部分的な塗膜の剥がれや小さなひび割れを見つけたら行いたい外壁補修。業者に依頼するとお金がかかるため、高所でも脚立を使えば問題なくDIY補修できると思っている人も多いのではないでしょうか。
今回は、外壁のDIY補修がおすすめできない理由や失敗談を紹介します。業者に依頼する場合、部分補修と全体補修どちらが良いかについても解説するので、外壁の劣化が気になっている人はぜひ参考にしてください。
おさえておくべきこと
- 外壁のDIY補修は補修後の品質に問題が起きやすい
- 外壁の劣化は、DIY補修できる劣化とできない劣化がある
- 業者に依頼する場合、局所的な劣化は部分補修で、経年劣化は全体補修になる
- DIY補修は、外壁内部の劣化に気づきにくい
外壁のDIY補修は品質面・安全面でおすすめしない
外壁のDIY補修がおすすめできないのは、補修後の品質に問題が起きやすいためです。正しい補修が施されない建物は劣化が進行しやすく、美観性も劣ります。
外壁塗装のDIYがおすすめできない理由
- 正しく補修できず劣化が進行する
- 正しく補修するには専門の道具や知識・技術が必要
- DIY補修した箇所が目立ち、美観性が劣る
- 高所作業でバランスを崩し、怪我をしやすい
正しく補修できず劣化が進行する
外壁のDIY補修がおすすめできない理由は、専門的な知識と技術がないと正しく補修されない恐れがあるからです。外壁塗装は点検や下処理から塗装まで工程数が多い施工であり、プロの判断が必要不可欠。
劣化原因や症状を把握しないまま誤った方法でDIYを行うと、施工不良が起きて補修されず、劣化が進行します。劣化が進行すると、水漏れなどで建物全体の耐久性を低くするため、専門業者による再補修が必要です。
ひび割れから建物内部に雨水が侵入している場合は、ひび割れだけでなく内部の建材も補修が必要です。
正しく補修するには専門の道具や知識・技術が必要
専門業者の補修とDIY補修では、使う道具や知識・技術量が異なります。ハケやローラー・高圧洗浄機・塗料など、どれも市販で手に入れられますが、プロ仕様と比べると耐久性が劣ります。
塗装は非常に繊細であり、塗り方によって仕上がりが左右される施工です。ネットでプロ仕様の塗料を購入したとしても、希釈や塗り方が正しくできていないと、塗料本来の性能を発揮できません。
外壁塗装に必要な道具を持っていない人は、道具を揃える費用もかかります。下記が外壁塗装に必要な道具の例です。
項目 | 道具 |
---|---|
洗浄で必要な道具 | 高圧洗浄機 バケツ 洗剤 ブラシ |
下地処理に必要な道具 | サンドペーパー 皮すき コーキング材 コーキングガン |
養生で必要な道具 | マスキングテープ 養生シート ブルーシート |
塗装で必要な道具 | ローラー ハケ 中塗り・上塗り塗料 下塗り塗料 |
その他 | 脚立 ヘルメット 軍手 作業着 |
DIY補修には多くの道具が必要で「DIYは安く済む」とは言い切れません。
専門知識がないと、養生に失敗して塗料が飛散してしまったり、高圧洗浄で外壁を傷つけてしまったりします。
DIY補修した箇所が目立ち美観性に劣る
DIY補修を行うと、補修箇所が目立って美観性に劣る恐れがあります。既存の外壁の塗料と色が異なったり、塗膜の厚みの違いや色ムラが目立つためです。
特に建物正面は多くの人の目に入る場所なので、美観性が重要です。塗装範囲が広いと悪目立ちしやすいので、美観性を重視している人はDIY補修を控えましょう。
高所作業などでバランスを崩し怪我をしやすい
塗装箇所が脚立で届く高さだとしても、怪我のリスクが高いためDIY補修はおすすめできません。塗装は上下左右に動きながら行うので、脚立だとバランスを崩しやすくなります。
ホームセンターで揃えた材料でも足場を組めますが、細かな調整をしながら動くのは難しく危険な作業です。プロが設置する足場でさえ幅が狭く慣れていないと作業が難しいので、素人が組んだ足場はなおさらです。
脚立を動かしながら塗装を行うのは重労働で工期も長引くため、高所作業は業者に依頼しましょう。
DIYで対応できる劣化・できない劣化
基本的に外壁塗装のDIY補修はおすすめできませんが、DIYで対応できる劣化もあります。
できる劣化
できない劣化
汚れの除去はDIYできる
部分的な藻やコケ・排気汚れなどは、洗浄して除去できます。ブラシやスポンジに中性洗剤をつけて、優しく洗い流しましょう。硬いブラシやたわしは外壁を傷つける恐れがあるためおすすめできません。
外壁の汚れは美観性が劣るだけでなく、外壁を守るために塗装した塗膜本来の性能も低下させます。防水性の低下や剥がれにつながるため、早めの対処が賢明です。
高圧洗浄は汚れを落とすのに最適ですが、塗膜や外壁を傷める恐れがあります。汚れている箇所に小さなひび割れがあったら、高圧洗浄でひび割れ箇所が広がる恐れがあるので避けましょう。
高圧洗浄でも水漏れが起こる?
