
外壁塗装が完了した後、塗装の表面に針の先くらいの小さな穴がぽつぽつと現れることがあります。
これはピンホールと呼ばれる、外壁塗装の施工不良のひとつです。
ピンホールにはそのままでも問題のないものと、早急な補修が必要なものがあります。
この記事では、ピンホールの見分け方や発生要因、対処法、未然に防ぐための対策について解説します。
この記事のポイント
- ピンホールの多くは施工不良が原因
- ピンホールは外観を損なうだけでなく、塗装の早期劣化を招く
- 施工した業者に連絡し補修の対処ができる
- ピンホールを未然に防ぐには、優良な業者選びが肝
外壁に発生するピンホールとは

外壁塗装のピンホールとは、針先で刺したような小さな穴が外壁表面に発生する現象です。
外壁の塗装は下塗り・中塗り・上塗りと、3層の重ね塗りが基本です。
塗り重ねるときに下の塗料に水分が含まれていると、その水分が蒸発する際に気泡になって上の塗料を押し出し、表面にピンホールが発生します。

ピンホールは塗装業者の施工不良が原因と考えられるため、見つけたら施工した外装業者にすみやかに連絡し、補修してもらいましょう。
補修が必要なピンホールを見分けるポイント
ピンホールにはすぐに補修が必要なものと、そうでないものがあります。
以下に当てはまる場合は、補修を依頼しましょう。
補修が必要なピンホール
- 狭い範囲に密集してできている
- 穴の大きさが数ミリ以上ある
- 穴の数が数十個以上ある
広い範囲に数個の発生しているだけなら問題ありません。
経年劣化で1つ2つと発生する場合もあります。
しかし、密集して数十個以上発生しているなら、放置せず補修対応が必要です。
ピンホールは外壁の機能低下や劣化の原因に
ピンホールが発生すると、以下の影響があります。
ピンホールの外壁への影響
- 美観を損なう
- 本来の防水機能が発揮できない
- 塗膜がはがれやすい
- 塗料の劣化が早まる
例えば、ピンホールが深く塗膜の下地まで届いている場合、雨水が外壁材に染み込みやすくなります。
外壁材の劣化を早めるため、本来の耐用年数よりも早くメンテナンスが必要になります。
さらに、外壁の内側まで浸水が広がってしまうと、柱などを傷めたりシロアリの発生を誘発したり、さらに大きな補修に迫られる恐れもあります。
外壁にピンホールが発生する要因【6つ】
外壁塗装のピンホールは、塗装作業が不完全なときにおこる施工不良のひとつです。
施工に全く問題がなければ発生しません。
どのような施工不良が考えられるのか、外壁にピンホールが発生する6つの要因を紹介します。
1.下塗り・中塗り塗料の乾燥不足
下塗り・中塗りの塗料が乾ききらないうちに上塗りを重ねることは、ピンホールが発生する原因のひとつです。
乾燥不足のまま次の塗料を塗ると、内側の塗料に含まれている水分が蒸発し外側の塗膜に気泡の穴が空きます。
ピンホールが発生していたら、適切な乾燥時間が守られていなかった恐れがあります。
塗料の適切な乾燥時間とは
外壁の塗料は、種類や原料ごとに必要な乾燥時間が異なります。
たとえば、
下塗りの乾燥は4時間程度
中塗りの乾燥は2~4時間
上塗りの乾燥は4~24時間
といった目安があります。
油性塗料の場合など、この倍以上の時間が必要な塗料もあります。
さらに、天候などの条件にによっても乾燥時間が左右されるため注意しましょう。
塗装の乾燥時間については、下記の記事でも詳しく解説しています。
>>外壁塗装は乾燥時間が必須|乾燥が必要な工程から時間短縮する方法まで徹底解説
2.塗料の厚塗り
塗料を必要以上に厚塗りすることで、ピンホールが発生する場合があります。
塗料が多すぎると、乾燥時間を守られていても内側までしっかり乾燥できないためです。
また、塗料の厚みにムラがあることも、乾燥不足を招きます。
外装塗料の量は厚過ぎず薄過ぎず、均一な厚みで仕上がっていることが重要です。
職人の技術が問われるため、業者選定が肝心です。
3.塗装に不適切な天候での施工
外壁塗装は、基本的に一年中どの季節でも作業可能ですが、気温や天候によって塗装作業に適さない条件があります。
塗装に適さない天候下で作業がおこなわれると、塗膜が乾ききらず、ピンホールの発生につながります。
外壁塗装に適さない天候
- 気温が5度以下
- 湿度が85%以上
- 雨や雪が降っている
- 霜が降りている
塗料に雨水や雪が混ざってしまうと塗料本来の機能が発揮できなくなるため、雨・雪が降っている日も塗装作業は避けます。
外壁塗装には適さない季節がある?
