せっかくのおしゃれなタイル調の外壁。塗装で塗りつぶしてしまうのはもったいない……。そのような方におすすめなのが「クリア塗装」です。
ただし、クリア塗装をするには一定の条件が必要になるため注意が必要です。
この記事では、クリア塗装のメリット・デメリットや費用相場について詳しく解説します。おすすめのクリア塗料も合わせて紹介しているので参考にしてください。
この記事のポイント
- クリア塗装は既存外壁のデザインを活かした仕上がりになる
- チョーキング現象が発生しないためきれいな見た目を長く保てるが、劣化に気づきにくい
- 劣化していない外壁、築5~8年までを目安に塗装する
外壁のクリア塗装とは?
外壁のクリア塗装とは、無色透明の塗料を使用して外壁に施す塗装方法のことです。クリア塗装は通常の外壁塗装とは異なり、色を付けるための顔料が含まれていません。
そのため、もとの外壁のデザインや意匠性を活かしつつ、建物の外観を改善して耐候性を向上させられます。
また、メーカーにもよりますが、通常の塗料と同様に艶感が選択できるため、好みや既存外壁との相性で艶感を選ぶとよいでしょう。艶ありであれば新品のようなピカピカした仕上がりに、3分艶や艶なしであれば現状の印象を変えずマットな仕上がりになります。
外壁をクリア塗装するメリット
クリア塗装は通常の外壁塗装のように外壁を保護できるのはもちろんですが、透明な塗料を使用することによるメリットがあります。
この章では、外壁塗装をクリア塗装で施工するメリットについて解説します。
1.既存外壁のデザインや色をそのまま活かせる
クリア塗装は現状の外壁のデザイン変えず、耐久性の向上と保護をすることができます。
そのため、現状の外壁の意匠性やデザイン性にこだわりがある人や、単色の塗りつぶしでは個性がなくて味気が無いと感じる方でも外壁塗装が可能です。
2.色選びに失敗しない
クリア塗装は色選びの必要がないため、配色のバランスや屋根・付帯部との色の調和を気にする必要がありません。
また、通常の塗料ではメーカーによっては数百色の中から選べるので、なかなか色が決まらないこともあるでしょう。カタログで選んだ色と実際に外壁に塗った時の色が若干違うように見えることもあります。
その点、クリア塗装なら色選びに失敗する心配もなく、外壁の美しさやデザインを際立たせられます。
色選びでよくある失敗や対策についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
〉〉外壁塗装の色がイメージと違う!失敗例と対策を徹底解説!
3.チョーキング現象が起こらない
チョーキングとは、塗膜が劣化して塗料の成分である顔料が表面に浮き出てくる現象のこと。外壁を手で触ると白い粉が付く場合は、チョーキング現象が起きている証です。
しかし、クリア塗料にはチョーキング現象の原因となる顔料が含まれていません。そのため、チョーキング現象で美観性が損なわれる心配がなく、きれいな見た目を維持できます。
4.色付き塗料よりも工程が少なく工期が短い
色付き塗料は下塗り1回と上塗り2回の計3回の塗布が必要ですが、クリア塗装は下塗りをする必要がありません。そのためクリア塗装は上塗り2回のみの塗布で済み、工期が短くなります。
工期が短ければ、職人の稼働日数が減るので人件費削減になるうえ、早く足場を解体できるため、隣人トラブルのリスクも下がります。
外壁をクリア塗装するデメリット
クリア塗装は既存の外壁を活かせる反面、透明な塗料であるがゆえのデメリットもあります。施工条件が限られる塗料でもあるのでクリア塗装をする前にデメリットも把握しておきましょう。
1.外壁の傷やひび割れが透けて見える
クリア塗料は透明なため、細かな傷やヘアークラックが透けて見えます。ヘアークラックとは、幅0.3mm以下の髪の毛のような細いひび割れのことです。大がかりな補修は必要としませんが、外壁塗装をする時期が近づいている目安だと覚えておいてください。
また、外壁に幅0.3mm以上の構造クラックと呼ばれる大きなひび割れがある場合は、シーリング材を擦り込んでひび割れ補修をし、外壁と同系色の塗料で塗装した後にクリア塗装を施します。
通常であれば、はみ出たシーリング材をカッターなどで削ぎ落として平らにしてから塗装をしますが、職人の技術が足りないとみみず腫れのような跡が残る場合があります。
外壁のひび割れの放置は厳禁?
幅0.3mm以下の細かなひび割れ(ヘアークラック)であれば、経過観察で問題ありません。しかし、0.3mm以上のひび割れ(構造クラック)は、水の侵入経路になり劣化を加速させてしまうため、補修する必要があります。
外壁のひび割れについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
>>外壁のひび割れは補修が必要?症状例や補修方法を徹底解説!
