築10年で検討し始めた外壁塗装。どんな色にしようか調べてみるものの、外壁の下地と塗料には相性の良し悪しがあることを知って、塗料選びに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
そもそも下地が何かよくわからなかったり、外壁にひび割れなどの劣化症状があれば、そのまま塗装して良いのかも不安になりますよね。
今回は、外壁塗装の下地の重要性や、相性の良い塗料・外壁塗装前の下地処理方法について紹介します。下地処理でよくあるトラブルについても解説するので、外壁塗装を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
おさえておくべきこと
- 下地となる外壁材によって使用する塗料が変わる
- 下地処理がしっかりと行われないと、塗膜の剥がれや膨れのリスクがある
- 下地処理は優良業者の施工が必須
- 優良業者を選ぶには、相見積もりを取るのが良い
外壁塗装の下地とは?下地が重要な理由
外壁塗装の下地とは、塗料を塗る外壁材のことです。外壁塗装は色選びに夢中になりがちですが、下地の種類や状態によって仕上がりが大きく左右されます。
外壁塗装の下地とは塗料を塗る壁面のこと
外壁塗装の下地とは塗装する壁面のことで、外壁材そのものだけでなく既存塗膜や、外壁に付着した汚れも含めた部分を指します。下地が汚れている場合は塗装前に洗浄し、ひび割れなど劣化している場合は補修が必要になります。
外壁材の代表的な種類は下記6つです。定期的に外壁塗装すれば、耐用年数まで寿命を保てます。
外壁材 | 耐用年数 | 特徴 |
---|---|---|
サイディング | 40年 | セメントや樹脂・金属などを利用した板状の外壁材。安価で人気がある |
モルタル | 30年 | セメント・水・砂などを混ぜた外壁材。ひび割れしやすいデメリットがある |
金属 | 15年 | トタンやアルミニウムの外壁材。断熱性が高く軽量で耐震性がある |
木材 | 20年 | 木材を利用した外壁材。カビやコケが生えやすく劣化しやすいが、デザイン性が高い |
ALCボード | 60年 | 軽量気泡コンクリートの外壁材。重量がコンクリートの1/4で、断熱性や防火性に優れている |
タイル | 40年 | 土や石を高温で焼き上げた外壁材。経年劣化が殆どなく、傷にも強い |
外壁塗装の下地にはそれぞれ特徴があり、耐用年数や発生しやすい劣化が異なります。
下地となる外壁材によって使用する塗料が変わる
外壁塗装では、下地となる外壁材によって使用する塗料が変わります。相性が良くない塗料を使用すると外壁材との密着が弱く、ひび割れや剥がれなどの劣化が早まる恐れがあるためです。
下記が下地となる外壁材と相性の良い塗料です。
外壁材 | おすすめ塗料 | おすすめな理由 |
---|---|---|
サイディング | ラジカル塗料 | 日当たりが悪いとカビが発生しやすいサイディングに防汚・防カビ効果を発揮する |
モルタル | 弾性塗料 | モルタルがひび割れても追従し、ひび割れの表面化を防ぐ |
金属 | フッ素樹脂系塗料 | 外気や天候によって劣化が進みやすい金属は耐候性が高い塗料が賢明 |
木材 | 木材保護塗料 | 木材に吸い込ませて着色するため剥がれにくい |
ALCボード | 無機塗料 | 耐用年数が長く、汚れにくいため、メンテナンス期間を伸ばせる |
タイル | タイル用塗料 | 一般的な塗料よりタイルに密着するため剥がれにくい |
サイディングとALCボードは、シリコン塗料もおすすめです。費用や耐用年数が違うので、迷ったら専門業者に相談しましょう。
塗装前の下地処理が塗装の仕上がりに影響する
外壁塗装は、下地処理が適正に行われるかどうかで仕上がりが変わります。下地処理がしっかり行われていないと塗料がすぐに剥がれてしまったり、塗料の性能が十分に発揮されず、塗膜の膨れや剥離などの劣化が早まる恐れがあります。
適正な下地処理とは外壁の劣化を補修し、下地と塗料を密着させるための作業のことです。高圧洗浄で汚れを落とし、ひび割れなどの補修をして塗装面を平滑にします。
外壁塗装後すぐにひび割れが再発したり、塗膜の膨れが発生したら、下地処理が適正にされていない恐れがあるので、塗装を行った業者に相談しましょう。
ひび割れだけでなく、サビや藻などの汚れが残っていると塗料が密着しないため、剥がれやすくなります。
下地処理を怠った際に見られる劣化症状
下地処理を行わなかった場合、外壁塗装後に下記のような劣化の発生が懸念されます。
下地処理を怠った際に見られる劣化症状
- ひび割れの再発
- サビの再発
- 塗膜の剥離
- 塗膜の膨れ
ひび割れの再発
