仕上がりは3回塗りになります。
下塗りに少しだけ弾性をもった下塗り材である微弾性フィラーを使用すると、下塗りの段階でひび割れ防止や防水機能向上に効果を発揮します。また、中塗りと上塗りの塗料を選べるので、塗料のグレードによっては費用が高くなる場合があります。
中塗りと上塗りの塗料を選べる分、デザインのバリエーションも広がります。
弾性塗料を効果的に塗装する方法
弾性塗料を効果的に塗装する方法を3つ紹介します。弾性塗料のメリット・デメリットを踏まえた上で解説するので、良さを最大限活かした塗装方法を知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
弾性塗料は厚塗りすれば耐用年数を伸ばせる
弾性塗料は厚塗りすることにより、耐用年数を伸ばせます。弾性塗料は通常でも厚い塗膜ですが、重ね塗りするとひび割れ防止や防水機能も高まり、耐用年数を伸ばす分厚い塗膜になります。
デメリットとして、重ね塗りを行うと工数が増えるため工期が延びます。さらに使用する塗料の量も増えて価格が上がってしまうので、何を優先すべきか施工業者とよく相談して決めるようにしましょう。
長い目で見て適切な工法を選ぶことが重要
弾性塗料の塗装方法は3種類あり、全てにメリットとデメリットがあります。自宅にはどの工法が合っているか、長い目で見るとどの工法が1番良いかは人によって変わるので、適切な工法を選ぶことが重要です。
それぞれの工法の特徴や違いを下記から確認し、検討に役立ててください。
工法 | ひび割れ・防水効果 | 耐久性 | 弾性 | 費用 | 工期 | デザイン |
---|---|---|---|---|---|---|
複層弾性塗料工法 | ◎ 高い | ◎ 10年以上 | ◯ | △ 高い | △ 長い | ◯ 普通 |
単層弾性塗料工法 | ◯ 高い | ◯ 7〜8年 | △ 3〜5年程度 | ◯ 安い | ◯ 普通 | ◯ 普通 |
微弾性塗料+上塗り工法 | △ あまり高くない | ◯ 5〜10年 | △ 1〜3年程度 | ◎ 安い | ◯ 普通 | ◎ 幅が広い |
疑問に感じたことは必ず業者に確認する
弾性塗料を使用するとき、疑問に感じたことがあれば必ず業者に確認しましょう。弾性塗料はメリットがたくさんありますが、耐用年数や費用面、汚れのつきやすさなどに不安もあります。
したがって、弾性塗料のデメリットに対する対策をどれだけ業者が行っているか確認しておくことが重要です。たとえば、下記のような対策が考えられます。
弾性塗料のデメリットに対する対策
- 単層弾性塗料工法で費用を抑える
- 塗膜を厚くして耐用年数を伸ばす
- 浸透型エポキシ系シーラーを使用する
- 通気性を高めた弾性塗料を使用する
弾性塗料を販売するおもな4メーカーと商品
弾性塗料を販売する主要の4メーカーを紹介します。会社概要や商品の特徴も解説するので、どの会社の弾性塗料を使うか悩んでいる人は参考にしてください。
日本ペイント株式会社
日本ペイント株式会社は、全国に営業所をもつ大手メーカーの1つです。HAPPY PAINT PROJECTという社会貢献活動を行っており、塗料をより身近に感じてもらえるような活動にも力をいれています。
日本ペイント株式会社の代表的な弾性塗料は「DANシリコンセラ」です。ひび割れや防水に強いのはもちろん、防カビや透湿性、防汚性にも優れている塗料で、重厚感のある肉厚な外壁に定評があります。
関西ペイント株式会社
関西ペイント株式会社は、本社を大阪にかまえ、関西を中心に営業所を展開する企業です。独自開発している技術は「日本塗装技術協会 研究発表優秀賞」や「日本塗装技術協会 論文賞」といった数多くの賞を受賞しています。
