外壁塗装をする際、艶ありと艶なしのどちらがよいのか悩む方は多いのではないでしょうか。艶ありと艶なしは仕上がりはもちろんのこと、耐候性や選べる塗料、費用などに違いがあります。
外壁塗装の塗料は艶ありが基本。そのため、メーカーのカタログに記載されている性能や耐用年数は艶ありで塗装した場合のものです。艶なしでも同等の性能や耐用年数が発揮されるかというと、実際はそうでもないといえます。
そこでこの記事では、艶ありと艶なしのメリット・デメリットと、失敗しない外壁塗装業者への艶の伝え方を紹介します。
この記事でわかること
- 艶は、艶あり、7分艶、5分艶、3分艶、艶なしの5段階ある
- 艶ありは新築かのような輝きが取り戻せる
- 艶なしはマットで高級感のある仕上がりになる
- 艶ありの方が耐候性が高く、塗料本来の性能が発揮できる
外壁塗装における艶(ツヤ)とは?
外壁塗装における艶とは光の反射や光沢のことであり、キラキラと光を反射する塗料が「艶あり」、光をほとんど反射しない塗料が「艶なし」です。
艶の有無や度合いは、外壁に60度の角度から100%の光を当てたときに、正反射した光沢度(グロス値)で判断されます。なお、艶は以下の5段階にわかれます。
名称 | 光沢度(グロス値) | 特徴 |
---|---|---|
艶あり | 70%以上 | ・もっとも光を反射し、強い光沢感がある ・塗ったあとはツヤツヤとした印象になる |
7分艶 | 60%前後 | ・艶ありほどではないが、高い光沢感がある ・曇りの日など、天候によりツヤがないように見える |
5分艶 | 35%前後 | ・半ツヤとも呼ばれる ・艶ありと艶なしの中間度合いのツヤ感 |
3分艶 | 15%前後 | ・わずかに光沢がある ・天気の良い日、見る角度でツヤが感じられる程度 |
艶なし | 5%以下 | ・ツヤがまったくない ・マット仕上げ、フラット仕上げとも呼ばれる |
ただし、どの塗料にも艶が5段階あるわけではありません。艶ありしかなかったり3分艶までしかなかったりする場合もあるため、塗料によっては好みの艶が選べない可能性があります。
艶ありのメリット・デメリット
艶あり塗料のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット1.新築かのような輝きを取り戻せる
艶ありの最大の特徴は、光沢のある仕上がりになることです。そのため、塗装後は新築かのような輝きを取り戻せます。
長年にわたり雨風や紫外線にさらされた外壁は、汚れだけでなくカビや苔も付着し、外観がくすんで古びた印象になります。そこで、外壁塗装に艶あり塗料を使用すると、外観のイメージは一新。外壁表面が太陽光に反射してピカピカと光るため、外観の印象は大きく変わります。
さらに、光沢により陰影が強調されるため、外壁表面の凸凹や質感をより立体的に見せられます。
メリット2.表面がツルツルしていて汚れが付着しづらい
艶あり塗料を使用すると外壁表面が平らで滑らかになるため、汚れが付着しづらくなります。また、ツルツルとした表面は水はけがよいため、汚れが付着しても雨水により汚れが自然に落下しやすいです。
汚れが付着していると外壁の劣化が早まりますが、艶あり塗料は汚れが留まりにくいため、劣化のスピードも遅くなります。汚れが付着しずらいうえに、付着しても水で洗い流すことができるため、外壁のメンテナンスも容易。外壁の美観が向上するとともに、維持しやすくなります。
メリット3.塗料本来の性能が発揮できる
艶ありには光沢をおさえるための艶調整剤が混ざっていないため、塗料本来の性能が十分に発揮できます。
艶なしには本来必要のない艶調整剤が混ざっているため、塗料の性能が発揮できない可能性があります。艶をおさえればおさえるほど艶調整剤の量は多くなり、艶調整剤の量と比例して性能も低下すると留意しましょう。
一方、艶ありは艶調整剤が混ざっておらず、塗料の性能が低下することはありません。艶なし塗料と比べると、艶あり塗料の耐用年数は1.5~3年ほど長いといわれているため、耐久性を重視する方におすすめです。
一般的にメーカーが発表する耐用年数は艶ありが基準です。艶なしの耐用年数はそこから1.5~3年ほど短くなります。