下地となる外壁材に軽微なヘアクラックがある場合、下地処理の段階で補修を行わないと、塗装してもすぐにひび割れが再発する恐れがあります。再発するのは、補修しないとヘアクラック部分は塗装が破れやすいためです。
一方、重度なひび割れは外壁材交換など根本的な補修を行う必要があります。重度なひび割れを放置すると隙間から雨水が侵入し、外壁内部の腐食や雨漏れにつながるリスクがあります。
モルタルのようにひび割れしやすい下地であれば、再発を防ぐために必ず下地処理でひび割れの補修をしてもらえるよう依頼しましょう。
サビの再発・進行
下地となる外壁材にサビがある場合、完全に取り除くことは難しいです。サビの進行を遅らせるためにも、サビはできる限り除去する必要があります。
サビは水分と金属が触れて起こる金属の腐食で、サビが進行すると塗膜の割れ・剥がれにつながります。外壁表面だけでなく、金属部分の発生源の特定も行いましょう。サビが発生しやすいのは、鉄骨階段や手すり・雨樋・ベランダなどです。
発生源を自分で見つけられない場合は業者に点検を依頼し、サビの再発と拡大を防ぎましょう。
密着不足による塗膜の剥離
外壁材の下地処理が正しく行われないと塗料が密着せず、塗膜の剥離が起きます。塗膜と下地を密着させるには、ひび割れなどの劣化補修や、カビや藻・排気ガスなど汚れの除去が必要です。
下地処理には、既存塗料の除去も含まれます。しっかりと塗料の汚れを落とし、表面に凹凸の傷をつけるケレン作業を行うと、密着して剥がれにくい塗膜が作れます。
水分の気化による塗膜の膨れ
下地となる外壁材が濡れた状態で塗装すると、水分が気化する際に塗膜が膨れます。下地が濡れるのは、雨の影響や汚れを落とすために高圧洗浄を行うからです。
高圧洗浄後、乾燥するのに必要な時間は最低でも24時間で、48時間空ければ十分乾いています。乾燥時間を十分に取らない業者は、工事の品質や技術度が低い悪徳業者の恐れがあるので注意しましょう。
高圧洗浄で乾燥時間以外に注意すべきことは?
高圧洗浄は、外壁の劣化や施工不良・不十分な養生などの理由で水漏れが発生する恐れがあります。とくにひび割れは幅が大きいほど水が侵入しやすいので注意が必要です。
高圧洗浄についてはこちらで詳しく解説しています。
>>外壁塗装の高圧洗浄で水漏れ!?原因から解決策まで徹底解説
乾燥に必要な時間は天候や季節によって異なります。
外壁塗装の下地処理方法と工程
外壁塗装の際に行う下地処理の方法と工程を紹介します。劣化症状ごとに解説するので、自宅の外壁に下記の劣化がある場合は、処理方法を確認してください。
劣化症状 | 下地処理方法 |
---|---|
コケや排気汚れ | 高圧洗浄 |
ひび割れ | Vカット+パテ/シーリング材 |
膨れ | 高圧洗浄・ケレン |
サビ | 高圧洗浄・ケレン・サビ止め |
外壁塗装の工程と下地処理を行うタイミング
外壁塗装で下地処理を行うタイミングは、下塗りを行う直前です。下記が実際に行われる外壁塗装の工程です。
塗装面積によりますが、一般的には上記の工程を約14日間で行います。下地処理にかかる時間は1日ほどですが、劣化が激しいと2日以上かかる場合があります。
下地処理方法【コケや排気汚れ】
コケや排気ガスによる汚れの下地処理は、高圧洗浄で行われます。強力な水圧で洗浄するため、家庭用高圧洗浄機では落とせない汚れも除去できます。
ここでしっかりと汚れを落とさないと、塗装を行っても剥がれてしまう恐れがあります。高圧洗浄はただ単に汚れを落とすだけでなく、塗料が密着するよう異物を残さない役割があります。
藻やコケが高圧洗浄で落ちないときは、高濃度の薬剤を混ぜたバイオ洗浄で汚れを落とす場合があります。
下地処理方法【外壁のひび割れ】
外壁のひび割れの下地処理は、シーリング材などの補修材を使います。ひび割れは、軽度のひび割れであるヘアークラックと、重度のひび割れである構造クラックで下記のように補修方法が異なります。
クラックの種類 | 幅と深さ | 下地処理方法 |
---|---|---|
ヘアークラック | 幅0.3mm以下 深さ4mm以下 | ひび割れにシーリング材を擦り込む |
構造クラック | 幅0.3mm以上 深さ5mm以上 | ひび割れ箇所に電動工具で溝を作り、弾力性の強いシーリング材で溝を埋める |
ひび割れ箇所に溝を作るのは、そのままシーリング材で充填しても、内部がガタついていて補修材が均等に行き渡らないためです。シーリング材は、同じ部分のひび割れを防ぐために、ヒビに追従する弾力性が強いものを使用します。
シーリング材に隙間があると施工不良でひび割れが再発しやすく、防水効果が弱まって外壁内部に雨水が侵入する恐れがあります。
サイディングの重度のクラックは張り替えが必要?
