外壁のひび割れに気づき、検討し始めたサイディングの補修。築年数が10年経つと補修の必要性を感じるものの、業者に依頼すると時間も費用もかかってしまいます。
今回は、今すぐ補修すべきサイディングの劣化症状や、補修工事にかかる費用について紹介します。DIY補修ができるかについても解説するので、自宅の外壁補修を検討している人はぜひ参考にしてください。
おさえておくべきこと
- サイディングの劣化は適切に補修しないと、建物全体の劣化を早める
- サイディングの劣化症状によって補修方法が変動する
- サイディングが劣化していると、内部まで劣化が広がっている恐れがある
- 小さな劣化症状でもDIYはおすすめできない
サイディングで補修すべき劣化症状は?
サイディングは塗装してから早ければ5年ほどで劣化症状が出始めます。耐用年数が長い塗料を使用していたとしても、立地条件や天候、塗装業者の技量に左右されがちです。
劣化症状の悪化は建物の耐久性を下げるため、早期発見が大切です。サイディングで補修すべき劣化症状は、下記を参考にしてください。
劣化症状 | 症状の特徴 | 補修すべき理由 | 主な補修方法 |
---|---|---|---|
チョーキング | 外壁を触ると白い粉が手につく現象 | 防水機能の低下 | 塗装 |
シーリングの劣化 | シーリング部分がひび割れる | 防水機能の低下 | シーリングの打ち増し・打ち替え |
カビやコケ | 外壁が緑色になる | 空気汚染・見栄えの悪化 | 高圧洗浄後に塗装 |
ひび割れ | サイディングがひび割れる | 防水機能の低下 | 補修材で埋める・張り替え |
反りや浮き | 外壁の一部が浮いている状態 | 防水機能の低下 | 釘を打ち込む・張り替え |
剥がれ・膨れ・爆裂 | サイディングの一部が大きくかけている状態 | 防水機能の低下 | 補修材で埋める・張り替え |
劣化は目視でセルフチェックできるので、日頃から劣化が現れていないか確認しましょう。
【劣化症状別】6つの補修方法と費用相場
建物の補修方法や費用は、劣化症状によって変わります。被害が拡大する前に早めに補修を行えば、費用を抑えられます。
補修方法 | 費用相場 |
---|---|
サイディングやシーリングなどの部分補修 | 10万〜20万円+サイディング代 |
シーリングの全面補修 | 打ち増し500円~1,100円/m、打ち替え900円~1,500円/m |
サイディングの塗装 | 80万〜120万円 |
サイディングの張り替え | 300万円〜 |
サイディングの重ね塗り | 200万円〜 |
DIY補修 | 材料費のみ |
サイディングやシーリングなどの部分補修
サイディングの軽度なクラックであれば、部分補修で対応できます。費用の目安は施工費が10万〜20万円で、さらにサイディング代が加算されます。
クラックや剥がれなどの劣化箇所が少なければ、サイディング費用はあまりかかりません。また、劣化箇所が2階以上であれば足場代が加算されるので注意しましょう。
部分補修とは?
部分補修とは、大規模な補修工事を行わず、劣化部分のみを修繕する方法です。費用だけでなく、工期も抑えられるので、気軽に依頼できます。
部分補修については、こちらで詳しく解説しています。
>>外壁塗装は部分補修でも問題ない?費用からメリット・デメリットまで解説
シーリングの打ち増し・打ち替え
シーリングは打ち増しか打ち替えかによって費用が変わります。打ち増しの場合は1メートルあたり500円~1,100円程度を想定しておきましょう。
施工部分が2階以上の場合や家全体を行う場合は、足場代が加算されます。足場代を含めると15万円〜28万円が相場です。
打ち替えの場合は、既存のシーリングを撤去しなければなりません。ゆえに費用は1メートルあたり900円~1,500円程度となり、足場代を含めると20万〜35万円が相場です。
シーリング補修すべき劣化症状
- 黒くなっている
- 痩せてきている
- サイディングから乖離している
- ひび割れや亀裂がある
サイディングの塗り替え
ひび割れや剥がれ・チョーキングなど、建物全体に劣化症状がある場合は、再塗装が必要です。費用は30坪の建物を想定すると、およそ80万〜100万かかります。
素材の状態が悪く補修の手間がかかる場合や、塗装する階数が高い場合は、さらに費用が高くなる恐れがあります。
塗装費用に幅があるのはなぜ?
外壁塗装は、施工面積や業者、使用する塗料によって価格が変動します。耐久年数が高い塗料は金額も高いので、どの塗料を使用するかで費用に差が出やすいです。
塗装費用やメンテナンス方法についてはこちらで詳しく解説しています。
>>サイディング外壁に塗装は必要?費用からメンテナンス方法まで徹底解説
どの塗料を使用すべきか悩んだら、施工業者に相談しましょう。
サイディングの張り替え
サイディングを全面張り替える場合、かかる費用は30坪の建物でおよそ300万円〜です。
張り替えるべき劣化症状
- 何箇所もひび割れがある
- 剥がれ箇所が多い
- 外壁を押すとフカフカする
- 押しても戻らないほどサイディングが浮いている
- 浸水により塗装が膨れ下地から補修が必要
- サイディングが反った影響でシーリングが切れ外壁内部に浸水している
張り替えの際は既存外壁を剥がすので、内部の水漏れやシロアリ被害なども確認して補修できます。
サイディングの選び方は?