メリット4.塗料の種類が豊富
多くの塗料が艶ありをベースに作られているため、基本的に艶ありがない塗料はありません。艶ありは塗料の種類が豊富にあるため、さまざまな塗料から好きな色を選べます。
艶なしのように選べない塗料や色がないため「気に入った塗料や色が見つかったけど、艶ありがない」といったこともありません。艶ありしかないフッ素といった高耐久な塗料も選べます。
デメリット1.安っぽい仕上がりに見える場合がある
適度な艶であれば上品に見えますが、あまりにもピカピカと光っていると安っぽい仕上がりに見える場合があります。
特に、暗い色調は安っぽく見えやすく注意が必要です。濃い茶色や濃いグレーだと光の反射が増えて、プラスチックのような質感を帯びることも。艶ありにする場合は、明るい色や淡い色を選ぶことで安っぽさを回避できます。
デメリット2.艶は2~3年で薄れてくる
艶あり塗料の特徴でもある美しい光沢感は、永遠に保たれるものではありません。基本的に2~3年で艶は薄れてしまい、汚れが付着しづらいといった効果もなくなります。
艶が薄れる原因は、紫外線や雨などによる経年劣化です。日光が当たりやすい壁面は艶が薄れるスピードが早いため、壁面によって艶のムラが出てしまい美観を損ねる可能性もあります。
艶が薄れた場合、艶を復活させるクリアー塗料を塗ると塗装したてのような艶が甦ります。
デメリット3.光の加減で艶が出すぎる場合がある
艶あり塗料は光を強く反射するため、光の加減によっては艶が出すぎる場合があります。特に、直射日光が当たる場所はまぶしく見えたり派手に感じたりすることがあります。
控えめな色であれば問題ありませんが、目立つ色の場合は注意が必要です。思ったよりも艶が出すぎてしまい、イメージしていたよりピカピカと光って周囲の景観から浮いてしまうというケースも少なくありません。そのため、塗料の色によっては光沢度を下げるなどの工夫をおこなうと良いでしょう。
デメリット4.塗料と下地の相性によっては艶が出すぎる
艶あり塗料は外壁の材質や種類によっては艶が出すぎてしまい、過剰に目立つことがあります。外壁表面が凸凹したデザインの場合、光の反射により不自然な輝きが生じて過度に艶が強調される恐れがあります。
艶あり塗料は、外壁の色や柄によって艶の度合いを選ぶことが大切です。光が反射し過ぎてまぶしいというケースもあるため、艶の度合いは外壁材も考慮して選びましょう。
艶消しのメリット・デメリット
艶消し塗料のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット1.マットで高級感のある仕上がりになる
艶消し塗料には光沢がないため、マットで高級感のある仕上がりになります。艶を無くすことで落ち着いた印象になり、周囲の景観とも調和しやすいでしょう。
また、和風住宅は艶なしとの相性が良いです。艶のあるピカピカとした外壁は雰囲気を損ねる可能性がありますが、艶なしは独特の和の雰囲気を損ねるようなことがないからです。
そして、サイディングなど艶のない外壁材の場合は、素材の風合いを活かした仕上がりになります。
艶がない分、外壁の傷や凸凹が目立たちにくいといったメリットもあります。
メリット2.艶なしだけでなく「3分艶」や「5分艶」も選べる
塗料の中には艶の度合いを選べるものもあります。ピカピカと光沢のある外壁が好みではない、艶をおさえたい場合は、艶なしだけでなく3分艶や5分艶も選べます。
3分艶や5分艶はマットでありながらも若干の艶があるため、ピカピカと光りすぎて安っぽく見えるといったことがありません。
ただし、中には艶なしや3分艶、5分艶が無い塗料もあります。艶ありか3分艶しかない場合もあるため、塗料を選ぶ際は必ず艶のバリエーションも確認しましょう。
メリット3.年数がたっても見た目が変わらない
艶なしの場合は経年劣化による変化が少なく、年数がたっても外観のイメージが大きく変わることがありません。
艶あり塗料は数年で艶が薄れてしまい、見た目に変化がでやすいです。艶がなくなると外壁の色がくすんで見えたり、全体的に古びた印象になったりします。
