塗料の中でも耐久性が高くメンテナンスコストがおさえられる「フッ素塗料」。主にビルやタワーなどの大型建造物で使用されることが多いですが、近年では一般住宅での採用率が増えているのをご存知でしょうか?
しかし、フッ素塗料の費用は高額です。定番の塗料であるシリコン塗料の費用相場が2,500~3,200円/㎡に対して、フッ素塗料は3,500~5,500円/㎡ほど。そのため、本当にフッ素塗料でよいのか悩む方も多いかと思います。
そこで本記事では、フッ素塗料の特徴からメリット・デメリット、費用相場、耐用年数を詳しく解説します。
おさえておくべきポイント
- フッ素塗料は高耐久でコスパのよい塗料
- 定番のシリコン塗料よりも費用は高いが、メンテナンスコストがおさえられる
- 費用相場は1㎡あたり3,500~5,500円
- 採用するなら「日本ペイント」「エスケー化研」「関西ペイント」のフッ素塗料がおすすめ
フッ素塗料とは? 高耐久でコスパのよい塗料
フッ素塗料とは、フッ素が含まれる合成樹脂を主成分とした外壁塗料です。フッ素塗料には、以下のような性能があります。
フッ素塗料の性能
- 耐久性
- 防水性
- 耐候性
- 耐熱性
- 親水性
- 防カビ・防藻性
フッ素塗料は塗装する面との密着性が高いため、長期間にわたって塗膜性能を保つ特徴があります。そのため塗膜の強度が落ちにくく、耐久性が高いことがフッ素塗料の大きな魅力です。
また、耐候性・耐熱性に優れていることから紫外線に強く、太陽光を浴び続けても色あせや劣化しにくいことも特徴。防水性も高いため、外壁材を雨水から守ってくれるところもポイントです。
さらにフッ素塗料は、親水性が高いという性質を持っています。親水性とは、水に溶けやすく、また混ざりやすい性質のことです。親水性が高いことで、外壁表面の汚れを雨と一緒に洗い流してくれる効果があります。
防カビ・防藻性にも優れており、カビや藻が生えにくいのも大きな特徴。日の当たりにくい北面や西面の外壁にも最適な塗料です。
このように、フッ素塗料は耐久性や防水性などが高いことにより長期間にわたって外壁を守ってくれます。そのため、メンテナンスコストがおさえられ、コストパフォーマンスのよい塗料として人気があります。
フッ素塗料の5つのメリット
フッ素塗料には、以下5つのメリットがあります。
フッ素塗料のメリット
- 耐用年数が長い
- 紫外線や雨風に強く長持ちする
- カビや藻が付着しづらい
- 汚れが付着しづらい
- メンテナンスコストが削減できる
1.耐用年数が長い
フッ素塗料は、耐用年数15~20年と長いことが特徴です。他の塗料と比べると、その差は一目瞭然です。
外壁塗料の種類 | 耐用年数 |
---|---|
アクリル | 4~7年 |
ウレタン | 8~10年 |
シリコン | 10~15年 |
ラジカル | 12~17年 |
フッ素 | 15~20年 |
無機 | 20~25年 |
数ある塗料の中でもフッ素塗料は非常に耐久性が高く、定番のシリコン塗料と比べると約1.5倍の耐久性を誇ります。
耐用年数が長いことで、メンテナンスの回数が少なく済むことも大きなメリットです。
外壁塗料の種類についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
〉〉外壁塗装の塗料8種類|価格や耐用年数、メリット・デメリットを解説
2.紫外線や雨風に強く長持ちする
フッ素塗料は耐候性が高いため、紫外線や雨風に強く長持ちします。
外壁が紫外線や雨風にさらされていると、経年劣化によって色あせしやすくなります。しかし、フッ素塗料なら紫外線や雨風に強いため劣化しにくく、長期間美しい外観を保つことが可能です。
3.カビや藻が付着しづらい
フッ素塗料は防カビ・防藻性に優れているため、カビや藻が付着しづらいというメリットがあります。
外壁の中でも湿度が高い場所や太陽光が当たりづらい場所はカビや藻が発生しやすく、家の外観が非常に古く見えてしまいます。
フッ素塗料ならカビや藻が付着しづらいため、今までカビや藻に悩まされていた方でも安心できるでしょう。