サイディングは、どの種類のサイディングを選ぶかによっても費用が変動します。代表的なサイディングは、窯業系・金属系・樹脂系・木質系の4つです。
サイディングの種類についてはこちらで詳しく解説しています。
>>シェア70%!サイディング【全4種類】特徴と選び方を徹底解説
サイディングの重ね張り(カバー工法)
サイディング全面を重ね張りするカバー工法の相場費用は、30坪の建物でおよそ200万円〜です。サイディングの張り替え同様、選ぶサイディングの種類によって価格が変動します。
カバー工法はサイディングの張り替えと同じような症状の場合に有効です。ただし、耐用年数が大幅に超えている場合や、劣化症状が重い場合は、内部補修できる張り替えを選択しましょう。
DIY補修はイタチごっこになり結局手間もお金もかかる
応急処置としてDIY補修する方法がありますが、おすすめはできません。他の劣化箇所が現れるたびにイタチごっことなる場合が多く、外観の美観も損ねます。2階以上は足場の設置が必要で危険な作業となるため、プロに任せるのが賢明です。
軽度の劣化症状であってもDIYせず、専門の業者に相談するようにしましょう。
サイディングに補修が必要【4つの理由】
サイディングは劣化症状を適切に補修しないと、外壁全体の劣化を早めたり、日常生活に影響を与える原因となります。
補修が必要な理由
- 雨漏れの原因になる
- 建物内部にカビが生える
- シロアリ発生の原因になる
- 凍害が起きる恐れがある
サイディングの寿命は15年〜30年と言われていますが、これは定期的に塗装などの補修を行なった場合の耐用年数です。
例えばひび割れや剥がれがあると耐震性や耐火性、防水性を低くします。放置すれば症状は悪化していくので、建物の寿命は短くなります。
建物の寿命を伸ばすためにも、劣化症状の放置はせず、定期的にメンテナンスをしましょう。
ひび割れやシーリング劣化は雨漏れの原因になる
建物が雨漏りする原因は、外壁部にできた隙間から雨水が侵入するためです。サイディングのひび割れやシーリングの劣化、防水シートの破損部分から浸水すると、建物内部の建材や壁紙までも腐食させます。
雨漏れの原因になる劣化症状
- シーリングの劣化
- サイディングのひび割れ
- サッシの歪みや変形
- 防水シートの破損
外壁内部にある防水シートの破損は、外観からでは判断できません。外壁に目立った劣化症状がないのに雨漏りする場合は、業者に連絡して点検してもらいましょう。
補修はシーリングの打ち増しや打ち替え、サイディングの張り替えなどが必要です。サッシもシーリングの打ち増しで固定されるケースが多いです。
建物で雨漏れしやすい場所は?
雨漏れしやすい場所は、シーリングが使用されている箇所や別素材との接合部です。具体的には下記のような場所を確認してください。
- サイディングの目地
- 窓やベランダの開口部
- 水切り金具の接合部
- サイディングの破損による隙間
水分が侵入すると建物内部にカビが生える
雨漏りした外壁内部に水が溜まると、内部にカビが生えやすくなります。日が当たらず風通りが悪い建物内部はカビが好む場所で、建物外部よりも増殖しやすいので注意が必要です。とくに建物北面の外壁は日当たりが悪く乾燥しにくいのでカビが生えやすいです。
カビは放置すると建物内部の劣化が進み、耐久性が低くなります。また、カビはアレルギーを引き起こす恐れもあります。建物だけでなく人体にまで影響を与えるため、外壁に隙間や剥がれを見つけたら、内部の点検も行うようにしましょう。
カビは放置すると深くまで根を張る恐れがあるので、早めの対処を心がけましょう。
建物内部にカビが生えている場合は、既存外壁を剥がして建材や防水シート交換を行います。サイディングの塗装・カバー工法では対応しきれないので、張り替えが必要です。
木材が水分を吸うとシロアリ発生の原因になる
サイディングの劣化によって雨漏りし、内部まで水が侵入すると、シロアリが発生する恐れがあります。シロアリは柔らかい木材を好むため、湿っている木材は侵食しやすい環境です。
シロアリを放置すると建物内部の木材を食べ進めて脆くし、耐久性や耐震性を低くします。外壁に劣化症状があればシロアリ発生の恐れがあるので、心配な人は業者に相談しましょう。
防蟻剤を使用してシロアリを駆除し、被害にあった建材の補強を行います。防蟻剤だけでは侵食された部分の強度が低下している恐れがあるので、必ず業者に点検してもらいましょう。
寒冷地で水分が侵入すると凍害が起きる
サイディングのひび割れ部分などに溜まった水分が凍結・膨張を起こし、外壁が割れる恐れがあります。冬の気温が0度を下回る地域や昼夜の寒暖差が激しい地域で起こりやすい凍害ですが、全国どこでも起こり得ます。
下記のような箇所は凍害の被害を受けないよう注意深く確認しましょう。
凍害が発生しやすい場所
- お風呂やキッチンなど水回りの外壁
- シーリング周辺
- 窓サッシの下
凍害は放置すると内部の水の吸収スピードを早め、下地や木材を劣化させます。
サイディング補修でやってはいけないNG例
サイディングの補修でNG行動をしてしまうと、建物の耐久性が低くなる恐れがあるので必ず確認してください。