一方、艶なし塗料は劣化が目立ちにくいため、塗装時の見た目や雰囲気を長期間、維持できます。
デメリット1.艶ありよりも耐候性が劣る
艶なし塗料は外壁表面に微細な凸凹があるため、表面がツルツルとしている艶あり塗料に比べると耐候性は劣ります。
艶なしで塗装した外壁表面はザラザラとして微細な凸凹があるため、水や汚れが残りやすく、汚れが付着したままになりやすいです。水はけもよくないため、カビや苔も発生しやすくなります。
そのため、きれいな外観を保つためには定期的な洗浄が欠かせません。
デメリット2.塗料の種類が少ない
艶なしは、艶ありに艶調整剤を混ぜて作られているケースがほとんどです。そのため、艶ありに比べると塗料の種類も色の選択肢も少ないです。
また、使用したい塗料や色によっては、艶なしが無い場合も。高耐久なフッ素は艶ありのみとなり、艶なしがありません。3分艶や5分艶なら選べる場合があります。艶をなくすことはできませんが、艶をおさえた仕上がりにすることは可能です。
艶なし塗料は選択肢が限られることから、幅広い種類から選びたい方には不向きといえるでしょう。
塗料の種類については下記の記事で詳しく解説しています。
>>外壁塗装の塗料8種類|価格や耐用年数、メリット・デメリットを解説
一般的に艶あり塗料の方が多く使用されており、艶なし塗料の需要が少ないことも種類が少ない要因といえます。
デメリット3.艶ありを艶なしに調整した場合、費用が高くなる
多くの艶なし塗料が艶あり塗料を調整して作られます。艶をおさえるために添加剤を加えて調整する必要があり手間もかかるため、艶なし塗料のほうが費用は高くなります。
一般的に、艶なし塗料の価格は艶ありの1.1~1.2倍程度です。艶をおさえている3分艶、5分艶も艶なしと同様に価格は高めです。同じ塗料であっても艶ありよりも艶なしの方が費用はかかると留意しましょう。
艶ありを艶なしに調整するのはメーカーです。業者が現場で添加剤を混ぜて艶を調整することはできますが、塗料の品質を保証できないためおすすめしません。
外壁塗装するなら艶あり・艶なしどちらがよいの?
艶ありと艶なしのどちらがよいかは、自分が何を重視するかによって変わります。メリット・デメリットを考慮したうえで、自宅に適したものを選ぶとよいでしょう。
耐候性や美観を重視するなら艶あり
塗料の耐候性や美観を重視したい方は、艶あり塗料がおすすめです。
艶あり塗料で塗装した外壁は、表面がツルツルとして汚れが付着しづらいため、艶なし塗料よりも耐候性が高く、長期間にわたり美しい外観を保つことできます。また、艶をおさえるための艶調整剤が含まれていないため、塗料の性能が低下することもありません。
艶あり塗料なら、豊富な種類から自分好みの色を選べます。艶なし塗料よりも費用が安いため、コストをおさえて外壁塗装ができます。
高級感のある仕上がりにしたいのであれば艶なし
高級感のある落ち着いた仕上がりにしたい方は、艶なし塗料がおすすめです。
艶なし塗料は艶あり塗料のようにピカピカと光っていないため、安っぽくみえたり周囲の景観から浮いてしまったりする心配もありません。また、塗装後から塗膜が劣化するまで見た目が変化しないこともポイントです。
ただし、塗装表面が凸凹しており汚れが付着しやすいため、耐候性が気になる方は艶をおさえた3分艶や5分艶を選ぶとよいでしょう。
艶あり・艶なし|失敗しない外壁塗装業者へ【3つ伝え方】
外壁塗装で失敗しないためには、塗装後をイメージすること、艶の度合いを正確に業者に伝えることが大切です。外壁塗装は頻繁におこなうものではないため、失敗すると何年も後悔を引きずることに……。
そこでこの章では、失敗しない外壁塗装業者への艶の伝え方を3つ紹介します。
1.艶の度合いを具体的に伝える
希望する艶の度合いが業者にきちんと伝わらなければイメージと違う仕上がりになり、失敗につながります。そのため、艶の度合いは具体的に伝えましょう。
例えば「あまりピカピカしすぎるのは嫌だ」「完全にマットに仕上げてほしい」のように、具体的な表現をすることです。具体的に伝えることで、イメージが正確に伝わり、業者も提案がしやすくなります。
