「自宅を購入した際にアスファルトシングルの屋根は塗装する必要がないと言われたけど本当?」
このような疑問を抱く方は多いのではないでしょうか。
結論からいうと、アスファルトシングルは必ずしも塗装が必要な屋根材ではありません。なぜなら、塗装によって耐久性が延びるわけではないからです。しかし、塗装することで汚れた屋根の美観を取り戻すことはできます。
ただし、塗装をするときには注意すべきポイントがあります。塗料や施工法が適切でなければ、雨漏りの原因となったりムラになったりしてきれいに仕上がりません。
そこでこの記事では、アスファルトシングルの塗装時の注意点から塗装で得られる効果、塗装以外のメンテナンス法まで詳しく解説します。
この記事でわかること
- 塗装の目的は美観維持
- 塗装しても屋根材の耐久性は延びない
- 塗装には水性・艶なし塗料を使用する
- 屋根材の劣化が激しい場合は塗装ではなく屋根を一新する
アスファルトシングルとは?表面を石粒でコーティングした屋根材
アスファルトシングルは、ガラス繊維をアスファルトでコーティングして表面に石粒を貼り付けたシート状の屋根材です。接着剤で貼り合わせるので釘などで穴を開ける必要はないうえに防水性が高いため、雨漏りしづらいことが特徴です。
また、加工しやすい材質なので複雑な形状の屋根にも施工可能。カラーバリエーションも豊富で和洋どちらの住宅にも合わせやすく、デザイン性にも優れます。薄く柔らかいためひび割れることがなく、金属を含まないため錆びることもありません。
しかし、薄くて軽いがゆえに強風に弱く、剥がれたり破れたりしやすいため注意が必要です。表面の石粒が徐々に剥離することに加えて表面に水が溜まりやすく、カビやコケ、藻が生えやすいことから定期的なメンテナンスが欠かせません。
北米では100年以上前から使用されている定番の屋根材です。しかし、日本で使用されるようになったのは2007年とごく最近。普及率はわずか5%程度で、まだまだ認知度が低い屋根材です。
アスファルトシングルは塗装によって耐久性が延びるわけではない
アスファルトシングルは防水性が高いため、基本的に塗装の必要がない屋根材です。
そのため、他の屋根材とは違って耐久性を延ばすために塗装するのではなく、あくまで美観目的であると留意しましょう。
アスファルトシングルを塗装するのであれば、以下のタイミングがおすすめです。
塗装のタイミング
- 汚れや色あせが気になる場合
- 石粒の剥離が気になる場合
塗装するケース1:汚れや色あせが気になる場合
汚れや色あせが気になる場合は、塗装をおこなうことで美観を取り戻せます。
アスファルトシングルの表面はザラザラとして水はけがあまり良くないため、カビやコケ、藻が生えやすいです。また、紫外線や雨風にさらされることで徐々に表面の石粒が色あせてしまいます。
屋根が汚れたり色あせたりすると、外観が古ぼけた印象になります。特に屋根の勾配が急な家は屋根がよく見えるため汚れや色あせが目立ちやすく、また日当たりの悪い屋根はカビやコケ、藻が発生しやすくなるため注意が必要です。
ただし、塗装しても屋根材の耐久性は延びません。そのため、汚れや色あせが気にならなければ塗装の必要はありません。
塗装するケース2:石粒の剥離が気になる場合
表面の石粒の剥離が気になる場合は、塗装で石粒を固定することで石粒が剥離するのを防げます。
アスファルトシングルの表面の石粒は貼り付けているだけなので、経年劣化により剥がれ落ちる可能性があります。ただし、石粒は多めに貼り付けられているため、施工後1年ほどで見られる剥離は塗装の必要はありません。
劣化が進めば進むほど石粒は剥がれてしまい、最終的には下地が露出した状態になります。そのため、塗装するのであれば下地が露出する前におこなうことをおすすめします。
また、石粒が落ちることで雨樋を詰まらせることもあるため、雨樋の清掃も同時におこないましょう。
石粒が剥離して下地が露出している場合は、塗装では対応できません。屋根の葺き替えや葺き直しを検討しましょう。
アスファルトシングルを塗装するなら「水性・艶なし塗料」を使用する
アスファルトシングルを塗装する際は必ず「水性・艶なし塗料」を使用しましょう。
溶剤系である油性塗料を塗ってしまうと、アスファルトの成分が溶けて染み出る危険性があります。これを「ブリード現象」と呼び、表面がべたついて屋根材の歪みや膨れが起こる原因となるため注意が必要です。
また、アスファルトシングルは塗料を吸い込みやすいため、艶あり塗料を使用すると艶ムラが起こります。艶がある箇所とない箇所ができて仕上がりが悪くなるため、艶あり塗料は避けるのが賢明です。
アスファルトシングルの場合、塗料の選択を間違ってしまうと美観を損ねるだけでなく耐久性も著しく低下します。業者に塗装を依頼する際は、塗料の種類を確認しましょう。
アスファルトシングルの塗装にかかる費用相場
アスファルトシングルの塗装にかかる費用相場は以下のとおりです。
作業内容 | 費用相場 |
---|---|
足場仮設 | 600~800円/㎡ |
メッシュシート | 100~200円/㎡ |
高圧洗浄 | 100~300円/㎡ |
ケレン | 200~1,000円/㎡ |
塗装(下塗り・中塗り・上塗り) | 2,000~5,000円/㎡ |
縁切り | 350~800円/㎡ |
50㎡の屋根の場合、15万~40万円ほどの費用がかかります。
塗装の際に注意すべきポイントは、アスファルトシングルには「縁切り」という作業が必要なことです。縁切りとは屋根材に水が通るための隙間を作る作業のことで、アスファルトシングルの塗装後に必須の作業となります。
縁切り作業を怠ると屋根内部に入り込んだ水分を外に排出できず、雨漏りが起こる可能性があります。そのため、塗装時は見積もり内容に縁切りが含まれているかを必ず確認してください。
最近はタスペーサーという部材を設置して、隙間を確保する方法が主流です。そのため、見積書には縁切りではなくタスペーサーと記載されていることもあります。
