自宅のサイディング外壁に適したリフォーム方法を知りたい方は、本記事を最後までご覧ください。
サイディング外壁のリフォームには「塗装」「カバー工法」「張り替え」のいずれかを適用します。しかし、サイディング下地の工法によっては、塗装がおこなえないケースがあります。
なぜなら、サイディング下地の工法には「直貼り工法」と「通気工法」の2種類があり、直貼り工法の場合は外壁内部の湿気が溜まりやすく、塗装してもすぐに剥がれやひび割れがなどが起こるからです。
そのため、サイディング下地の工法を考慮したうえでリフォームしなければ、建物の耐久性や資産価値にが低下する恐れがあります。
そこでこの記事では、直貼り工法と通気工法それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。なぜ直貼り工法には塗装が適さないのかも詳しく解説するので、サイディングのリフォームを検討している方はぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
- サイディングには「直貼り工法」と「通気工法」の2種類の下地がある
- 直貼り工法は防水シートに直接サイディングが張られている
- 通気工法は防水シートとサイディングの間に胴縁が取り付けられている
- 直貼り工法のリフォームは張り替えがおすすめ
サイディングの下地には2種類の工法がある
サイディングの下地には以下の2種類の工法があります。
サイディングの下地の種類
- 直貼り工法:下地・防水シートの上に直接サイディングを釘で打ち付ける工法
- 通気工法:下地・防水シートとサイディングの間に胴縁を設置し、隙間を設けサイディングを張る工法
2つの工法の違いは、防水シートとサイディングの間に隙間が有るか無いかです。施工された年代によって工法は異なり、既存サイディングがどちらの工法で取り付けられているかによってリフォームの方法が変わります。
そのため、リフォームをする前に各工法の特徴やメリット・デメリットを理解することが大切です。
直貼り工法:1990年代~2000年までに建築された住宅で採用されている工法
直貼り工法とは、構造用合板に防水シートを貼り、その上に直接サイディングを張る工法のこと。施工が容易で工期が短く、工事費用が安いといったメリットがあり、サイディングが普及し始めた1990年代~2000年までは主流の工法でした。
しかし、直貼り工法は防水シートとサイディングの間に隙間がないため、外壁内部の湿気が溜まりやすく内部結露しやすいといったデメリットがあります。
そのため、サイディングが水分を吸水して脆くなったり、カビが発生し腐食が進んだりするといった現象が起こり、建物の耐久性が低下する恐れがあり危険です。
直貼り工法は湿気の逃げ道が無くさまざまな不具合を誘発するため、2000年以降は次に紹介する「通気工法」での施工が義務化されています。
通気工法:2000年以降に建築された住宅で採用されている工法
通気工法とは、構造用合板に防水シートを貼り、その上に胴縁と呼ばれる木材を取り付けてからサイディングを張る工法のこと。2000年4月から標準工法として義務化されています。
直貼り工法との大きな違いは、防水シートとサイディングの間に空気の通り道である「通気層」があることです。外壁内部に侵入した雨水や溜まった湿気を速やかに排出し、乾燥状態を保ちます。結露を防ぎ、カビ発生を抑制できるため、結果的に建物が長持ちします。
ただし、通気層があることで建物の強度が低くなることや、隙間がある分、外壁に厚みが増すといったデメリットがあります。また、火災発生時に火が入り込んでしまうと燃え上がる危険性もあるため、通気口の中に防火工事を施しておくと安心です。
通気工法はサイディングと防水シートの間に空気の層ができるため、断熱効果が高まるといったメリットもあります。
下地別リフォーム方法と費用相場
下地別のリフォーム方法と費用は以下のとおりです。
工法 | リフォーム方法 | 価格 |
---|---|---|
直貼り工法 | 張り替え | 15,000~30,000円/㎡ |
通気工法 | 塗装 | 6,000~10,000円/㎡ |
通気工法の場合、経年による軽度劣化であれば塗装メンテナンスで十分です。しかし、雨漏りが起きている場合やサイディングの耐用年数が超えている場合は、張り替えやカバー工法が必要です。
直貼り工法は張り替えがおすすめ
サイディングの下地が直貼り工法の場合は、張り替えでのリフォームがおすすめです。直貼り工法の場合、下地と外壁の間に隙間が無く湿気が溜まりやすいため、内部結露が起こりやすいです。
内部結露が起こるということは、外壁材や下地が傷みやすいということ。そこで外壁材と下地が密着しないように「胴縁」と呼ばれる建材を設置する「通気工法」を用いて内部結露から建物を守ります。
さらに、張り替えをおこなえば傷んだ下地材や防水シートも補修できるため、より建物の強度がアップします。
張り替えの費用相場は1㎡あたり15,000~30,000円です。サイディングの撤去や下地補修といった手間がかかるため、工期が長くなることも念頭に置いておきましょう。
直貼り工法にカバー工法は適さないの?