また、業者によって艶の度合いの言い方が異なる場合があります。「7分艶」のことを「3分消し」、「3分艶」のことを「7分消し」というケースがあるため注意してください。
伝え方によっては認識のズレが生じるため「7分艶は70%艶で、30%は艶消しか」といったように確認するのも一つの手段です。
2.色見本で艶の度合いを確認する
必ずカラーシミュレーションやサンプル板といった色見本で艶の度合いを確認しましょう。同じ艶の度合いであっても、メーカーの製品によって艶の程度が違うことがあるからです。
カラーシミュレーションを使えば、色選びがパソコンやスマートフォンで手軽におこなえます。ただし、艶の度合いまでは確認できないため、気に入った色が見つかったら業者にサンプル板を用意してもらいましょう。
サンプル板は、必ず太陽光の下でチェックしてください。晴れた日や曇りの日、朝・昼・夜など天候や時間によっても艶の見え方が変わるため、確認は慎重におこないましょう。
艶の度合いを確認しておくと、実際の仕上がりと差異が生じることも少ないです。
外壁塗装のカラーシミュレーションついては下記の記事で詳しく解説しています。
>>外壁塗装のカラーシミュレーション【使えるサイト・アプリ4選】メリット・デメリットまで徹底解説
サンプル板の大きさはA4サイズがおすすめ。サイズが小さいとイメージがしづらいため、大きなサイズで確認しましょう。
3.外壁と付帯部の艶のバランスを整える
家の外観は、付帯部も含めて印象が決まります。そのため、外壁と付帯部の艶のバランスを整えることが大切です。
外壁はマットなのに付帯部がテカテカになると、艶のバランスが悪くなります。付帯部との艶のバランスを無視してしまうと、せっかく外壁塗装をおこなっても外観全体で見たときに微妙な仕上がりになりかねません。
外観の印象を決めるのは外壁だけではありません。付帯部とのバランスを考慮して、外壁塗装の艶あり・艶なしを選ぶことが重要です。
外壁の付帯部ってどこ?
付帯部とは、主に屋根や外壁以外で建物に付帯している部分のことです。雨樋や軒天、雨戸、戸袋、破風板、鼻隠し、水切りなどがあげられます。
外壁塗装の艶でよくある質問と回答
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ピカピカしすぎるのは嫌だけど耐候性を落としたくない場合はどうしたらよいですか?
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ピカピカした見た目が好みでない場合は、7分艶や5分艶を検討しましょう。艶をおさえながらも艶ありの効果が得られるため、艶なしほど耐候性は落ちません。
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艶ありと艶なしの耐候性の違いはどのくらいですか?
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艶ありは経年劣化により艶が薄れるため、汚れが付着しづらいといった効果が得られるのも2~3年ほどです。そのため、耐候性の違いを感じるのは艶がある数年となります。
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使用する塗料の艶を自分で確認する方法はありますか?
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艶の有無は塗料のカタログに記載してあります。カタログは、メーカーのHPなどから確認できます。
外壁塗装の艶のまとめ
外壁塗装は、艶ありと艶なしのメリット・デメリットを考慮したうえで、自宅に適した塗料を選ぶことが大切です。また、艶の有無を選ぶ際は、以下の点に注意しましょう
艶の有無を選ぶ際の注意点
- 艶の度合いは具体的に伝える
- カラーシミュレーションやサンプル板で艶の度合いを確認する
- サンプル板は太陽光の下でチェックする
- 外壁と付帯部の艶のバランスを調整する
業者と認識のズレが生じてしまうと、仕上がりに不満が残ることになりかねません。
自宅に適した艶がわからない、艶選びに迷った際は、外壁塗装のプロである業者に相談しましょう。