サイディング補修でやってはいけないNG例
- 部分補修だけで安心してその後のメンテナンスを怠る
- 幅0.3mm以上の大きなひび割れを部分補修で済ます
- 外壁内部まで劣化しているのに表面しか補修しない
- 誤った知識でDIY補修してしまう
部分補修だけで安心してその後のメンテナンスを怠る
部分補修はあくまで応急処置のため、その後は劣化具合に応じてメンテナンスが必要です。部分補修だけで安心して放置すると、建物の劣化が悪化する恐れがあります。
部分補修後も外壁をよく確認しましょう。下記のような症状がある場合は、全体補修を検討してください。
全体補修したほうが良いケース
- ひび割れや剥がれが複数箇所ある
- 建物全体にチョーキングや色褪せがある
- カビやコケが目立つ
幅0.3mm以上の大きなひび割れを部分補修で済ます
幅0.3mm以上の大きなひび割れは、部分補修ではなく全体補修を行います。幅0.3mm以上・深さ5mm以上は構造クラックと呼ばれ、専門業者の本格的な改修が必要です。
構造クラックは適切な対処をしないと、雨漏りによるカビの腐食や、シロアリの発生につながります。内部の劣化は全体補修でしか確認できないので、点検を依頼しましょう。
幅0.3mm以下は部分補修できる?
幅0.3mm以下・深さ4mm以下のクラックは部分補修、もしくは経過観察で問題ありません。判断に迷った場合は専門業者に確認してもらいましょう。
外壁のひび割れについてはこちらで詳しく解説しています。
>>外壁塗装のひび割れはどうする?補修が必要?原因と対策を徹底解説
外壁内部まで劣化しているのに表面しか補修しない
症状や塗装後の経過年数によっては、外壁内部まで劣化が広がっている恐れがあります。表面のみの補修で内部の劣化を放置すると、建物の耐久性に影響を与えるため注意が必要です。
表面のみの補修だと不十分なケース
- サイディングやシーリングの劣化を補修したが、内部が雨漏れしていた
- 断熱材や防水シートが腐食していた
- 下地に湿気がたまり、カビが広がっていた
内部は自分で確認できないので、専門業者に点検してもらいましょう。
誤った知識でDIY補修をおこなってしまう
誤った知識でDIY補修を行うと、見えない劣化を見過ごす恐れがあります。内部の劣化や構造上補修したほうが良い場所など、素人では判断がつきません。
また、ホームセンターの補修材と業者が使用するプロ用品では品質に差があります。一部分のみホームセンターの材料で補修すれば外観にも影響するため、おすすめできません。
サイディングの補修でよくある質問
サイディングの補修でよくある質問をまとめました。まだサイディングの補修に関して不安がある人は、ぜひ参考にしてください。
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サイディングはDIYで補修できますか?
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ほかの劣化症状を見逃したり、外観の美観を損ねる恐れがあります。高所での作業も危険なため、劣化症状を見つけたら専門業者に依頼しましょう。
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一番補修に時間がかかる工法はどれですか?
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1番補修に時間がかかるのは、サイディングの張り替えです。既存のサイディングを剥がして新しいサイディングを張り付けるため、ほかの工法より時間がかかります。外壁の広さや天候によって変動しますが、工期は30日以上かかります。
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サイディングで劣化が早い場所はどこですか?
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サイディングで劣化が早い場所は、直接日光が当たる場所です。サイディングは紫外線の刺激に弱く、熱を溜め込みやすい性質があります。そのほかの劣化しやすい場所は、下記が当てはまります。
・シーリング部分
・窓サッシの周り
・浴室の外壁など、湿気が溜まりやすい場所
サイディングの補修まとめ
本記事では、サイディングの補修について解説しました。小さな劣化症状でも適切に補修しなければいけない理由は、下記のような恐れがあるためです。
適切な補修が必要な理由
- 雨漏れの原因になる
- 建物内部にカビが生える
- シロアリ発生の原因になる
- 凍害が起きる恐れがある
補修の仕方は劣化症状によって6つの補修方法から選択できますが、補修を行う際は下記4つに注意しなければなりません。
補修を行うときに注意すべきこと
- 部分補修だけで安心せずその後も定期的なメンテナンスを行う
- 幅0.3mm以上の大きなひび割れは速やかに全体補修する
- 外壁内部まで劣化している場合、塗装・重ね貼りでは対応できない
- 誤った知識でDIY補修しない
小さな劣化症状でも補修方法は自己判断せず、必ず専門業者に相談するようにしましょう。