外壁塗装の契約書に記載されている内容を理解しないままサインしてしまう方は多いのではないでしょうか。外壁塗装の契約書は、トラブルを防ぐために重要な役割を果たします。
しかし、中には業者が有利になる内容が記載されている恐れがあります。トラブルから自分を守るためには、疑問や不信感を解消したうえで契約書を取り交わさなければなりません。
この記事では、外壁塗装の契約書で確認すべきポイントや、契約解除の方法について解説します。
トラブル実例も紹介しているので、外壁塗装に関する業者とのトラブルによって損をしたくない方は参考にしてください。
この記事のポイント
- 契約書以外の重要書類は保証書・請負代金契約書・請負契約約款があげられる
- 保証内容・損害の対処方法・クーリングオフに関する記載は要確認
- 〇〇一式と書かれてた場合や疑問が生じた場合は、自分が納得するまで業者に詳細を尋ねる
- クーリングオフは契約書を受け取ってから8日以内におこなわなければならない
- クーリングオフの方法は書面・メールで必要事項を記入し業者に送る
外壁塗装で契約書が必要な理由と重要書類
外壁塗装でトラブルを防止するためには契約書やほかの重要書類が不可欠です。自分が納得いく工事をしてもらうために、必ず書類を用意してくれる業者に依頼しましょう。
外壁塗装で契約書が必要な理由
外壁塗装で契約書が必要な理由は、工事内容や価格を明確にしトラブルを予防するためです。
公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターが調査した「2022年度における訪問販売の相談との比較」では、リフォームの契約に関するトラブルの発生は2,980件と分かりました。
契約書無しの場合に起こりうるトラブル
- 工事範囲の認識が相違していた
- 近隣とのトラブル対応の押し付け合いになった
- 工事後の不具合に対応してもらえなかった
- 工事前に費用を全額支払ったら業者と連絡が取れなくなった
契約書はトラブル発生時の重要な証拠です。
外壁塗装で交わす重要書類とは?契約書だけではない
外壁塗装の契約で交わす重要書類は、契約書を含め4つあります。各書類の名前と内容をまとめました。
書類の名前 | 内容 | 記載例 |
---|---|---|
工事請負契約書 | 建設業法で定められた内容 | 契約日・工事名・場所・料金・期間・支払い条件など |
保証書 | 工事後に発生した不具合の対応方法 | 保証範囲・保証内容・保証期間・箇所など |
請負代金内訳書 | 外壁塗装にかかる正式な金額 | 見積書に記載されていた金額 |
請負契約約款 | 契約書の内容を詳細に記載したもの | クーリングオフ・賠償金・遅延損害金など |
契約請負約款は、契約書の裏側に記載されている場合もあります。
1万円以上の契約書には収入印紙が必要
工事金額が1万円以上の契約書には、収入印紙が必要です。収入印紙とは、契約書を作成した際に課される印紙税を支払うために発行される証明書のことで、契約書に貼らなければなりません。
収入印紙代は工事金額により異なります。
工事金額 | 収入印紙代 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
100万円以下 | 200円 |
100万円以上200万円以下 | 400円 |
収入印紙を貼らないと印紙税法の違反にあたり、過怠税を支払わなければなりません。過怠税は収入印紙の3倍に相当する金額のため、業者と自分のどちらが用意するか確認して忘れず納付しましょう。
収入印紙を貼った後に上から割印するため、印鑑が必要です。
契約書で必ず確認すべき【7つの】ポイント
契約書の内容が業者側に有利な内容で記載されていると、トラブルが発生した際に損をする恐れがあります。そのため、契約書を受け取る際には確認すべきポイントをしっかりと抑えましょう。
請負契約書に記載されているべき項目と内容
請負契約書の項目と内容が漏れなく記載されているか確認しましょう。詳しくは次のとおりです。
項目 | ポイント |
---|---|
工事名 | 一般的には外壁塗装工事と記載される |
工事期間 | 明確な期間が記載されないといつまでも工事が続く恐れがある |
工事場所 | 依頼した箇所と合っているか確認する |
契約日 | クーリングオフの適用期間が決まるためはっきりと明記してもらう |
請負金額 | 消費税も記載されているか確認する |
支払い条件 | 工事後もしくは数回に分けて支払う方法が一般的 |
保証内容 | 保証期間・保証範囲・箇所を確認する |
両者の署名 | 業者の担当名も記載してもらう |
工事期間に「吉日」など具体的な日にちが書かれていない場合、工期が遅れていても業者に指摘できません。そのため、工事期間は〇月〇日など明確な期間を記載してもらう必要があります。
また、請負金額の内容が見積書の内容と確認して、もしも金額が異なる場合は理由を尋ねましょう。
施工不良・欠陥に対する保証内容を確認
工事後に施工不良や欠陥が生じた際の保証について、下記のポイントをおさえながら確認しましょう。
保証に関して確認するポイント
- 保証期間
- 保証箇所
- 保証範囲
保証期間は業者により異なりますが、一般的には工事後1~5年です。
しかし、保証期間内でも、欠陥箇所が保証対象外の場合は対応してもらえません。特に、塗料がはがれやすい木部・鉄部は、保証箇所に該当するかどうか要確認です。
また、外壁の色あせなどは保証範囲外になるケースがほとんどです。工事後、欠陥部分について業者と揉めないために、どこまで保証してもらえるかあらかじめ把握して契約しましょう。
天災による外壁の欠陥は保証対象外です。
工事による第三者が損害を受けた場合の条項を確認
外壁塗装工事によって、近隣住民などの第三者に損害を与えた場合の賠償責任や対処方法の内容を契約時に確認しましょう。
トラブル発生時、第三者に損害を与えた場合の対処法が契約書に記載されていれば、業者と施主のどちらが責任を負うか揉めるリスクを避けられます。
多くの業者は、第三者の物に損害を与えた場合の賠償金に備えて、工事保険・賠償責任保険に加入しています。
そのため、業者側が責任を負うケースがほとんどです。
外壁塗装中によくある近隣からのクレームは?