4.汚れが付着しづらい
フッ素塗料は親水性が高いため、汚れが付着しづらい塗料です。
親水性が高いことで雨水が塗膜と汚れの間に入り込み、汚れを一緒に流してくれます。汚れが付着しづらいことで、長期間にわたり美しい外観を保つことが可能です。
近年では技術が進歩し、フッ素塗料の性能を「超低汚染性」などと呼ぶこともあります。
5.メンテナンスコストが削減できる
フッ素塗料は耐久性の高さからメンテナンスの回数が少なく済み、その分メンテナンスコストが削減できるというメリットがあります。
たとえば、30坪住宅にシリコン塗料とフッ素塗料それぞれで塗装したとします。40年間にかかるメンテナンス回数とメンテナンスコストは以下のとおりです。
塗料の種類 | 40年間のメンテナンス回数 | 40年間のメンテナンスコスト |
---|---|---|
シリコン | 3回 | 約250万円 |
フッ素 | 2回 | 約230万円 |
上記のようにフッ素塗料はメンテナンス回数が少なく済むため、トータルメンテナンスコストがおさえられます。
フッ素塗料の4つのデメリット
フッ素塗料には、以下4つのデメリットがあります。
フッ素塗料のデメリット
- 価格が高いため初期費用がかかる
- 塗膜が固くひび割れする恐れがある
- 艶あり塗料しか扱っていない
- 塗料が付着しにくく再塗装が難しい
1.価格が高いため初期費用がかかる
フッ素塗料の大きなデメリットは、初期費用が高いことです。
フッ素塗料の価格は3,500~5,500円/㎡が相場となっており、30坪住宅の場合は約90万~110万円ほどかかります。
シリコン塗料だと約75万~100万円ほどとなるため、フッ素塗料はほかの塗料に比べると初期費用が高くなると覚えておきましょう。
2.塗膜が固くひび割れする恐れがある
フッ素塗料は、ほかの塗料に比べると塗膜が固いため弾力性がなく、外壁がひび割れすると塗膜も一緒にひび割れする恐れがあります。
特にひび割れしやすいモルタル外壁の上に塗装するとひび割れする可能性が高くなってしまうため、注意が必要です。
最近はフッ素塗料でも弾力性のあるものが増えているため、家の外壁材に合ったフッ素塗料を業者に選定してもらうことをおすすめします。
3.艶あり塗料しか扱っていない
フッ素塗料は艶あり塗料しか扱っておらず、フッ素塗料で塗装すると光沢のある仕上がりになります。この艶こそ、親水性の高さを発揮してくれる証です。
艶あり塗料は汚れが付着しづらいことがメリットではありますが、マットな仕上がりを好む方にとってはフッ素塗料で塗装することはデメリットといえるでしょう。
4.塗料が付着しにくく再塗装が難しい
フッ素塗料は、塗料が付着しにくく再塗装が難しいというデメリットがあります。
フッ素塗料は塗膜が固く親水性が高いという性質から、再塗装する際に塗料が外壁に密着しづらくなってしまいます。
塗膜が固く親水性が高い性質を持つフッ素塗料ですが、その分、再塗装で新たに塗った塗料も弾いてしまうため、再塗装する際はフッ素塗料での塗装実績が多い業者に依頼するようにしましょう。
フッ素塗料を施した外壁に再塗装する場合は、塗料の密着性を高めるための特殊な下塗りなどの対処が必要です。
フッ素塗料の費用相場と耐用年数
フッ素塗料の費用相場は、1㎡あたり3,500~5,500円です。他の塗料と比べると価格が高く、一般住宅の外壁塗装でも工事総費用が100万円を超えることも珍しくありません。
実際にフッ素塗料で外壁塗装をした場合の費用相場は以下のとおりです。
坪数 | 費用相場 |
---|---|
20坪 | 約75万~90万円 |
30坪 | 約90万~110万円 |
40坪 | 約100万~120万円 |
50坪 | 約110万~140万円 |
上記のように、フッ素塗料による外壁塗装は初期費用が高額になることがわかります。ただし、その分耐用年数は15~20年と長いため、最終的なメンテナンスコストはおさえられるでしょう。
フッ素塗料と他の塗料との違いは?