外壁塗装ができない季節は基本的にはありません。
ただし、雨の日が続く梅雨時期や気温の低い冬の時期は、しっかり乾燥時間を確保できるよう工期を長めに予定して調整します。
外壁塗装に適した季節や天候については、下記の記事で詳しく解説しています。
>>外壁塗装に最適な季節は?季節ごとのメリット・デメリットを徹底解説
4.下地処理が不十分で塗装面が凸凹している
適切な下地処理をせず表面が凸凹したまま塗装作業すると、ピンホールが発生することがあります。
たとえば、すでにピンホールやひび割れが発生している外壁の場合、やすりで削ったり補修を施したり表面を滑らかに整えてから、塗装することが重要です。
下地処理を怠り凹凸に重ねて塗装すると、均等に塗装されず、塗りムラや乾燥ムラからピンホールが発生します。
下地処理ってどんな作業?
下地処理は、外壁と塗料の密着を高め、塗料本来の耐久性を確保するための重要な工程です。
外壁の汚れや劣化の状態により、いろいろな方法で下地処理をおこないます。
代表的な下地処理として以下の作業が挙げられます。
- 高圧洗浄:水圧で汚れを取り除く
- ケレン:手作業でサビや古い塗料を落とす
- コーキング補修:サイディングの目地を補修する
- セメント補修:モルタル外壁のひび割れを補修する
- パテ埋め:タッカーの穴や釘の頭をならす
下地処理については、以下の記事でも詳しく解説しています。
>>外壁塗装は下地処理で決まるって本当?重要性や工法、費用などを解説
5.塗料や塗膜に不純物が混入している
塗料や塗膜にゴミやほこりなどの不純物が混じっていると、ピンホールの原因となります。
塗装前の外壁に不純物が付着したまま塗料を重ねると、外壁と塗料がうまく密着せず気泡が生じやすいためです。
塗装作業の前には、高圧洗浄で表面の汚れを洗い流すことが必須です。
6.塗料の希釈が間違っている
塗料の希釈が間違っていることも、ピンホール発生の原因のひとつです。
外壁塗料は濃縮した状態で流通しており、塗装現場で適切な濃さに希釈します。
希釈の割合を誤ると、粘度の高い塗料や反対に薄い塗料になってしまい、本来の機能を発揮できません。
塗料の粘度や成分が不足すると空気が入りやすくなるため、表面にピンホールが発生します。
施工後1週間〜10日はピンホールの発生に注意
ピンホールが発生してくるのは、施工後1週間〜10日くらいの時期です。
外壁塗装では作業完了後に立ち合い完了検査をおこないますが、完了検査の段階ではまだピンホールは発生していないケースが多いです。
完了検査で問題がなかった場合でも、施工後1〜2週間くらいは外壁の状態を観察しましょう。

ピンホールに限らず、完成検査後に施工不良の症状が現れる場合もあります。
検査で気がつかなかったことでも、気がかりな点は必ず業者に伝えましょう。
外壁塗装後にピンホールを見つけたときの対処法
外壁塗装後の外壁にピンホールを見つけたときは、早めに塗装業者に連絡し、補修をお願いしましょう。
発見時の記録を残す
業者に説明しやすいよう、いつ・どのような症状だったか記録を残しましょう。
記録に残すべき事項
- ピンホールを確認した日時
- ピンホールの個数
- ピンホールの大きさ
- 発生した場所・範囲
携帯電話のカメラなどで写真を撮影しておくのがおすすめです。
施工業者に連絡し補修を依頼する
施工した業者に連絡し、手直しを依頼します。
他の業者ではなく、必ず施工した業者に連絡しましょう。
他の業者に依頼すると、費用が発生してしまいます。
契約内容や保証書を確認する
あらかじめ、契約書・保証書の内容を確認し、トラブルや手直しについての記載項目に目を通しましょう。
作業完了後の流れや費用負担の有無などのチェックをしておくと、補修や請求のトラブルを防げます。
業者が対応してくれないときは第三者機関を頼る
施工した業者が補修依頼に応じない場合は、第三者機関に相談しましょう。外壁塗装に関するトラブルに助言・対応してくれる機関がいくつかあります。
機関名 | 相談するタイミング |
---|---|
住宅リフォーム・紛争処理支援センター | 塗装業者が取り合ってくれない |
国民生活センター | クーリングオフや訪問販売など契約に関するトラブルを解決したい |
弁護士 | 法的に訴えたり損害賠償を請求したりしたい |
はじめは、無料で相談ができる住宅リフォーム・紛争処理支援センターや国民生活センターがおすすめです。
外壁塗装で注意すべきトラブルとは?