工事中に響く騒音によって、近隣からクレームがくる恐れがあります。騒音の対処法など、詳しくはこちらの記事で解説しています。
クーリングオフに関する記載があるか確認
自宅で契約することの多い外壁塗装工事はクーリングオフの対象です。そのため契約でもクーリングオフについて記載されているか確認する必要があります。
クーリングオフに関する記載方法は、特定商取引に関する法律施行規則6条6項で定められています。
クーリングオフの記載方法
- 赤枠・赤字・8ポイント以上の活字で記載する
- 契約解除する際に施主が不利になる内容を記載しない
違約金の請求や、既に支払った金額を返金しない場合が、施主にとって不利になるケースの一例です。
クーリングオフの詳しい解説はこちらで解説しています。
「〇〇一式」ではなく詳細な記載
工事内容の明細は「〇〇一式」などあやふやな表現ではなく、各項目詳細に記載されているか確認する必要があります。
例えば、「塗装一式」と記載されていると、施主は費用の内訳をはっきりと把握できません。どの箇所で何の作業をするか分からないと、業者に対する不安につながる恐れがあります。
対して「外壁・軒天・破風」など塗装する箇所と料金が明記されていれば、納得したうえで工事を依頼できます。
仮に「〇〇一式」と記載されている部分があったら詳細を聞いて、理解したうえで工事を依頼しましょう。どの工程にどれくらいの費用が掛かっているか把握すれば、納得いく工事につながります。
見積書の作成時点で「〇〇一式」と記載している業者はおすすめできません。
自分で確認できる「契約書のセルフチェック表」
契約書を受け取る際に、自分で確認できる重要項目のチェック表を作成しました。契約書はトラブル発生時の重要な証拠になるため、しっかりと確認しましょう。
①自分・業者の名前が合っているか |
②工事現場の住所が合っているか |
③着工日・完成予定日が記載されているか |
④代金は見積書通りか |
⑤工事代金の支払日が記載されているか |
⑥記名・捺印されているか |
⑦収入印紙が貼られているか |
⑧保証書・約款等の重要書類が添付されているか |
⑧の約款は契約書の裏側もしくは2枚目に用意されている場合が一般的です。
契約書は納得できるまで確認する
契約は書類の量が多く慣れない単語もありますが、少しでも納得のできない・分からない項目があれば、一旦その場で契約を止めて業者に確認しましょう。
契約書に目を通す際、念頭に置くと良いポイントは下記のとおりです。
契約書を確認する際のポイント
- 工事期間が不明瞭でないか
- 工事金額が見積金額よりも高くなっていないか
- 支払い方法に納得しているか
- 工事遅延時の対処法に納得できるか
たとえ知り合いの紹介で依頼した業者でも、疑問点を曖昧にしない姿勢が大切です。
外壁塗装は契約後でもクーリングオフで解約できる
業者に対して不満がある場合、クーリングオフで契約を解除できる可能性があります。
クーリングオフとは、条件を満たせば無条件で業者との契約解除ができる、消費者を守るための制度です。
ここではクーリングオフの利用条件や、方法について解説します。
外壁塗装でクーリングオフできる条件
下記の条件を全て満たせば、外壁塗装でクーリングオフが可能です。
クーリングオフできる条件
- 契約書を受け取ってから8日以内
- 過去一年以内に取引のない業者
- 個人と法人で交わした契約
例えば、10月10日に契約書を受け取ったら、10月17日までがクーリングオフの適用期間です。ただし、下記にあてはまる場合は、適用期間関係なくクーリングオフが可能です。
適用期間関係なくクーリングオフができる条件
- 業者が契約書を渡していない場合
- 契約書にクーリングオフに関する記載がされていない場合
- 業者がクーリングオフしないように誤認・脅迫させた場合
- 業者が突然訪問して契約を交わされた
工事が既に始まっていても、適用期間内ならクーリングオフを利用できます。
外壁塗装でクーリングオフできないケース
外壁塗装でも条件によってはクーリングオフできないケースがあります。
クーリングオフできないケース
- 自ら業者を家に招いたり、事務所へ行って契約した
- 適用期間が過ぎてしまった
- 訪問販売でない方法で契約した
訪問販売でない方法とは、一括見積サイトを介した業者や、知り合いの紹介で知り合った業者と契約したケースです。
ただし、契約を急かされるなど、じっくりと業者選びをできない状況だった場合はクーリングオフできる可能性があります。
外壁塗装の訪問販売は良くないの?