高圧洗浄による水漏れは、外壁の劣化やひび割れ・シーリングの乖離があった場合に起こります。養生が不十分だった場合にも水漏れするので、DIYで高圧洗浄機を使用する場合は注意が必要です。
高圧洗浄についてはこちらで詳しく解説しています。
藻やコケがスポンジで落ちなかったら、駆除剤が入っているコケ取りスプレーの使用がおすすめです。
外壁本体のひび割れや欠けなどはDIY補修できない
外壁本体のひび割れや欠けなどはDIY補修ではなく、専門業者に依頼しましょう。劣化原因や症状によっては、表面だけでなく外壁内部にまで進行している恐れがあるからです。
たとえば、外壁表面にひび割れがあってDIY補修したとしても、劣化が内部にまで達していたらひび割れから雨水が侵入し、下地材の腐食や水漏れにつながります。防水性が低下すると建物の耐久性が低くなるため、すぐに内部補修と再塗装を業者に依頼しなければなりません。
結果として工期は長くなり費用も高くつくので、汚れ以外の劣化のDIY補修は避けましょう。下記がDIY補修できない劣化症状です。
DIYできない劣化症状
- ひび割れ
- 欠け
- 剥がれ
- 膨れ
- チョーキング
- シーリングの乖離
外壁の劣化に気づいたら確認したい【3項目】
外壁の劣化に気づいたら、劣化の原因から最適なメンテナンス方法や対処法がわかります。
外壁の劣化に気づいたら確認すべきこと
- 外壁のメンテナンス時期が近づいていないか確認する
- 施工後3年未満の劣化は施工不良を疑う
- 災害での傷は火災保険が適用できないか確認する
メンテナンス時期が近づいていないか確認する
外壁の劣化に気づいたら、前回の外壁塗装や新築時から何年経っているかを確認しましょう。次のメンテナンスが近づいていたら経年劣化なので、部分的な補修ではなく全体補修が必要です。
外壁の塗り替えの目安期間は10年ほどですが、使用している外壁材や塗料によって変わります。自宅がどの塗料を使っているか調べて、前回塗装してから何年経っているか確認しましょう。塗料ごとのメンテナンス目安は、下記を参考にしてください。
経年劣化だとなぜ全体を塗り替える必要があるの?
塗料には耐用年数があり、その期間を超えると性能が低下するためです。塗膜の劣化は防水性を低下させ、下地にもダメージを与えます。
外壁の塗り替えについてはこちらで詳しく解説しています。
施工後3年未満の劣化は施工不良を疑う
施工してから3年未満で劣化が見つかった場合は、施工不良を疑いましょう。特に3年未満で剥がれが起きた場合は施工不良である恐れがあり、多くの業者が補償対象としています。施工不良の原因は塗料の乾燥不足や、職人の技術不足などです。
劣化症状が見つかったら、保証期間の確認を行い、施工した業者に連絡しましょう。スムーズなやりとりを行うため、事前に下記を調べてから連絡するのがおすすめです。
事前に調べておくべきこと
- 劣化を確認した日
- 劣化箇所(写真も取っておく)
- 塗り直しなど希望する対応方法
- 契約書の保証期間
ひび割れや色褪せは環境による影響を受けやすいため、保証の対象外になる恐れがあります。
災害での損傷は火災保険が使えるか確認する
台風や火災などの災害でできた傷や劣化は、火災保険が適用される場合があります。
火災保険は自然災害だけでなく、水漏れや衝突など総合的な損害に対応していますが、地震は対象外です。詳しい保険内容は加入している保険によって異なるため、適用される条件を保険証券で確認しましょう。
期間が空いてても火災保険は申請できるの?