アスファルトシングルの劣化が激しい場合は塗装以外のメンテナンスが必要
アスファルトシングルの劣化が激しい場合、塗装では補修できません。劣化範囲や状態に合わせて、以下のメンテナンスが必要です。
塗装以外のメンテナンス
- 屋根材の一部分のみを交換する「部分葺き替え」
- 既存の屋根材の上に新しい屋根材を重ねる「カバー工法」
- 屋根材をすべて撤去・交換する「葺き替え」
アスファルトシングルの普及率は低く、施工に慣れていない業者も少なくありません。トラブルを避けるためにも、メンテナンスの際はアスファルトシングルの施工実績が豊富な業者に依頼することが大切です。
損傷の原因が台風などの自然災害の場合は、火災保険が適用される可能性があります。詳しくは業者に確認してください。
部分的なめくれや剥がれには【部分葺き替え】
アスファルトシングルのめくれや剥がれが部分的な場合は、劣化部分のみを撤去して新しい屋根材を張り付ける部分葺き替えが可能です。屋根のめくれや剥がれは雨漏りの原因となるため、見つけたら早めに業者に相談しましょう。
部分葺き替えの費用相場は4,000~10,000円/枚で、カバー工法や葺き替えで屋根全体を一新するよりも費用は安いです。
ただし、下地が劣化していても葺き替え箇所しか補修できません。下地であるルーフィング(防水紙)の耐用年数は20年ほど。そのため、下地の耐用年数を超えているのであれば葺き替えを検討しましょう。
屋根材も下地も耐用年数を超えておらず劣化箇所が部分的な場合は、補修費用を最小限におさえられる部分葺き替えがおすすめです。
屋根材の経年劣化には【カバー工法】
屋根材が傷んでいても下地に問題がない場合は、既存の屋根材の上から新しい屋根材を重ねるカバー工法が可能です。
カバー工法の費用相場は、一般的な住宅で100万~150万円ほど。古い屋根材や下地の解体・撤去の必要がないため、葺き替えよりも工期が短く費用をおさえられます。
ただし、屋根材が二重になると屋根全体の重量が増えるため、建物の耐震性が低下します。重量が増すほど建物の揺れは大きくなり、地震が起きた際に倒壊や崩壊する可能性が高まります。
そのため、カバー工法の場合は軽量の屋根材を選びましょう。アスファルトシングルを重ねることも可能ですが、耐震性が気になる方にはアスファルトシングルよりも軽量なガルバリウム鋼板がおすすめです。
下地が劣化している場合は【葺き替え】
屋根材だけでなく下地も劣化している場合は、既存の屋根材をすべて撤去してから新しい屋根材を取り付ける葺き替えが必要です。
葺き替えは既存屋根材や下地の解体・撤去が必要なうえに工期も長いため、費用相場は一般的な住宅で150万~200万円と高額です。カバー工法よりも費用はかかりますが、下地から一新できるためカバー工法よりも屋根の耐用年数は長くなります。
また、雨漏りが起きている場合は葺き替えがおすすめです。防水紙や野地板といった下地も同時にメンテナンスできるため、雨漏りを根本から解決できます。
ただし、カバー工法同様に葺き替える屋根材の重量には注意が必要です。アスファルトシングルよりも重い屋根材で葺き替えると、建物が重さに耐えられないケースがあるため注意してください。
特に日本瓦は重いため、その荷重に耐えられるだけの構造を持った建物でなければ地震の際に倒壊または崩壊する危険性が高まります。
アスファルトシングル塗装でよくある質問と回答
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アスファルトシングルの耐用年数はどのくらいですか?
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アスファルトシングルの耐用年数は20~30年です。
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アスファルトシングルは必ず塗装しなければいけませんか?
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アスファルトシングルは必ずしも塗装が必要な屋根材ではありません。しかし、汚れやすく表面の石粒が剥がれやすいため、見た目の劣化が気になる場合は塗装がおすすめです。ただし、塗装をしてもアスファルトシングルの耐久性が延びるわけではありません。
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アスファルトシングルはどれくらいの頻度で点検を受ければよいですか?
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10年に一度を目安に屋根業者に点検してもらうことをおすすめします。アスファルトシングルは強風でめくれや剥がれが起きやすくカビなども発生しやすいため、定期的な点検が必要です。
アスファルトシングル塗装のまとめ
アスファルトシングルの耐用年数は20~30年ほど。劣化が進み表面の石粒が剥がれて下地が露出している場合は、以下の方法で屋根材を交換しましょう。
劣化が激しい場合のメンテナンス法
- 劣化が部分的であれば部分葺き替えが可能
- 下地が劣化していなければカバー工法が可能
- 下地も劣化している場合は葺き替える
アスファルトシングルは経年劣化により色あせたりカビなどが発生したりするため、定期的な点検が欠かせない屋根材です。ただし、自分で屋根の状態を確認することは避けましょう。高所で危険なうえにカビなどが生えた箇所は滑りやすく、怪我をする危険性があります。
また、普及率が低いことから、適切に施工できる業者は少ないといえます。塗料や施工法を間違うと、耐久性の低下や雨漏りなどのトラブルを招きかねません。点検や塗装、葺き替えなどの際は、アスファルトシングルの施工実績が豊富な業者を選ぶことをおすすめします。