「業者にラジカル塗料を勧められたけど、どんな塗料なのかわからない……」このように考える方も少なくないでしょう。
ラジカル塗料とは、次世代の塗料と呼ばれる高性能な塗料のこと。価格の割に機能性に優れており、近年注目を集めています。
そこでこの記事ではラジカル塗料の特徴や価格、メリット・デメリットなどを紹介します。
この記事でわかること
・ラジカル塗料とはどんな塗料なのか
・ラジカル塗料の価格や耐用年数
・ラジカル塗料のメリットとデメリット
・主要メーカーのラジカル塗料3選
ラジカル塗料とは?汚れにくく高性能な塗料
ラジカル塗料とは、従来の塗料に特殊な成分を混ぜることによって「ラジカル」と呼ばれる劣化因子の発生を抑制した特殊な塗料のことです。ラジカルは塗料の成分の名前ではなく、劣化因子の名前になります。
劣化因子であるラジカルを抑制することで汚れが付着しづらくなり、塗膜の劣化を長期間にわたり防ぐことが可能です。
ラジカルとは塗料を劣化させる因子のこと
ラジカルとは、塗料に含まれる顔料(酸化チタン)に雨水や酸素、紫外線などが接触することで発生する劣化因子のことです。
ラジカルが発生すると塗料の主成分となる樹脂の結合が破壊されて、塗膜の劣化が起きる原因になります。塗膜が劣化すると防水機能を失い、外壁内部の腐食や雨漏りといったトラブルにつながります。
ラジカル塗料には「高耐候酸化チタン」と「光安定剤」が配合されている
ラジカル塗料には、ラジカルの発生をおさえるために「高耐候酸化チタン」と「光安定剤」と呼ばれる成分が配合されています。
高耐侯酸化チタンとは、酸化チタンの表面に特殊な処理をすることで耐候性と耐変色性を向上させた成分のことです。紫外線などによって発生するラジカルをバリアーのような機能で抑制することで、塗膜の劣化をおさえる機能があります。
一方、光安定剤とは、ラジカルの発散をおさえる成分のことです。塗膜中に発生したラジカルを捕えるほか、高耐侯酸化チタンのバリアー層から漏れ出たラジカルの活動をおさえる役割を担っています。
また、光安定剤は自己再生する機能も備わっているため、長期間にわたって塗膜の劣化を防ぐことが可能です。
高耐侯酸化チタンがラジカルを抑制、光安定剤がラジカルの発生をおさえることによって、塗膜の劣化を長期間にわたり防ぎます。
ラジカル塗料の価格と耐用年数
ラジカル塗料は高性能な塗料ですが、高性能ゆえに価格が高いのではないかと気になる方もいるのではないでしょうか。そこでこの章では、ラジカル塗料の価格と耐用年数を紹介します。
価格は1㎡あたり2,500~3,200円
ラジカル塗料の価格は1㎡あたり2,500~3,200円です。
外壁塗装で7~8割使用されているシリコン塗料の価格は1㎡あたり2,500~3,200円。シリコン塗料と同程度の価格帯であるラジカル塗料は、標準的な塗料といえるでしょう。
ラジカル塗料は、シリコンやフッ素などの樹脂に加える顔料(酸化チタン)の代わりに「ラジカル制御型酸化チタン」を使用します。
何か特殊な成分をプラスで配合したわけでなく、顔料をラジカル制御型酸化チタンに変えただけなので、高性能でありながら、1㎡あたり2,500~3,200円と比較的安い価格で提供できるというわけです。
耐用年数は12~17年
ラジカル塗料の耐用年数は12~17年です。
シリコン塗料の耐用年数は10~15年のため、耐用年数12~17年のラジカル塗料は非常にコストパフォーマンスに優れた塗料といえます。
ただし、耐用年数は想定になります。詳細は後述しますが、ラジカル塗料は2012年に販売された塗料です。そのため、2023年現在、販売されてからまだ11年しかたっていないため、実際に17年持つかは実証されていません。
しかし、今のところ大きな問題が出ていないことも事実です。
ラジカル塗料は比較的安価なため、取り入れやすい塗料です。耐用年数も長いため、シリコン塗料と比べるとコストパフォーマンスも高くなります。
ラジカル塗料で外壁塗装する5つのメリット
ラジカル塗料はコストパフォーマンスに優れているだけではなく、さまざまなメリットがあります。この章では、ラジカル塗料を使用して外壁塗装をする5つのメリットを紹介します。
1.チョーキングが起こりにくい
チョーキングとは、塗料に含まれる顔料が劣化することで粉状になって浮き出る現象のこと。外壁を手で触るとチョークのような粉が付くことが特徴で、一般的には塗装後10年ほどで見られる現象です。