劣化を放置していて期間が空いていたとしても、損害を受けた日から3年以内であれば申請可能です。3年をすぎると経年劣化とされてしまうので、劣化を見つけたら早めに保険会社に連絡しましょう。
火災保険についてはこちらで詳しく解説しています。
【業者への依頼】部分補修と全体補修どちらが良い?
DIYせずに業者に依頼する場合、劣化症状や外壁の状態によって部分補修か全体補修かが変わります。どちらを選べば良いか迷っている人はぜひ参考にしてください。
部分補修で良いケース | 全体補修が必要なケース |
---|---|
局所的な劣化がある場合 足場を使うメンテナンスの予定がしばらくない場合 | 経年劣化 |
物をぶつけて欠けるなど局所的な補修なら部分補修で問題ない
劣化が一部分のみの場合は部分補修が可能です。部分補修は全体補修より費用が安く、工期も最短1日で済むため、軽度で範囲が狭い補修は部分補修を依頼しましょう。
下記が部分補修できる劣化症状です。
部分補修できる劣化症状
- 外壁塗装の剥がれ
- 外壁のひび
- 外壁に白い粉のようなものが付着
- シーリングの欠け
- サイディングの浮きや反り
- 苔や藻による汚れ
「ものをぶつけてしまった」や「プランターを落下させて傷つけてしまった」など、局所的な劣化は、全体的な劣化が広がっている経年劣化とは異なり、劣化箇所が明白なので部分補修で対応できます。
部分補修にデメリットはある?
部分補修は一部分だけの施工なので、色ムラや浮きを起こしやすく、補修前とはまた違った問題が発生する恐れがあります。
また、全体の劣化は改善できません。なんども部分補修を繰り返すと結果として費用が高くなるのもデメリットの一つです。
部分補修についてはこちらで詳しく解説しています。
足場を使うメンテナンスの予定がしばらくない場合は部分補修で対応
外壁全体の塗り替えや張り替えといった足場を使うメンテナンスの予定がしばらくない場合は、部分補修で対応するのがおすすめです。全体補修は足場を組むのは大掛かりな施工なので、工期が伸びて費用も高くなります。
高所に劣化がある場合でも、部分足場があるので問題ありません。
ただし、直近で外壁塗装や屋根塗装の予定があるなら、そちらを早めて劣化の補修も同時に依頼しましょう。人件費や足場代を節約でき、工事も1回で済みます。
経年劣化なら全体補修が耐久性と費用面からおすすめ
経年劣化による傷などは、発見した劣化箇所だけでなく建物全体に症状が進行している恐れがあるため、全体補修がおすすめです。経年劣化による全体補修の塗り替えは、10年を目安にしましょう。
経年劣化は外壁表面だけでなく、内部にも影響を与えて建物全体の耐久性を低くしている恐れがあります。経年劣化の症状は次第に増えていくため、部分補修を繰り返すより全体補修した方が費用も安くなります。
経年劣化による症状
- 複数のひび割れ
- 塗膜の浮き・剥がれ
- シーリングの乖離
- チョーキング・色褪せ
劣化が広範囲に広がっている場合も全体補修を依頼しましょう。
外壁塗装のDIYでよくある失敗
外壁塗装のDIYでよくある失敗や注意点について解説します。DIY補修後に見直すべきこともあるので、すでにDIY補修を行った人も確認してください。
外壁塗装のDIYでよくある失敗
- 補修した場所以外にも劣化が広がっていた
- 外壁内部まで進行している劣化に気がつかなかった
- DIY補修で安心しその後全体メンテナンスをしなかった
- 塗料をこぼして外壁が汚れてしまった
- 業者に再補修を依頼し余計にお金がかかった
補修した場所以外にも劣化が広がっていた
DIY補修に成功したものの、補修箇所以外の劣化を見落とすのは、DIY補修でよくある失敗です。ひび割れやコケやカビによる汚れ、シーリングの隙間など、劣化箇所は一箇所のみとは限りません。
劣化の見落としを防ぐために、DIY補修を行う際は最初に建物全体の点検を行いましょう。2階部分や物置を設置している側面や、隣家と接近していて日陰になっている場所は見落としやすいです。
DIYで落とせる汚れ以外の劣化が見つかったら、専門業者に補修を依頼しましょう。
外壁内部まで進行している劣化に気が付かなかった
DIY補修で外壁表面の傷は補修できても、内部まで劣化が進行しているのに気づかない場合があります。特に多い失敗は、外壁内部に浸水していることに気づかず、室内に水漏れが発生したケースです。外壁内部の劣化とは下記のような症状です。
外壁内部の劣化
- 雨水の浸水による水漏れ
- 防水シートの腐食
- 外壁下地材・構造部分の腐食
- シロアリなどの害虫の発生
外壁内部の劣化は自分だと気づけないので、業者による点検を依頼しましょう。外壁の点検は無料である業者が多いため、気になる症状があればすぐに依頼できます。
サイディングなら剥がし検査がおすすめ!