2.色付き塗料よりも塗装の周期が早くなる
一般的に外壁塗装の周期は約10年に一度といわれています。しかし、クリア塗装の場合、塗装の周期は通常の外壁塗装よりも短く、5年~8年が目安となります。なぜなら、クリア塗装は劣化していない外壁に施工することを前提としているからです。
クリア塗装は外壁の補修・調整をするための下塗り材を使用せず、上塗り材のみを2回塗布する工法です。そのため劣化の進んだ外壁には適していません。したがって、外壁が劣化の兆候を示す前に塗り替える必要があります。
築浅でも立地環境によっては早期に劣化が起きている場合もあるため、年に1度は専門業者による定期点検を受けておくとよいでしょう。
3.コーキングには塗装できない
多くのメーカーはコーキングの上に塗装することを推奨していません。コーキングにクリア塗装をした場合、塗膜がひび割れしやすく、割れたところから白く濁ったように目立ってしまったり、塗膜が剥離してしまったりする可能性が高いです。
また、種類によってはコーキング内の成分が表面に染み出て汚れてしまうブリード現象によって塗膜を汚してしまい、美観性を損なってしまいます。
4.劣化の判断がしにくい
クリア塗装はチョーキング現象が発生しないため、塗膜の劣化に気づきにくいという難点があります。チョーキング現象は視覚的に確認しやすい劣化のため、チョーキング現象がきっかけで外壁塗装を検討する人は少なくありません。
劣化に気づかず放置してしまうと、いつの間にか外壁の劣化症状が進行してしまい大掛かりな修繕が必要になったり、外壁の張替え工事が必要になったりする可能性があります。
5.塗り残しが分かりにくい
クリア塗装は透明な塗料なので、塗装した場所と未塗装の場所の見分けが非常に困難です。そのため、塗り残しに気づけないことや、悪質業者の場合は通常2回塗りが必要なところを1回塗りしかしない手抜き工事をされてしまうリスクがあります。
クリア塗装をする場合は経験豊富で信頼できる業者に依頼しましょう!
【注意】クリア塗装できない外壁4選
クリア塗装は外壁の素材や劣化状況によっては施工できない外壁があります。知らずにクリア塗装をしてしまうと、早期に塗膜が剥離したり、塗り直しが必要になったりすることも珍しくありません。
この章ではクリア塗装ができない外壁について解説します。自宅が該当していないかチェックしてみましょう。
1.チョーキング現象やひび割れなどの劣化がみられる外壁
クリア塗装は色付き塗装とは違い、下塗り材(シーラー)を使用しません。下塗り材は下地調整の役割をしているので、ある程度外壁が傷んでいてもカバーできますが、クリア塗装は下塗り材を使用しないため、劣化した外壁に施工してもすぐに剥離してしまいます。
また、ひび割れを隠すことができないため、美観性も悪くなるのでおすすめできません。
2.光触媒塗料や無機塗料、フッ素塗料などで特殊コーティングされた外壁
光触媒塗料や無機塗料、フッ素塗料は防汚性が高く、汚れを弾く力が強い塗料です。そのため、特殊コーティングされた外壁にクリア塗装をしてもすぐに剥離してしまいます。
特殊コーティングされた外壁は劣化し、汚れをはじく力が低下してからでないと塗装できません。しかし、劣化した外壁にクリア塗装は適さないため、特殊コーティングされた外壁にクリア塗装はできないというわけです。
中には特殊コーティングされた外壁でも塗装できるように、専用の下塗り塗料を開発しているメーカーの商品もありますが、どんな下地にも密着するというわけではないので施工業者や塗料メーカーに相談することをおすすめします。
光触媒塗料や無機塗料などで塗装された外壁は、ダイヤモンドコートやフッ素コートされたフライパンの焦げや汚れが落ちやすいのと同じ原理です。
3.塗料が弾きやすいアルミやステンレスなどの金属外壁
アルミサイディングやステンレス鋼板は塗料を弾きやすい素材のためクリア塗装に限らず塗装はおすすめできません。もし塗装をしたとしても、塗りたてはきれいに見えますが、すぐに塗膜が剥離して見た目が悪くなってしまいます。
また、窓サッシもアルミでできていることがほとんどなため、塗料がサッシに付着しないようにしっかり養生をしてもらいましょう。
ただし、ガルバリウム鋼板やトタンなどの鉄製の外壁の場合は表面の塗膜が劣化していない状態であれば溶剤系のクリア塗装が可能です。
塗装可否の判断は磁石がくっつくか否かで簡単に判断できます。磁石がくっつく場合は塗装でき、くっつかなければ塗装できません。
4.塗装の必要がないレンガ外壁やタイル外壁
厳密に言えば、レンガやタイルは塗装できないのではなく、非常に耐久性が高いため、そもそも塗装をする必要がありません。
ただし、タイル外壁の場合は汚れ防止やモルタル目地の保護のができる日本ペイントの「ファイングラシィSiクリヤー」やSK化研の「タイルセラクリーン」などのタイル専用塗料の使用は可能です。
外壁のクリア塗装にかかる費用相場と耐用年数
外壁のクリア塗装の費用相場は以下の表を参考にしてください。
塗料 | 費用相場(/㎡) | 耐用年数 |