外壁塗装の訪問販売は悪徳業者の可能性が大いにあります。詳しくはこちらの記事で解説しています。
外壁塗装でクーリングオフする方法
外壁塗装の契約をクーリングオフするには、業者に下記の内容を書面もしくはメールで送りましょう。
業者に送る内容
- 契約(申し込み)年月日
- 事業者名
- 担当者名
- 商品名
- 契約金額
- 契約を解除する旨を記載(理由は書かなくてもよい)
- 書面発行日
- 自分の住所
- 自分の名前
書面で送る場合は、特定記録郵便・簡易書留・内容証明など、発信日の残る方法がおすすめです。また内容を証拠として残しておくために、コピーして保管しておきましょう。
メール送信・書面を郵送する日は、契約書を貰ってから8日以内です。ただし、業者に到着する期間は8日過ぎても問題ありません。
書面はハガキでも可能です。
外壁塗装の契約書で起きた【トラブル実例】
外壁塗装の契約書に関する知識が無いと、トラブルに巻き込まれる恐れがあります。トラブルの原因や防止策を把握して、損害を受けないようにしましょう。
外壁塗装の追加工事では契約書を交わさなくて良いと言われた
外壁塗装の施工中に発生した追加分について、契約書がいらないと言われたケースです。契約書を交わさないと、下記のトラブルが発生する恐れがあります。
契約書を交わさないと起こりうるトラブル
- 工事中に隣の家の洗濯物を塗料で汚した責任を巡って揉める
- 追加工事の範囲が共有できておらず業者と揉める
少額であっても、契約書は用意してもらいましょう。
クーリングオフできない契約だと言われた
クーリングオフできると思っていたものの、業者に「クーリングオフできない契約だ」と言われたケースです。
クーリングオフできない契約と言われた理由は下記が考えられます。
クーリングオフできない理由
- クーリングオフできない条件に当てはまっている場合
- 業者が嘘をついている
上述したように、契約方法や業者との関係性によってクーリングオフできない場合があります。
ただし、無条件で契約解除されないように嘘をついている業者も中には居るため、自分の状況がどちらに当てはまるのか見極めなければなりません。
もしも業者が嘘を付いている場合は、契約書を受け取ってから8日過ぎていてもクーリングオフできます。
施工数年後にひび割れ補修を依頼したが保証対象外だった
外壁にひび割れが見られ、契約書を見たところ保証期間内だったため業者に連絡したものの、ひび割れは経年劣化で保証対象外と言われたケースです。
外壁塗装の保証範囲の多くは、塗装した部分の塗膜のはがれのみに限定しています。塗膜のはがれは、施工不良が原因で起こりやすい症状だからです。
対して、ひび割れや変色などは経年劣化や環境が原因です。経年劣化や環境は避けられない劣化症状なので、保証対象外になります。
業者と保証に関する認識のギャップを生じさせないために、契約書を確認する際は保証期間だけでなく保証範囲、箇所にも目を通しましょう。
外壁塗装のはがれとは?
外壁塗装のはがれの補修方法は塗装か部分補修を行い、補修が難しい場合は張り替えになります。詳しくはこちらの記事で解説しています。
外壁塗装の契約書でよくある質問と回答
-
外壁塗装は契約書が必要ですか?
-
はい、必要です。契約書があれば価格や施工範囲が明記されているため、言った言わないで揉めるリスクを避けられます。
-
追加工事に対してもそれぞれ契約書が必要ですか?
-
追加工事にも契約書は必要です。第三者への損害の対処法を確認できるからです。
-
契約書に記載がないとクーリングオフできないですか?
-
契約書に記載がない場合でもクーリングオフは可能です。クーリングオフをするためには、書面もしくはメールで必要事項を記入して業者に郵送しましょう。
外壁塗装の契約書まとめ
外壁塗装の契約書はトラブルを防止するうえで重要な書類です。そのため、内容に漏れがないか、業者が有利な内容になっていないかしっかりと確認しましょう。
もしも契約書に対して不満があれば、クーリングオフで契約解除する方法があるため検討してみてください。
この記事のポイント
- 契約書以外の重要書類は保証書・請負代金契約書・請負契約約款があげられる
- 保証内容・損害の対処方法・クーリングオフに関する記載は要確認
- 〇〇一式と書かれてたり疑問が生じた場合は自分が納得するまで業者に詳細を尋ねる
- クーリングオフは契約書を受け取ってから8日以内におこなわなければならない
- クーリングオフの方法は書面・メールで必要事項を記入し業者に送る