剥がし検査は、サイディングの一部を剥がして外壁内部に劣化がないか確認する検査のことです。劣化の範囲や原因が明確になるので、部分補修か全体補修かの判断ができます。
サイディングの剥がし検査についてはこちらで詳しく解説しています。
>>【写真付き】サイディングで剥がし検査すべき劣化症状は?メリット・費用・実例まで徹底解説
DIY補修で安心しその後全体メンテナンスをしなかった
DIY補修で綺麗になった外壁に満足し、その後の全体メンテナンスを怠るのもよくある失敗パターンです。部分補修した後も経年劣化は進行するので、全体メンテナンスをしないと塗膜の防水性が低下し、建物の耐久性が低くなります。
塗り替えや張り替えといった全体メンテナンスは、建物や外壁材を守るために行います。塗膜に寿命が来ると防水性が失われ、雨水が侵入するリスクがあるからです。
DIY補修はあくまで次のメンテナンスまでの応急処置なので、住まいの安全を守るために全体メンテナンスも忘れずに行いましょう。
塗料をこぼして外壁が汚れてしまった
外壁のDIY補修は高頻度で行うものではないため、不慣れな作業で塗料をこぼしてしまうケースがあります。塗料をこぼして外壁が汚れると、汚れた部分の再塗装が必要なので、補修の手間が増えます。
DIYで塗装する場合は、飛散するリスクも考慮しなければなりません。高所作業で塗料が飛散すると、庭や車・隣家にも飛び散る恐れがあるので、正しい養生で作業してもらえる業者に依頼しましょう。
隣家に塗料が飛散した場合、隣人トラブルに発展するリスクがあります。
業者に再補修を依頼し余計に費用がかかった
DIY補修を行ったものの納得いく仕上がりにならず、再塗装を専門業者に依頼するケースがあります。DIY補修後の依頼は準備した資材の費用が無駄になるだけでなく、DIYを行った部分の補修を行うため工期が伸びる恐れがあります。
外壁のDIYは安価で補修できるメリットがありますが、それは専門知識や技術がある場合です。難易度が高いDIY補修は余計な費用がかかる恐れがあるので、最初から専門業者に依頼しましょう。
外壁塗装のDIYでよくある質問
外壁塗装のDIYでよくある質問をまとめました。まだDIY補修について疑問がある人はぜひ参考にしてください。
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DIY補修と調べると手順が出てきますが、素人には難しいでしょうか?
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施工する部分や範囲によりますが、DIY補修は専門の道具や技術が必要なので難しいです。仕上がりの美観や品質・安全性の面からもおすすめできません。
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外壁の汚れが気になるのですが自分で掃除しても良いでしょうか?
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藻やコケ・排気汚れなどの外壁の汚れは、柔らかいブラシやスポンジで洗浄できます。硬いブラシやたわしは塗膜を傷つけ性能を落としてしまうので注意しましょう。
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ホームセンターで売っている補修用の資材は業者が使うものと同様ですか?
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ホームセンターで売っている資材は、プロが使うものと品質が異なる場合がほとんどです。プロ仕様の資材が売っていたとしても、正しい知識で使用しなければプロとは仕上がりが異なります。
外壁塗装のDIYのまとめ
基本的に外壁塗装のDIYは品質や安全の面だけでなく、下記の理由からおすすめできません。
外壁のDIYをおすすめできない理由
- 正しく補修できず劣化が進行する
- 正しく補修するには専門の道具や知識・技術が必要だ
- DIY補修した箇所が目立ち、美観性が劣る
- 高所作業でバランスを崩し、怪我をしやすい
また、外壁の劣化に気づいたら、DIYする前に下記を確認しましょう。
外壁の劣化を見つけたら確認すべきこと
- 外壁のメンテナンス時期が近づいていないか確認する
- 施工後3年未満の劣化は施工不良を疑う
- 災害での傷は火災保険が適用できないか確認する
業者に依頼すると費用がかかりますが、正しい方法で長く住み続けられる補修をしてくれます。部分補修の選択肢もあるので、DIYする前に専門業者に相談しましょう。