ここからは、フッ素塗料と他の塗料との違いを解説します。
フッ素塗料とシリコン塗料との違い
フッ素塗料 | シリコン塗料 | |
---|---|---|
主成分 | 蛍石を原料としたフッ素樹脂を配合した合成樹脂 | シリコン系・アクリルシリコン系の合成樹脂 |
費用相場 | 3,500~5,500円/㎡ | 2,500~3,200/㎡ |
耐用年数 | 15~20年 | 10~15年 |
特徴 | ・耐久性 ・耐熱性 ・耐候性 ・親水性 ・防カビ性 ・耐水性 | ・耐久性 ・耐熱性 ・耐候性 ・耐水性 |
仕上がり | ツヤ、光沢 | ツヤ、光沢 |
シリコン塗料は、外壁塗料の中でも最もスタンダードな塗料です。耐久性にも優れており、コストパフォーマンスが高いことで人気があります。
ただし、耐久性や耐用年数ともにフッ素塗料には劣ってしまいます。そのため、より高い耐久性や長い耐用年数を求めるのであればフッ素塗料がおすすめです。
シリコン塗料についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
〉〉外壁塗装で人気のシリコン塗料!メリット・デメリット、費用、おすすめ塗料まで徹底解説
フッ素塗料と無機塗料との違い
フッ素塗料 | 無機塗料 | |
---|---|---|
主成分 | 蛍石を原料としたフッ素樹脂を配合した合成樹脂 | 無機物を主成分とした樹脂 |
費用相場 | 3,500~5,500円/㎡ | 4,500~5,500円/㎡ |
耐用年数 | 15~20年 | 20~25年 |
特徴 | ・耐久性 ・耐熱性 ・耐候性 ・親水性 ・防カビ性 ・耐水性 | ・耐候性 ・防カビ性 ・親水性 ・不燃性 |
仕上がり | ツヤ、光沢 | ツヤ、光沢 |
無機塗料は、フッ素塗料よりもさらに耐用年数が長い外壁塗料です。他の外壁塗料はほとんどが有機塗料になりますが、無機塗料は炭素を含まない無機物を主成分としています。
炭素を含まないことで紫外線による劣化が少なく、耐候性が高いことが大きな特徴です。
ただし、無機塗料はフッ素塗料よりも価格が高いため、施工費用が高額になります。
フッ素塗料がおすすめな人・おすすめしない人
ここからは、フッ素塗料がおすすめな人とおすすめしない人の特徴をそれぞれ紹介します。
おすすめな人:高耐久かつメンテナンスコストをおさえたい人
フッ素塗料がおすすめな人は、高耐久かつメンテナンスコストをおさえたい人です。
フッ素塗料は初期費用が高くなってしまいますが、高耐久のためその分メンテナンス回数が少なく済みます。「メンテナンスコストが削減できる」で紹介したとおり、40年間にかかるメンテナンス回数は2回、メンテナンスコストは約230万円ほどです。
定番のシリコン塗料よりもメンテナンスコストがおさえられるほか、外壁塗装する回数も減るため、施工依頼する手間も減らせます。
そのため、初期費用が高くなっても、高耐久でメンテナンスコストやをおさえたい人や手間を省きたい人にはフッ素塗料がおすすめです。
おすすめしない人:初期費用を安くおさえたい人
外壁塗装の初期費用を安くおさえたい人には、フッ素塗料はおすすめできません。
初期費用をとにかくおさえたい場合は、シリコン塗料(2,500~3,200円/㎡)やラジカル塗料(2,500~3,200円/㎡)がおすすめです。
ラジカル塗料の特徴や価格、メリット・デメリットは、下記の記事で詳しく解説しています。
>>外壁塗装におすすめな「ラジカル塗料」とは?特徴や価格、メリット・デメリットを解説
ただし、シリコン塗料は耐用年数10~15年、ラジカル塗料は12~17年とフッ素塗料よりも短いため、メンテナンス回数が多くなることを頭に留めておいてください。
人気のフッ素塗料3選
人気のフッ素塗料は以下の3つです。
人気のフッ素塗料3選
- 日本ペイント「ファイン4Fセラミック」
- エスケー化研「クリーンマイルドフッソ」
- 関西ペイント「セラMフッソ」
日本ペイント「ファイン4Fセラミック」
日本ペイントのファイン4Fセラミックは、塩素を含まない弱溶剤系のフッ素樹脂塗料です。
日本ペイント「ファイン4Fセラミック」の特徴
- 耐候性が高い
- 耐汚染性が高い
- 防藻・防カビ性が高い
- 透湿性がある
- 弾性に優れている
- 弱溶剤系で下地を選ばない
ファイン4Fセラミックは、耐候性、耐汚染性、防藻・防カビ性、透湿性、弾性に優れていることで長期間綺麗な外壁を維持でき、メンテナンスコストをおさえられます。
また、弱溶剤系であることから下地を選ばず、再塗装しやすいのが大きな特徴です。再塗装しにくいというフッ素塗料のデメリットを大きくカバーしています。
エスケー化研「クリーンマイルドフッソ」