外壁材や柱が損傷するほどの重度のクラックは、張り替えが必要です。建物全面を張り替えるか、損傷部分のみを張り替えるかは、ひび割れの範囲と状態によって変わります。
張り替えではなくカバー工法で対応できる場合もあるので、重度のクラックがある場合は専門業者とよく相談しましょう。
サイディングの張り替えについてはこちらで詳しく解説しています。
>>外壁のひび割れは補修が必要?症状別の補修方法から費用、原因まで徹底解説【写真付き】
下地処理方法【塗膜の膨れ】
塗膜の膨れの下地処理は、ケレン工具を用いて膨れを除去します。膨れは高圧洗浄で除去できる場合もありますが、外壁に残ってしまった塗膜はケレンが必要です。
ケレンとは、マジックロンやサンドペーパーなどの工具を使用して、塗膜を削り取る作業のことです。外壁に残った汚れを削り取る役割のほかに、塗料が密着しやすいようあえて傷をつける「目荒らし」の役割もあります。
下地処理方法【サビ】
外壁のサビの下地処理方法は、高圧洗浄やケレン作業の後にサビ止め塗料を塗ります。サビ止めを使用すると再発しにくく、きれいな塗膜が長持ちします。
塗膜の膨れと同じようにサビもケレンで落としますが、頑固なサビにはディスクグラインダーやカップワイヤーブラシ・サンダーなどの電動工具が用いられます。電動工具を使えばサビが落としやすいですが、駆動音やサビを削る作業で騒音が出る場合があります。
外壁塗装の下地でよくあるトラブル
外壁塗装の下地で考えられるトラブルが3つあります。気をつけるべきポイントも併せて解説していきます。
外壁塗装の下地でよくあるトラブル
- 下地処理の際に発生する騒音トラブル
- 下地処理を行わず塗装後一年で外壁が剥離した
- 塗装したにもかかわらず屋内に雨漏りが生じた
下地処理の際に発生する騒音トラブル
下地処理を行うときは、使用する工具による騒音トラブルに注意が必要です。騒音と捉えられやすいのは、高圧洗浄の洗浄音やひび割れ補修で使用するサンダー、ケレンで使用するカップワイヤーブラシなどです。
外壁塗装を行うとき必要な工程を省くことはできません。騒音トラブルを避けるため、工事が始まる1週間前までに近隣住民へ挨拶に行きましょう。
挨拶に行くときは、騒音の可能性と一緒に工事日程を伝えておくと、対処ができるので理解してもらいやすくなります。
騒音のクレームが来たらどうする?
近隣住民から騒音のクレームが来たら、いつ何の音について不快な思いをしたのか確認しましょう。内容を確認してから塗装業者に相談すると、騒音を防げるか、時間帯を変えられるかなどの確認ができます。
外壁塗装中の騒音についてはこちらで詳しく解説しています。
>>外壁塗装がうるさい!?騒音が発生する期間と音量を解説。近隣への説明は必須
下地処理を行わず塗装後一年で外壁が剥離した
適切な下地処理が行われず、塗装後一年で外壁が剥離してしまうトラブルに注意が必要です。下地処理は塗料を密着させ、長持ちさせるために必要不可欠な工程であるため、下地処理を省くのは悪徳業者である恐れがあります。
悪徳業者は利益を得るために必要な工程を省いたり、人件費を削ろうとするため、高額な割に施工不良が起きやすい工事を行います。下記が悪徳業者の特徴なので、契約する前に気づけるよう確認してください。
悪徳業者の特徴
- 訪問営業をしてくる
- 工事費用が前払い
- オリジナル塗料を勧めてくる
- 足場無料などの大幅な値下げがある
- 今すぐの契約を勧め、考える時間をくれない
悪徳業者に引っかからないためには?
