外壁塗装における採用率が70~80%を占めるシリコン塗料。名前くらいは聞いたことがある方も多いかと思います。とはいえ、シリコン塗料の詳しい特徴までは知らないという方がほとんどではないでしょうか。
そこでこの記事では、シリコン塗料のメリットやデメリット、費用について詳しく解説します。おすすめ塗料も4種類紹介しますので、塗料選びの参考にしてください。
この記事のポイント
- シリコン塗料は耐久性が高く、価格と性能のバランスがよい
- シリコン塗料の費用相場は、2,500~3,200円/㎡と比較的安価
- シリコン塗料は製品数が多く、好みの色や価格帯を選べる
- シリコン塗料は適切な施工をしなければ、十分な機能性は得られない
外壁塗装に使われるシリコン塗料とは?メリット・デメリットを紹介
シリコン塗料とは、その名のとおりシリコン樹脂を主成分とした塗料のことです。ベースとなるアクリル樹脂にシリコン樹脂を配合したもので、正式名称は「アクリルシリコン」と呼びます。
アクリル樹脂をベースにしているといっても、グレードの低いアクリル塗料とはまったくの別物です。アクリル塗料の耐用年数は4~7年ほどですが、シリコン塗料の耐用年数は10~15年と約2倍の耐久性を誇ります。
シリコン塗料は耐久性や耐候性に優れており、外壁塗装の定番塗料といっても過言ではありません。この章では、そんな定番塗料であるシリコン塗料のメリットとデメリットを4つずつ紹介します。
メリット1.紫外線や熱に強く耐久性が高い
シリコン塗料の主成分であるシリコン樹脂の中には、シロキサン結合という成分が含まれています。シロキサン結合はガラスや鉱石などの無機物と同じ構造で、高い結合力と非常に安定した性質を持っていることが特徴です。
そのため、シロキサン結合を含むシリコン塗料は紫外線や熱に強く、耐久性が高いです。中には600度前後の熱に耐えられる種類もあり、直射日光が当たる南面や西面への塗布にも向いています。
炎天下にさらされても塗膜が劣化しづらく、長期間にわたり劣化症状が現われにくい塗料です。
メリット2.艶があるため汚れが付着しづらい
シリコン塗料の多くは、艶が出る仕上がりです。艶がある分、表面が滑らかでツルツルしているため、ホコリや排気ガスなどの汚れが付着しづらくなります。
また、先述したシロキサン結合は、親水性に優れていることも特徴。外壁に汚れが付着した場合は、塗膜と汚れの隙間に水が入り込んで汚れを洗い流してくれます。汚れが付着した状態が続かないため、10~15年と長期間にわたり塗膜の劣化を防ぐことが可能です。
ただし、同じシリコン塗料であっても艶なし塗料を選ぶと耐久性が劣ることを頭に入れておいてください。艶なし塗料は表面がツルツルしていない分、汚れが付着しやすいです。
メリット3.価格と性能のバランスがよい
シリコン塗料は価格と性能のバランスに優れた塗料です。費用相場は2,500~3,200円/㎡と塗料の中では比較的安価でありながら、耐候性や耐熱性、耐久性が高いことから、現在、住宅の外壁や屋根でもっとも多く使用されています。
安価なアクリル塗料やウレタン塗料に比べると価格は高いですが、耐久性は約2倍あり、塗装メンテナンスの回数を減らせます。
メリット4.製品数が多いため色や価格など好みの塗料を選べる
シリコン塗料は多くのメーカーから発売されており、ラインナップも充実しています。そのため、自分好みの色や予算に合わせて塗料を選べることがメリットです。
ただし、同じシリコン塗料でもシリコンの含有量によって性能や耐久性の高さは異なります。シリコンの含有量が少ないと耐久性は期待できないため、「日本ペイント」「関西ペイント」「エスケー化研」といった大手メーカーの塗料を選ぶと安心です。
塗料に含まれるシリコンの量は商品により異なります。少しでもシリコンを含んでいればシリコン塗料として勧める業者がいるため、塗料選びは慎重におこないましょう。
デメリット1:アクリル塗料やウレタン塗料よりも高価