不誠実な悪徳業者に外装工事を依頼してしまうと、
- 仕上がりが打ち合わせの話と違う
- 質問に回答してもらえない
- 補修に応じてもらえない
といったトラブルにつながります。
反対に、誠実な業者であれば、上記のようなことはありません。
外装塗装は、信頼できる業者に依頼しましょう。
外壁塗装で起こりやすいトラブルと対処法は、下記の記事でも詳しく紹介しています。
>>【実例20選】外壁塗装で注意したいトラブルとは?予防法から解決法まで徹底解説
ピンホール発生時のNG行動
ピンホールを見つけたときに、自分で研磨や穴埋めなどの補修をしてはいけません。
業者の保証から外れる恐れがあります。
また、塗膜を傷つけてしまうと、外装塗装の劣化を早める原因にもなります。
気づいたことがあれば、必ずプロに依頼して作業してもらいましょう。
外壁塗装のピンホールを未然に防ぐ【4つの】対策
外装塗装のピンホールは、対策をすれば未然に防げます。
ピンホールに限らず、施工不良やトラブルを防ぐ対策として4つの方法を知っておきましょう。
1.優良業者に工事を依頼する
ピンホールを防ぐ最善策は、優良業者に工事依頼することです。
悪い業者に依頼をすると、工期を縮めるために乾燥時間を短く見積ったり、塗料を薄めたり、雑な仕上がりになります。
優良な業者は、職人の技術が高く、乾燥時間や塗料の希釈を守って丁寧に仕上げます。
万が一施工ミスがあっても、保証やアフターメンテナンスの体制がしっかりしており、トラブルに発展するケースも少ないです。
2.立地環境に合わせた外壁塗装計画を行う
外装塗装を依頼する場合は、地域の気候に配慮したスケジュールになっていることが大切です。
外壁塗装は基本的に一年中実施できますが、気温や湿度・天候などから作業の可否を見極める必要があります。
たとえば、真冬に低気温や降雪が続く地域では、その時期は塗装作業には向きません。
気候から判断した適切な作業スケジュールが、外装の仕上がりに直結します。
3.下地処理や高圧洗浄を省略しない
悪い業者では見積もりを安く見せるために、下地処理や高圧洗浄の工程を省略していることがあります。
下地処理や高圧洗浄をせずに塗装をすると、ピンホールが発生するばかりでなく、塗料の剥がれやひび割れが起こる恐れもあります。
契約前に見積もりや工程表に、必要な施工が省かれていないかチェックしましょう。
4.安すぎる施工価格には要注意
見積もり時、相場からかけ離れた施工価格を提示される場合は注意が必要です。
安すぎる価格から考えられる理由
- 必要な作業工程が削られている
- 少ない塗料を適切量より薄く希釈している
- 施工期間を短くしている
30坪の建物に外壁塗装を依頼する場合、相場価格は80〜100万円です。
ずさんな施工では、塗装の仕上がりも期待できません。
塗装業者を選ぶ際は、複数の業者から相見積もりをもらい、慎重に比較検討しましょう。
見積もりのどこを見るべき?
複数の業者の見積もりを比較する際は、以下の点に注目しましょう。
- 工事金額の総額
- 項目ごとの金額
- 塗料の種類
- 塗装箇所・面積
- 塗り回数
- 塗装以外の必要項目が記載されているか
相見積もりは、金額を知るだけでなく優良な業者を見極めることが目的と考え、比較することが大切です。
相見積もりで気を付けるべき点は、下記の記事でも詳しく紹介しています。
>>外壁塗装の相見積もり|賢い業者選びから比較すべきポイントまで徹底解説
外壁塗装のピンホールでよくある質問
-
ピンホールの手直しは無料ですか?
-
施工不良によって発生したピンホールは、業者が費用を負担し手直しすることが一般的です。
ただし、補修箇所によっては足場の再設置が必要など、別途費用を請求される場合があります。契約時の書類を確認しましょう。
-
ピンホール程度なら水漏れの心配は不要ですか?
-
ピンホールからも水漏れする恐れはあります。
また、乾燥が不十分な塗装は塗膜の劣化が早く、剥がれや浮きが生じる恐れがあります。
早めに補修を依頼しましょう。
-
ピンホールは目視で確認できますか?
-
ピンホールは、目視でも確認できます。
外装業者が現場検査をする際には、ルーペなどを使用することもあります。
外壁塗装のピンホールまとめ
この記事のまとめ
- 密集して発生しているピンホールは補修が必要
- ピンホールは外壁の機能低下や劣化の原因になる
- ピンホールの多くは施工不良によって発生する
- ピンホールは塗装完了後1週間から10日ほどで発生する
- 優良な塗装業者を選ぶことで、未然に対策できる
塗装工事完了後しばらくして壁の表面にピンホールが発生していたら、施工不良の可能性があります。できる限り早めに補修を依頼しましょう。
ピンホールをはじめ、施工不良や業者とのトラブルを未然に防ぐには、優良な業者に工事を依頼することが重要です。
業者選定の際は複数の業者から相見積もりを取得し、信頼できるパートナーを見つけましょう。