チョーキングは雨風や紫外線など外的要因の影響を受けて起こる劣化現象ですが、ラジカル塗料はラジカルを抑制する効果があるため、チョーキングが起こりにくいとされています。
2.外壁に汚れが付着しにくい
ラジカル塗料は塗膜が劣化しにくいため、表面の艶が長持ちします。艶がある外壁は表面が滑らかなため、艶のない外壁に比べて汚れが付着しづらいです。
またラジカル塗料はカビや藻の発生も抑制してくれるため、日当たりの悪い箇所でもきれいな状態を保てます。
3.安価でコストパフォーマンスに優れている
ラジカル塗料はコストパフォーマンスに優れた塗料です。外壁塗装で幅広く使用されているシリコン塗料と同じ価格帯でありながら、耐用年数や性能面ではシリコン塗料を上回っています。
耐用年数が20年前後あるフッ素塗料や無機塗料と比べたら耐久性は劣りますが、一般的な外壁塗装をするうえでは申し分ない塗料といえるでしょう。
4.施工がしやすい
水性1液型のラジカル塗料であれば塗料の伸びがよく飛散しにくいため、施工しやすいという特徴があります。
また、塗料が柔らかいため、凹凸のある個所でも塗装しやすいことが特徴。複雑な形状をした外壁でも塗リむらが出にくく、きれいな仕上がりになります。
5.どんな外壁材にも塗装できる
先述したとおり、ラジカル塗料は伸びがよく、飛散しにくいといった特性があります。そのため、サイディングやモルタル、ALCパネル、木部など、さまざまな外壁に塗装可能です。
ラジカル塗料は多くのメリットを持った塗料です。塗装業界の中でも注目を集めており、提案してくる業者もどんどん増えています。
ラジカル塗料で外壁塗装する2つのデメリット
ここまでラジカル塗料の性能やメリットを紹介してきましたが、ラジカル塗料にはデメリットも存在します。この章ではラジカル塗料のデメリットを2つ紹介します。
1.濃色の場合はラジカル抑制効果を発揮できない
黒色や紺色といった濃色の場合、ラジカル制御効果を発揮できません。
なぜなら、ラジカル塗料に含まれる高耐侯酸化チタンは白色の顔料のため、濃色にするには高耐侯酸化チタンの含有量を減らさなければいけないからです。
高耐侯酸化チタンを減らしてしまうとラジカル抑制効果が低下してしまいます。そのため、ラジカル塗料を採用する場合は、淡色を選ぶ必要があります。
2.実績が証明されていない
ラジカル塗料は、実績が証明されていないというデメリットがあります。
ラジカル塗料が初めて発売されたのが2012年、2023年現在ではまだ11年しか経過していません。そのため、耐用年数が12~17年であることを実績として証明できていないのです。
しかし、耐久性を検証するための実験方法も進化しているため、耐用年数の数字には信憑性があります。ラジカル塗料の実験方法は以下の3点です。
試験名 | 内容 |
---|---|
屋外暴露試験 | 実際の自然環境下にさらして状態の変化を確認する試験 |
促進耐侯性試験 | 人工的に屋外環境を再現して劣化を促進させることによって耐久性を予測する試験 |
耐候性区分 | JIS規格で定められたキセノンランプ法による耐候性試験の結果に基づく塗料の区分 |
上記の信頼できる試験の結果、12~17年という耐用年数が導き出されているため、実績はなくとも信頼できる塗料であるといえるでしょう。
高性能でメリットが多いラジカル塗料ですが、決してデメリットがないわけではありません。デメリットも踏まえたうえでラジカル塗料での塗装を検討しましょう。
外壁塗装で使われる主要ラジカル塗料
2012年に発売されたラジカル塗料ですが、現在では複数のメーカーから製品が発売されています。この章では、代表的なメーカーから発売されているラジカル塗料の概要や特徴を解説します。
1.日本ペイント「パーフェクトトップ」
日本ペイントの「パーフェクトトップ」は水性の高耐候性塗料で、以下のような特徴があります。
パーフェクトトップの特徴
・ラジカル制御技術により紫外線による塗膜の劣化をおさえ、シリコン塗料を超える耐久性がある
・ポリマーハイブリット効果により塗料の伸びがよく、飛散しにくく隠蔽力(いんぺいりょく)が高い
・綿密な塗膜が形成され、高い光沢性を発揮する
・カビや藻の発生を防ぐ機能がある
・ほとんどの外壁に塗装できる
・淡い色から濃い色まで豊富なカラーバリエーションがあり、艶感の調整も可能
パーフェクトトップは、艶あり、7分艶、5分艶、3分艶、艶なしから選べるほか、カラー展開は47色と豊富。シリーズ累計60万件分に採用された実績あるラジカル塗料です。
また、ラジカルを制御する技術は日本ペイントが世界で初めて開発したもので、特許も取得しています。