シリコン塗料は、アクリル塗料やウレタン塗料よりも高価です。メリットでもお伝えしたとおり、耐久性が約2倍になる分、どうしても費用は高くなってしまいます。
そのため、数年以内に建て替えや退去の予定がある場合は、シリコン塗料での塗装はおすすめできません。塗料の寿命が余るだけで、無駄な費用を支払うことになります。
デメリット2:10年ほど経過すると塗膜が固くなりひび割れやすくなる
塗装直後はそれなりの柔らかさをもつシリコン塗料ですが、10年ほど経過すると塗膜が固くなりひび割れやすくなります。固くなった塗膜は、外壁材の動きに追従できません。
そのため、地震などの揺れで建物が衝撃を受けてしまうとひび割れを起こします。
ただし、塗装後3~5年でひび割れが発生した場合は施工不良の可能性が高いです。塗料を規定以上に薄める、塗る回数を減らすなどといった手抜き工事をされると、塗料本来の耐用年数が発揮できなくなります。
万が一、塗装後数年で塗膜の浮きや剥がれが生じた場合は、速やかに施工業者に連絡してください。
デメリット3:撥水効果が高いため重ね塗りしづらい
塗膜が固く撥水効果が高いことがメリットであるシリコン塗料ですが、撥水性が高いゆえに重ねた塗料を弾く習性があります。そのため、重ね塗りしづらいことがデメリットです。
重ね塗りをする場合は、適したシーラーやフィラーといった下塗り材をきちんと塗布することで密着性を高められます。シリコン塗料の重ね塗りは難しいため、しっかりと知識のある業者に依頼しましょう。
デメリット4:顔料が沈殿しやすく施工に手間がかかる
シリコン塗料に含まれる顔料は沈殿しやすく、塗装する際はこまめにかき混ぜながら使わないといけません。
顔料とは、塗料に色をつけるための成分のことです。そのため、かき混ぜが不十分だと色むらが出てしまったり、色見本のような艶や色味にならなかったりする可能性があります。
シリコン塗料の施工は手間がかかり扱いが難しいため、DIYには向きません。
外壁塗装に使われるシリコン塗料の費用相場と耐用年数
外壁塗装に使われるシリコン塗料の費用相場と耐用年数は、以下のとおりです。
シリコン塗料 | |
---|---|
費用相場 | 2,500~3,200円/㎡ |
耐用年数 | 10~15年 |
シリコン塗料は数ある塗料の中では比較的安価ですが、耐用年数は10~15年と長いことが特徴。主に住宅で採用されており、価格と性能のバランスのよさから、業者に勧められることが多い塗料です。
シリコン塗料と他の塗料との違いは?
この章では、シリコン塗料とウレタン・ラジカル・フッ素塗料との違いをまとめました。塗料選びの参考にしてください。
シリコン塗料とウレタン塗料との違い
シリコン塗料とウレタン塗料の違いは、以下のとおりです。
シリコン塗料 | ウレタン塗料 | |
---|---|---|
主成分 | シリコン樹脂 | ポリウレタン樹脂 |
メリット | 費用と性能のバランスがよい | 光沢が美しく、ひび割れしにくい |
デメリット | 重ね塗りしづらい | 高湿や紫外線に弱い |
耐用年数 | 10~15年 | 8~10年 |
費用相場 | 2,500~3,200円/㎡ | 1,800~2,200円/㎡ |
ウレタン塗料はシリコン塗料よりも耐久性が低く、価格も安いです。
耐用年数は8~10年と短いため、シリコン塗料よりも塗り替え頻度が高くなります。30年間で塗り替えする回数は、シリコン塗料が2~3回に対してウレタン塗料は3~4回必要です。
また、ウレタン塗料は密着性が高いため、木材や鉄、塩ビ素材など、さまざまな素材に塗装可能です。そのため、雨どいや軒天などの付帯部に使用されるケースもあります。
ウレタン塗装は光沢のある高級感な仕上がりになるため、高級家具やフローリングなどにも使用されています。
シリコン塗料とラジカル塗料との違い
シリコン塗料とラジカル塗料の違いは、以下のとおりです。
シリコン塗料 | ラジカル塗料 | |
---|---|---|
主成分 | シリコン樹脂 | 高耐候酸化チタン、光安定剤 |