エスケー化研のクリーンマイルドフッソは弱溶剤系のフッ素塗料です。
エスケー化研「クリーンマイルドフッソ」の特徴
- 期待耐用年数 15~20年
- 超低汚染性に優れている
- 超耐久性が高い
- 防カビ・防藻性が高い
- 透湿性が高い
- 弱溶剤系で既存塗膜の種類問わず密着性が高い
- 臭気が少なく作業環境に優しい
クリーンマイルドフッソはセラミック複合の特殊技術でできており、超低汚染性に優れています。また、超耐久性、防カビ・防藻性、透湿性が高いのも特徴です。
弱溶剤で構成されているため、既存塗膜の種類問わずに高い密着力を発揮します。また、強溶剤塗料に比べると臭気が少ないため、作業環境の改善も図れる塗料です。
期待耐用年数は15~20年となっています。
関西ペイント「セラMフッソ」
関西ペイントのセラMフッソは、セラミック変性フッ素樹脂でできたフッ素塗料です。
関西ペイント「セラMフッソ」の特徴
- 耐久性が高い
- 耐候性が高い
- 耐汚染性が高い
- 防カビ・防藻性が高い
- 臭気が少なく作業環境に優しい
- 既存塗膜の種類問わず塗装できる
耐久性、耐候性、耐汚染性、防カビ・防藻性に優れており、大切な家の外壁をしっかり保護してくれます。
また、セラMフッソは塗料用シンナーで希釈ができるため、臭気が少なく作業環境に優しい塗料でもあります。
幅広い素材に対する適正を有しているため、既存塗膜の種類問わず塗装できるのも大きな特徴です。
外壁塗装フッ素塗料でよくある質問と回答
ここからは、外壁塗装におけるフッ素塗料でよくある質問にお答えしていきます。
-
外壁をフッ素塗料で塗装した場合、付帯部もフッ素塗料を使うべきですか?
-
付帯部もフッ素塗料を使うのがおすすめです。外壁にはフッ素塗料を、付帯部には安価な塗料を使用すれば全体の金額はおさえられますが、外壁と付帯部の耐用年数に差が生じてしまいます。耐用年数に差があると外壁と付帯部で別々にメンテナンスをしなければいけないため、メンテナンスコストが高くなる恐れがあります。付帯部もフッ素塗料を使えば、耐用年数が同じになるため、メンテナンスを同時におこなえて、コストもおさえらるでしょう。
-
耐久性が高いフッ素塗料が気になっていますが、価格が高くて悩んでいます。分割払いやローンは可能ですか?
-
外壁塗装において、分割払いやローン払いは可能です。外壁塗装で利用できる分割払いは、銀行の住宅ローンやリフォームローン、住宅金融支援機構のリフォーム融資、財形貯蓄の財形住宅融資、塗装業者が提供する信販系ローン、地方公共団体による融資、クレジットカードによる分割払いなどがあげられます。ご自身の状況や支払い金額に合った方法を選ぶことがポイントです。ただし、塗装業者によっては分割払いに対応していないところもあるため、事前に確認しておきましょう。
外壁塗装のローンについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
〉〉外壁塗装でローンを使うメリットは?金利や支払いで損しないためのポイントも徹底解説
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フッ素塗料で外壁塗装する場合、どのような業者を選べばよいですか?
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フッ素塗料で外壁塗装をするときは、フッ素塗料の施工実績が豊富な業者を選びましょう。フッ素塗料は、業者によって施工実績が少ないところがあります。フッ素塗料は商業施設やビルで使われていることが多く、一般住宅の塗料として普及してきたのは最近だからです。そのため、施工実績が豊富で確かな技術力を持った業者を選びましょう。また、フッ素塗料は初期費用が高くなることから、作業項目が細かく記載されている見積書を提示してくれる業者を選ぶことも大切です。
外壁塗装フッ素塗料のまとめ
フッ素塗料には、以下のような特徴があります。
フッ素塗料の特徴
- 耐用年数が長いのでメンテナンスコストがおさえられる
- 他の塗料に比べると高いため、初期費用が高額になりやすい
- 耐候性や防カビ・防藻性が高いことで美しい外観を保てる
- 親水性が高く汚れが付着しづらいのでお手入れが楽
フッ素塗料は価格が高いため初期費用は高くなりがちですが、その分耐用年数が長くメンテナンス回数が少なく済むため、トータルメンテナンスコストがおさえられます。
また、耐候性が高いことや親水性が高いことで紫外線による劣化や汚れの付着を防ぎ、長期間美しい外壁を保つことが可能です。
これから外壁塗装を予定している方は、フッ素塗料を選んでメンテナンスコストをおさえながら美しい外壁にしてみてはいかがでしょうか。