カバー工法とは、既存外壁の上から新しいサイディングを張り付ける工法のことです。既存外壁の撤去・処分費用がかからない分、張り替えよりも安価で施工できます。
カバー工法は直貼り工法のサイディングに施工することは可能ですが、下地や防水シートが劣化していないことが条件です。
また、カバー工法でリフォームできるのは1回のみです。今後どれくらい居住するかも考慮して、カバー工法・張り替えどちらを採用するか専門業者としっかり相談してから決めましょう。
通気工法は外壁塗装で問題なし
サイディング下地が通気工法の場合は、外壁塗装でのメンテナンスで問題ありません。直貼り工法よりも内部結露の発生が少なく、サイディングが損傷している可能性が低いからです。
外壁塗装の費用相場は1㎡あたり6,000~10,000円です。既存サイディングを撤去したり張り替えたりする必要がないため、張り替えと比べて工期も費用もおさえられます。
ただし、寿命によりサイディングの劣化が著しい場合は、張り替えやカバー工法でのリフォームがおすすめです。
カバー工法は既存サイディングの上から新しいサイディングを張るため、張り替えよりも費用をおさえられます。外壁が二重になることで断熱性や遮音性が高くなる一方、外壁の重さが増し建物の耐震性が低下するため注意しましょう。
下地に欠かせない【胴縁】横張りか縦張りどちらがよい?
サイディングには以下の2つの張り方があり、張り方によって胴縁を取り付ける向きが変わります。
サイディングの張り方
- 「横張り」胴縁を垂直に取り付ける
- 「縦張り」胴縁を水平に取り付ける
胴縁はサイディングと直角に取り付けます。胴縁を取り付ける方向は通気機能に影響を及ぼすため、理解したうえで張り方を決めましょう。
横張り:通気機能は良好だがサイディングの繋ぎ目が多くなる
横張りは、胴縁は縦向きに、サイディングは横向きに張ります。胴縁が縦向きになっていることで雨水が侵入しても上から下へと流れて排出されるため、通気性に優れており、結露が発生しても乾きやすいことが特徴です。
また、同じ場所に湿気が留まりづらいため、カビやシロアリの発生を防げるといったメリットもあります。
ただし、サイディング同士の繋ぎ目が多くなり、メンテナンスの頻度は高めです。繋ぎ目にはシーリングを使用しますが、耐用年数は5~10年と短いため、定期的にメンテナンスをおこないましょう。シーリングが劣化してひび割れたり剥がれたりすると雨漏りが起こる危険性があります。
横張りは施工が容易なため、コストをおさえたい方におすすめです。
縦張り:サイディングの繋ぎ目が少なく見た目はシンプルだが通気機能が不利になる
縦張りは、胴縁は横向きに、サイディングは縦向きに張ります。サイディング同士の繋ぎ目が少なく、シンプルでスマートな外観に仕上がります。
また、繋ぎ目が少ない分シーリングを使用する箇所が減り、メンテナンス頻度が少なることも魅力の一つです。
ただし、縦張りは胴縁が横向きになるため、横張りと比べて通気機能が劣ります。縦張りの場合は、下地にすき間を作ったり切欠き加工された通気胴縁を使ったりするなどの工夫をおこない、通気性を確保するとよいでしょう。
下地「直貼り工法」か「通気工法」か自分で見分ける方法
サイディング下地の工法は、サイディングの一番下にある水切り板金とサイディングの隙間に定規を差し込み、奥行きを確認することで見分けられます。
奥行きが10~16mm程度であれば「直貼り工法」となり、奥行きが20mm以上ある場合は「通気工法」となります。
1990年代に直貼りされたサイディングの厚みは12~16mm程度となるため、奥行きがサイディング分しかなければ直貼り工法、加えて胴縁分の厚みが奥行きにあれば通気工法というわけです。
優良なサイディングリフォーム業者を選ぶ4つの方法
この章では、優良なサイディングリフォーム業者を選ぶ方法を4つ紹介します。
外壁リフォーム業者の中には悪徳業者が一定数存在し、トラブルの相談件数も年々増加傾向にあります。悪徳業者は相場よりも高い金額を提示したり、施工品質に問題があったりするため、業者選びは慎重に進めましょう。
1.地域密着で実績豊富な業者を選ぶ
前述したとおりサイディングの下地は建築された年代によって異なり、それぞれの下地に適したリフォームが必要です。そのため、各工法を熟知しており、なおかつサイディングのリフォーム実績が豊富な業者を選ぶことが大切です。
サイディングは施工が容易で多くの業者が取り扱える一方で、直貼り工法の特徴をきちんと理解しておらず塗り替えを勧める業者もいます。
サイディングは下地の工法に合った適切な施工をしなければ、数年で劣化症状が現れ後悔することも少なくありません。
また、地域密着型の業者であればトラブルの際もすぐに駆け付けてくれて安心です。地域の環境や天候を考慮した最適なリフォームができるため、きれいな外観を長く保つことができます。
直貼り工法の場合、透湿性のある塗料で塗り替えても結露の発生はおさえられないため、塗り替えはおすすめできません。
2.有資格者が在籍している業者を選ぶ
資格は優良業者の証の一つでもあるため、業者選びの際は資格の有無を確認しましょう。サイディングや外壁塗装に関する資格は以下のとおりです。
資格 | 特徴 |
---|---|