メリット | 費用と性能のバランスがよい | 汚れに強く、チョーキングが起きにくい |
デメリット | 重ね塗りしづらい | 施工事例が少ない |
耐用年数 | 10~15年 | 12~17年 |
費用相場 | 2,500~3,200円/㎡ | 2,500~3,200円/㎡ |
シリコン塗料とラジカル塗料の費用差はそれほどありませんが、ラジカル塗料のほうが耐用年数が長くコストパフォーマンスに優れています。
ラジカル塗料に含まれる高耐候酸化チタンには、紫外線による塗膜劣化を防止する効果があり、チョーキングが起きにくいことが特徴です。汚れがつきにくく耐久性に優れ、長い間、光沢を保持できます。
しかし、ラジカル塗料は2012年に販売された比較的新しい塗料のため、施工事例が少なく、対応できる業者が限られるので注意しましょう。
シリコン塗料とフッ素塗料との違い
シリコン塗料とフッ素塗料の違いは、以下のとおりです。
シリコン塗料 | フッ素塗料 | |
---|---|---|
主成分 | シリコン樹脂 | 蛍石を原料としたフッ素を含む合成樹脂 |
メリット | 費用と性能のバランスがよい | 耐久性が非常に高い |
デメリット | 重ね塗りしづらい | 価格が高い |
耐用年数 | 10~15年 | 15~20年 |
費用相場 | 2,500~3,200円/㎡ | 3,500~5,500円/㎡ |
フッ素塗料はシリコン塗料よりも耐久性が高い分、価格も高くなります。
しかし耐久性が非常に高いため、シリコン塗料よりも塗り替え回数が少なくて済みます。30年間で塗り替えする回数は、シリコン塗料が2~3回に対してフッ素塗料は1~2回です。
フッ素塗料は厳しい環境下での使用に適しているため、一般住宅以外にも、頻繁に塗り替えることのできない商業ビルや大きな建物で採用されるケースが多いです。
シリコン塗料がおすすめな人・おすすめしない人
自宅の外壁にシリコン塗料が適しているのかどうか、迷う人も多いでしょう。そこでこの章では、シリコン塗料がおすすめな人とおすすめしない人を紹介します。
おすすめな人:コストパフォーマンスを重視する人
シリコン塗料は一定の性能を得ながらも費用をおさえられるため、コストパフォーマンスを重視する人におすすめな塗料です。
紫外線や熱に強いシリコン塗料は、比較的安価でありながら長期間、美しい外観を保てます。耐用年数は10~15年と長いため、ウレタン塗料よりも塗装メンテナンスの回数が少なくて済みます。
おすすめしない人:高耐久な塗料での塗装を求めている人
高耐久な塗料での塗装を求めている人には、シリコン塗料はおすすめできません。
シリコン塗料よりもグレードの高いラジカル塗料やフッ素塗料を採用すれば、初期費用はかかるものの塗り替え回数が減るため、ランニングコストはおさえられます。15年以上の耐用年数を求めるのであれば、シリコン塗料は避けましょう。
人気のシリコン塗料4選
シリコン塗料は多くの塗料メーカーがさまざまな商品を販売しています。人気のシリコン塗料を4つ厳選しました。
1.エスケー化研「プレミアムシリコン」
エスケー化研が販売する「プレミアムシリコン」の特徴は、以下のとおりです。
プレミアムシリコンの特徴
- チョーキングを抑制する
- 長期間、カビや藻などの微生物汚染を防ぐ
- 隠ぺい性が高く粘度が柔らかいため、扱いやすい
- 美しい艶が長持ちする
プレミアムシリコンは、ラジカルコントロール技術の導入により、塗膜劣化の原因となるラジカルを抑制する効果があります。これにより、紫外線や雨風などの外的要因によって起こるチョーキングを防ぐことが可能です。
また、汚れが定着しづらいため、従来のシリコン樹脂よりも高い耐候性を発揮します。
耐用年数は14~16年とメーカーから公表されていますが、2015年に販売された比較的新しい塗料のため、耐用年数は期待値であることを覚えておきましょう。
2.日本ペイント「ファインSi」
日本ペイントが販売する「ファインSi」の特徴は、以下のとおりです。