2.エスケー化研「エスケープレミアムシリコン」
エスケー化研の「エスケープレミアムシリコン」は水性の超耐侯形ハイブリッドシリコン樹脂塗料で、以下のような特徴があります。
エスケープレミアムシリコンの特徴
・独自のラジカルコントロール技術によって塗膜の劣化を抑え、ハイレベルな耐候性を発揮する
・特殊シリコン樹脂の塗膜によって汚れが定着しにくく、カビや藻の発生を防ぐ
・特殊シリコン樹脂の滑らかな塗膜によって光沢のある仕上がりになるうえ、艶の調整も可能
・隠蔽性が高いほか、柔らかく扱いやすい塗料のため、作業効率が向上する
・ほとんどの外壁に塗装できる
エスケープレミアムシリコンは耐候性に優れており、汚れやカビに強いラジカル塗料です。また、従来の塗料よりも光沢性が高く、つやつやとした仕上がりになります。艶をおさえたい方は、5分艶や3分艶、艶なし塗料を採用するとよいでしょう。
ほかにも、エスケープレミアムシリーズには無機系や弾性系などの多彩な製品があるため、予算や機能性に合わせて選ぶことが可能です。
3.関西ペイント「アレスダイナミックTOP」
関西ペイントの「アレスダイナミックTOP」は水性のラジカル制御形シリコン塗料で、以下のような特徴があります。
アレスダイナミックTOPの特徴
・独自のラジカル制御技術によって高い耐候性を発揮する
・紫外線による塗膜劣化を抑制する4つの技術によって作られている
・超低汚染性を持ちカビや藻などの発生を防ぐため、美しい仕上がりを長期間維持できる
・艶あり・7分艶・5分艶・3分艶の4種類から艶感を選べる
・専用のフィラーや強化剤を組み合わせることにより湿度の高い時期や高湿度になりやすい箇所でも施工可能
・ほとんどの外壁に塗装できる
アレスダイナミックTOPは、紫外線劣化を防止する「高性能シリコンレジン」、高性能シリコンレジンをすり抜けた紫外線を無害化する「UVトラップ」、ラジカルの発生を抑制する「ラジカルバリヤコート」、極微量すり抜けた紫外線によって発生したラジカルを無害化する「HALSラジカルキャッチャー」という独自の4つの技術を搭載したラジカル塗料です。
フッ素塗料に迫る高い耐候性を持っており、外壁を外的要因から長期間守ることが可能です。
外壁塗装ラジカル塗料でよくある質問と回答
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ラジカル塗料は高品質なのになぜ安価なんですか?
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塗料の価格は主成分の樹脂によって大きく変わりますが、ラジカル塗料は一般的な樹脂を主成分としており、そこに高耐侯酸化チタンと光安定剤を加えているだけなので安価で発売されています。
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ラジカル塗料とシリコン塗料の違いはなんですか?
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何らかの樹脂と高耐侯酸化チタンを使用しているものがラジカル塗料、シリコン樹脂と従来の酸化チタンを使用しているものがシリコン塗料になります。どんな顔料や樹脂を使っているかによって、ラジカル塗料とシリコン塗料との違いがでます。
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おすすめのラジカル塗料はありますか?
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ラジカル塗料の先駆けであり、特許を取得していることから、日本ペイントの「パーフェクトトップ」がおすすめです。
外壁塗装ラジカル塗料のまとめ
本記事では、ラジカル塗料の特徴やメリット・デメリットなどについて紹介しました。
ラジカル塗料の特徴
・汚れや劣化に強い高性能な塗料
・価格と耐用年数のバランスが取れたコストパフォーマンスのよい塗料
・デメリットよりもメリットのほうが多い優れた塗料
ラジカル塗料は発売してから11年しか経過していないため、実績の点での不安要素が残る塗料です。しかし、しっかりと試験をして優秀な塗料という結果が出ているため、今後幅広く使用される塗料になっていくでしょう。
ラジカル塗料による外壁塗装を検討しているけれど不明点や疑問点がある方は、塗装のプロに相談するか本記事の内容を参考にして納得のいく外壁塗装をしましょう。