---|---|---|
アクリル | 1,000~1,800円 | 3~8年 |
ウレタン | 1,500~2,500円 | 5~10年 |
シリコン | 2,000~3,500円 | 8~15年 |
フッ素 | 3,000~4,800円 | 12~20年 |
無機 | 3,500~5,000円 | 10~25年 |
クリア塗料はアクリルシリコンというタイプの商品が多く、費用と耐用年数はシリコンに該当します。より高い耐久性を求める場合はフッ素塗料や無機塗料がおすすめです。
アクリル・ウレタン塗料は耐久性や防水性があまり高くないうえに頻繁にメンテナンスが必要なため、近年ではあまり塗替え時に使用されません。
高耐久な塗料は初期費用は高く感じますが、塗替え頻度が少なくなるため、長い目で見るとコストパフォーマンスがよいといえます。そのため、シリコン以上のグレードのクリア塗装を選ぶことをおすすめします。
おすすめのクリア塗料3選
クリア塗料は多くのメーカーが取り扱っていますが、塗料は信頼できる大手メーカーのものを選ぶことがおすすめです。
そこでこの章では、大手メーカーである「日本ペイント」「エスケー化研」や、最近人気の「アステックペイント」のクリア塗料を紹介します。
1.日本ペイント「ピュアライドUVプロテクトクリヤー」
ピュアライドUVプロテクトクリヤーは、アクリルシリコン樹脂を主成分としたクリア塗装です。強力な分子結合により、高耐久な塗膜を形成します。
さらに、紫外線吸収材を含んでおり、太陽光からのダメージを防いで外壁の劣化を抑制。また、カビや藻の発生を防ぐことで外壁を清潔に保ち、美観を維持してくれます。
バリエーションも豊富で、匂いが気になりにくい水性タイプ、密着力の高い溶剤系タイプ、より高耐久なフッ素樹脂タイプから選ぶことができ、艶感はつや有り、3分つや有り、つや消しから選択できます。
2.エスケー化研「SKシリコンクリヤーW」
SKシリコンクリヤーWは、水性のアクリルシリコン樹脂塗料です。耐用年数が12~15年と非常に長持ちし、紫外線やオゾン、熱、湿気などの劣化因子に対しても優れた抵抗力を発揮します。
また、SKシリコンクリヤーWは1液タイプの塗料で希釈が不要なため、塗料の希釈不足や薄めすぎの心配がありません。艶感は、艶有りと3分艶の2種類から選択可能です。
3.アステックペイント「スーパーSDクリヤー無機」
スーパーSDクリヤー無機は、無機成分を約60%含有しており、硬く、耐久性な塗膜を形成します。さらに、無機塗料特有の弱点である塗膜の割れやすさを有機成分の配合率によって克服し、強さとしなやかさを両立させています。
耐用年数は20年以上と非常に長寿命で、表面に付着した汚れが雨水によって容易に洗い流されるセルフクリーニング効果を持っています。
外壁のクリア塗装でよくある質問と回答
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新築でクリア塗装をする場合、何年目までに塗装したほうがよいですか?
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新築5年目~7年目までが目安です。新築時はモルタルの場合はウレタン系の塗装、サイディングは焼きつけ塗装が施されており、その耐用年数は5年~10年です。クリア塗装は劣化していない外壁でないと施工ができないため、新築時に施工されている塗装の耐用年数を過ぎる前にクリア塗装をしましょう。
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クリア塗装する場合、コーキングの補修はどうなりますか?
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外壁塗装が終わってからコーキングを施工する「後打ち」で補修をします。コーキングの上にクリア塗装をしてしまうと不具合を起こしてしまうため、先打ちはおすすめできません。
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クリア塗装の施工手順を教えてください。
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クリア塗装の施工手順は以下の通りです。
1.高圧洗浄
2.クリア塗料2回塗布
3.コーキング施工
外壁クリア塗装のまとめ
この記事のポイント
- クリア塗装は既存外壁のデザインを残したまま塗替えができる
- チョーキング現象による美観性の低下を防げるが、劣化を見落としやすい
- 劣化した外壁にはクリア塗装ができないので、塗替えは築5年~7年が目安
クリア塗装は既存外壁のデザインや意匠性を活かせるメンテナンス方法です。今の外壁の雰囲気を変えたくないという方はクリア塗装がおすすめです。
ただし、クリア塗装は施工できる外壁に制限があります。まずは自宅の外壁がクリア塗装に適しているかどうか、信頼できる専門業者に調査してもらいましょう。