塗装技能士 | 国家資格であり、塗装に関する幅広い知識と技術がある |
有機溶剤作業主任者 | 国家資格であり、有機溶剤に関する正しい知識がある |
施工管理技士 | 国家資格であり、工程や安全、品質の管理能力がある |
足場の組立て等作業主任者 | 労働安全衛生法で定められた国家資格。足場の組立てや解体は資格保有者がいなければできない |
窯業サイディング塗替診断士・窯業サイディングメンテナンス診断士 | 窯業系サイディング材のメンテナンス(塗り替え・張り替え)の知識と技術がある |
外装劣化診断士 | 外壁劣化の度合いや対処法について的確に診断できる |
雨漏り診断士 | 公正で適切な雨漏りの診断ができる |
外壁塗装マイスター | 外壁塗装に関する知識と技術が一定基準以上ある熟練技術者の証 |
また、資格ではありませんが、国が提示する要件をクリアした「建設業許可」を取得している業者は、より信用度が高くなります。
3.見積書の内容が細かく記載されている業者を選ぶ
業者選びの際は、見積書の内容が細かく記載されている業者を選びしましょう。各工程ごとの作業名が記され、単位や単価、数量についても明確に記載した見積書を出してくれる業者は優良業者といえます。
一方、見積書に「一式」という記載が多い場合は、悪徳業者の可能性があるため注意が必要です。
含まれていると思った工事が実は含まれていなかったというケースもあるため、一式と書かれていた場合には何の工事がどれだけ含まれているのかを必ず業者に確認しましょう。
事前にきちんと確認をしておかなかったことが原因で、後にトラブルになることも少なくありません。
4.現地調査や説明が丁寧な業者を選ぶ
業者選びの際は、現地調査や説明が丁寧な業者を選びましょう。
リフォームの場合、外壁の劣化状況や塗装面積、立地などが建物ごとに異なるため、時間をかけて丁寧に調査してくれる業者は信頼できるといえます。
さらに、外壁リフォームは知識のない方が専門用語や施工内容をきちんと理解することが難しいため、わかりやすく説明してくれる業者だとさらに安心です。
そのため、30分以内などあまりにも短い時間で調査を終える業者はおすすめしません。詳しく調査ができていないと工事中に追加費用が発生したり、施工漏れが出たりする可能性が高まるため注意しましょう。
サイディング下地によくある質問と回答
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直貼り工法のままでいるとどうなりますか?
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直貼り工法は防水シートとサイディングの間に空気の通り道がなく、密着している状態です。そのため、直貼り工法のままでいると内部結露を起こし、雨漏りや建物の耐久性の低下を招く危険性があります。
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サイディングはどうやって下地に張り付けていくのですか?
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「釘打ち」と「金具留め」の2種類の工法があります。
釘打ちはサイディングと下地に直接釘を打って固定する方法です。金具留めは下地に留付金具を釘やビスなどで取り付け、金具にサイディングを引っ掛けて設置します。釘打ちはサイディングに釘の穴が開きますが、金具止めはサイディングを引っ掛けているため穴が開きません。
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サイディングをリフォームする時期の目安を教えてください。
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リフォーム時期はサイディングの種類や使用している塗料によって異なりますが、新築から10~15年経過していたら塗り替えを検討しましょう。ただし、下地が直貼り工法の場合は張り替えがおすすめです。
また、サイディングにチョーキングやひび割れ、サビやカビといった劣化症状が見られる場合もリフォームの時期だといえます。
チョーキングについては下記の記事を参考にしてください。
>>外壁塗装のチョーキングを放置するリスクは?原因から対策・予防まで徹底解説
サイディング下地のまとめ
サイディング下地の工法や特徴、メリット・デメリットを紹介しました。現在は通気工法が義務化されており、直貼り工法は使われていません。
サイディングをリフォームする際は、どの工法で張られているのかを確認することが大切です。各工法のリフォーム方法は以下の通りです。
工法別リフォーム方
- 直貼り工法は張り替える
- 通気工法は塗り替える
- 通気工法でもサイディングの劣化がひどい場合は、張り替えかカバー工法をする
また、サイディングを長持ちさせるには、業者選びも重要な要素です。サイディングの施工実績が豊富で、説明が丁寧な優良業者に依頼しましょう。
外壁劣化が進むと建物の耐久性が低下してしまい、大規模な修繕工事が必要になることも。外壁には住まいを守る大切な役割があるため、定期的なメンテナンスを怠らないようにしましょう。