関西ペイント株式会社の代表的な弾性塗料は「シリコンテックス」です。弾性塗料本来の性能はそのままで、気温の変化や天候の変化に強く、美しい外観を維持できる塗料です。
株式会社シンマテリアルワン
株式会社シンマテリアルワンは、東京に本社をおく特殊塗料メーカーです。キ・ル・コシリーズという断熱素材を使った商品が注目されており、CSR活動も活発に行われています。
株式会社シンマテリアルワンの代表的な弾性塗料は「キ・ル・コ」です。遮断・遮熱効果が高く、弾性塗料本来の防水力も保たれます。さらに15年以上の耐候性がある人気の塗料です。
エスケー化研株式会社
エスケー化研株式会社は、大阪に本社をおく建築仕上材の総合メーカーです。ホームページでは塗り替えシミュレーションができたり、取り扱う製品の事例を写真で確認できたりと、外壁塗装の知識がない人も楽しめます。
エスケー化研株式会社の代表的な弾性塗料は、「エスケー弾性プレミアムシリコン」です。耐候性、耐久性に優れており、汚れにくい塗膜に仕上げられます。防かび・防藻性もあるので衛生面が保たれやすく、ツヤっとした光沢のある塗料です。
弾性塗料が使えるか業者に必ず確認しよう
業者が勧めるものではなく、自分で希望する弾性塗料がある場合、その塗料が使用できるかを事前に業者に確認するようにしましょう。塗料の確認を契約後にするとトラブルになる恐れがあります。
施工業者によっては希望の塗料を受け付けておらず、自社が取り扱う塗料しか対応していない場合もあります。
業者が使用する弾性塗料の説明を受け、不安点がないか確認してください。
外壁塗装の弾性塗料で良くある質問
外壁塗装の弾性塗料にまつわるよくある質問をまとめました。まだ弾性塗料に対して疑問がある人は、下記を参考にして検討してみてください。
-
弾性塗料はDIYで使用できますか?
-
弾性塗料でのDIYは可能ですが、外壁塗装を行う際は専門業者での施工がおすすめです。
弾性塗料は取り扱いが難しく、ちょっとしたミスで塗膜が膨らんでしまったり、剥がれの原因になってしまいます。判断力や技術力が高い優秀な職人に任せた方が、きれいで長持ちする外壁に仕上がります。
-
弾性塗料での施工だと工期は長くなりますか?
-
弾性塗料での施工でも、一般の塗料と変わらない7〜10日ほどの工期です。塗料の乾きやすさによって多少の差は生じますが、工程数が同じだと工期に大きな変動はありません。
ただし、複層弾性塗料工法のように塗膜を分厚くする場合は、工程数が増えるので工期が長くなります。
-
弾性塗料は建物の基礎にも塗れますか?
-
弾性塗料はコンクリートの基礎であれば施工可能です。コンクリートは素材自体に防水性がないので、弾性塗料を塗ると吸水性を抑えて防水性を高められます。
建物の基礎の防水性を高めると、コンクリートの中性化や鉄筋の腐食を防げるので、劣化症状を抑え込めます。
外壁塗装の弾性塗料まとめ
弾性塗料はひび割れ防止に効果的とされていますが、それ以外にも下記のようなメリットがあります。
弾性塗料のメリット
- 防水効果を高める
- 外壁の劣化を防ぐ
また、メリットばかりでなく、弾性塗料にはデメリットもあるので、下記を確認してから使用を検討してください。
弾性塗料のデメリット
- 耐用年数が短い
- 塗膜が膨らみやすい
- 施工が難しい
- 汚れが落ちにくい
- サイディングに使用できない
- 費用が高い
弾性塗料を使用する際はデメリットをどのように補うのか業者と相談し、納得してから契約を行うようにしましょう。3種類の塗装方法も自分一人では決めず、よりよい外壁が完成するよう専門業者に尋ねてみてください。