悪徳業者に引っかからないためには、即決を避けましょう。「今契約しないと無料の特典がなくなる」などと契約を急かして来ますが、相見積もりをとって他の業者と見比べるために、業者のペースに乗らないことが大切です。
悪徳業者についてはこちらで詳しく解説しています。
>>外壁塗装で悪徳業者と契約したけど解約できる?解約方法から対処法まで徹底解説
塗装したにもかかわらず屋内に雨漏りが発生した
塗装したにもかかわらず、屋内に雨漏りが生じるトラブルは、下地のひび割れ補修が不十分だったために起こります。ひび割れ箇所の見落としや、シーリング材の密着不足や重点不足による施工不良が原因です。
塗装直後に雨漏りが発覚したら施工不良である恐れが高いため、施工業者にすぐ連絡しましょう。施工不良は業者の責任なので、無料で対処してもらえる場合がほとんどです。
施工業者に連絡するときは、下記事項を意識して伝えるとスムーズなやりとりができます。
施工不良の伝え方
- 施工不良箇所を見つけた日などを明確にし、順序立てて伝える
- 丁寧な言葉で伝える
- 写真や実物を見ながら説明する
- 契約書を確認する
- 希望する対応を簡潔にまとめる
適切な下地処理は優良業者の施工が必須
適切な下地処理は高度な技術が必要なので、優良業者の施工が必須です。優良業者を選ぶ理由や優良業者の見極め方について紹介します。
優良業者で適切な塗料選びや下地処理を行う
優良業者なら、既存外壁材と相性の良い塗料を選んでくれたり、適切な下地処理をしてくれたりします。優良業者は専門知識が豊富で技術力も高いためです。
悪徳業者の場合は、高額な塗料を勧めてきたり、下地処理など必要な工程を省いて安価な見積もりを提示してきたりします。
優良業者かどうか迷ったら、必ず相見積もりをとって費用相場や必要な工程を確認しましょう。費用が高すぎるものや低すぎる見積もりは悪徳業者である恐れがあるため注意が必要です。
疑問点があればその場で確認し、納得するまで説明を受けましょう。
優良業者を見極めるポイント
優良業者かどうか見極めるために、下記事項を確認してください。
優良業者の見極め方
- 相見積もりを取る
- 自社施工している
- 施工実績が多い
- 対応が誠実で、全ての質問に答えてくれる
- 建設業許可を保有している
- 塗装技能士資格を保有している
- 見積もりが「一式」になっていない
- 保証やアフターフォローがある
- 口約束ではなく、全ての事項が契約書に記載してある
自社施工で下請けや外注を使用しないと、中間マージンがかからないので費用を抑えられます。自社施工だと依頼主の要望が職人まで伝わりやすいのも特徴です。
また、依頼した業者が悪徳業者だった場合、実際に施工する下請け会社の取り分を少なくし、不満が溜まって手抜き工事を行う恐れがあります。
これらを踏まえると、優良業者を選ぶなら地域密着型で評判が良い業者がおすすめです。
外壁塗装の下地でよくある質問
外壁塗装の下地でよくある質問をまとめました。まだ外壁塗装の下地に疑問がある人はぜひ参考にしてください。
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下地によって塗料の耐久性は変わりますか?
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下地によって塗料の耐久性は変わりません。下地に合う塗料選びや下地処理が重要です。下地処理を怠ったり、下地に合う塗料を選ばないと、塗膜の剥がれなどの劣化が早まります。
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自宅外壁と相性の良い塗料がわからない場合はどうしたら良いでしょうか?
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自宅外壁と相性の良い塗料がわからない場合は、こちらを参考にしてください。
不安な場合は塗装業者と相談し、適切な塗料を選びましょう。
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適切に下地処理されたかの確認はどのようにできますか?
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施行中に確認するのは難しいので、事前に業者から作業報告や写真の提供ができないかお願いしてみましょう。写真で報告書を出してくれる業者も多いので、お願いしても問題ありません。
外壁塗装の下地まとめ
外壁塗装の下地処理は、塗装の仕上がりに影響する重要な工程です。下地処理を怠ると下記のような問題が発生します。
外壁の下地処理を怠ったときに発生する劣化症状
- ひび割れの再発
- サビの再発
- 密着不足による塗膜の剥離
- 水分の気化による塗膜の膨れ
また、下地処理では下記のようなトラブルが発生しやすいので注意しましょう。
外壁の下地処理で発生しやすいトラブル
- 下地処理の際に発生する騒音トラブル
- 下地処理を行わず、塗膜が一年で剥離した
- 塗装したにもかかわらず屋内に雨漏りが生じた
下地処理は専門知識と技術力が必要な難しい工程です。優良業者でなければ適切な下地処理は行えないので、外壁塗装を依頼するときは必ず優良業者を選びましょう。