ファインSiの特徴
- さまざまな素材に塗装できる
- 塗りやすく乾燥も早いので、冬場の施工にも安心
- 弾性があるためひび割れが起きにくい
- 透湿性が高く、内部結露を防ぐ
ファインSiは、特殊処理技術を使用した高耐候性シリコン系塗料です。
サイディングやコンクリート、FRP(繊維強化プラスチック)など、さまざまな素材に塗装できるため、オールラウンドな塗料とも呼ばれます。また、塗装後の乾きが早いので、作業時間を短縮できます。
ファインSiは比較的新しい塗料のため耐用年数は目安となりますが、メーカーによると11~15年は持つとされています。
3.エスケー化研「クリーンマイルドシリコン」
エスケー化研が販売する「クリーンマイルドシリコン」の特徴は、以下のとおりです。
クリーンマイルドシリコンの特徴
- 汚れが付着・定着しにくい
- セルフクリーニング機能に優れる
- 透湿性が高いため内部結露が起こりにくい
- 密着性が高く、さまざまな素材に塗布可能
クリーンマイルドシリコンは、エスケー化研の独自技術により、セラミックを複合した超低汚染で超高耐久な塗料です。汚れが付着しても塗膜表面と汚れの間に雨水が入り込み、汚れを浮かせて流します。
また、特殊設計により、長期間にわたりカビや藻の付着を防ぐ効果があります。
クリーンマイルドシリコンは2005年に発売されたロングセラー商品で、耐用年数は12~15年です。
4.関西ペイント「アレスダイナミックTOP」
関西ペイントが販売する「アレスダイナミックTOP」の特徴は、以下のとおりです。
アレスダイナミックTOPの特徴
- 紫外線による塗膜劣化を防ぐ効果が非常に高い
- 湿潤面や高湿度環境でも塗装可能
- フッ素塗料に迫る高耐候性と超低汚染を持つ
- 強力な付着力により、弱い面にも塗装できる
アレスダイナミックTOPは高性能シリコンレジン、UVトラップ、ラジカルバリヤコート、HALSラジカルキャッチャーの4つの独自技術で、紫外線による塗膜劣化を防ぎます。また、独自の緻密・強靭塗膜形成技術により高い付着力を持ちます。
同社から販売されるダイナミック強化剤と組み合わせることで、湿っている外壁への塗装も可能です。ただし、艶消しは艶ムラが生じるため、強化剤の使用はできません。
アレスダイナミックTOPの耐用年数は15年です。
アレスダイナミックTOPは、艶ありのみ雨の日でも塗装が可能です。天候に左右されず塗装ができるので、工事が遅れる心配がありません。
外壁塗装のシリコン塗料でよくある質問と回答
-
種類が多すぎて選べません。どうしたらよいですか?
-
三大メーカー「エスケー化研」「日本ペイント」「関西ペイント」の塗料を選ぶと間違いありません。歴史と実績があり、品質も安定しています。
-
外壁塗装はシリコン塗料で十分と聞きましたが本当ですか?
-
シリコン塗料で十分な性能が得られます。ただし、ラジカル塗料やフッ素塗料に比べると耐久性は劣るため、高耐久な塗料を求める人には物足りないと感じるでしょう。
-
シリコン塗料で塗装する場合、どのような業者に依頼すればよいですか?
-
シリコン塗料を塗装する際は、1級塗装技能士の資格保有者が在籍している、施工実績が豊富で説明が丁寧な業者に依頼しましょう。シリコン塗料に関する知識がない業者に依頼してしまうと、施工不良を起こす可能性があります。
外壁塗装シリコンのまとめ
シリコン塗料は価格と性能のバランスがよい、コストパフォーマンスに優れた塗料です。 外壁塗装における採用率が70~80%を占めるのも頷けます。
この記事のまとめ
- シリコン塗料を選ぶなら三大メーカーの塗料がよい
- シリコン塗料はウレタン塗料より耐久性が高く、ラジカル塗料やフッ素塗料より耐久性が低い
- シリコン塗料はコストパフォーマンス重視の人におすすめ
- シリコン塗料は高耐久な塗料を求める人には向かない
塗料は正しく塗装されなければ、その機能を十分に発揮できません。シリコン塗料は塗装が難しいため、業者選びは慎重におこないましょう。