外壁にひびわれや剥がれを発見したときに行うサイディングの剥がし検査。外壁の内部を確認できる検査ですが、外壁の一部を破壊するため不安を感じる人も多いです。
今回は、サイディングの剥がし検査の費用やメリットについて、実例を紹介しながら解説します。
おさえておくべきこと
- 剥がし検査は外壁の劣化を早期発見できる
- 剥がし検査は劣化の原因がわかる
- 剥がし検査の費用相場は3〜5万円
- 検査後の原状回復が可能
サイディングの剥がし検査とは?本当に必要?
剥がし検査は内部の劣化状態と範囲を確認できる検査
剥がし検査とは、サイディング(の一部)を剥がして外壁内部や柱などが劣化しているか確認する検査のことです。
剥がし検査をすれば外壁だけでなく柱や断熱材の状態や劣化の原因がわかるので、サイディングを張り替えるべきなのか判断できます。
また、劣化している範囲も明確になるため、サイディングを全面張り替えせずに、部分張り替え(例えば北側面のみの張り替え、他は塗装のみ)で対応できるかの判断材料にもなります。
剥がし検査のタイミング【劣化を見つけたとき】
剥がし検査すべきタイミングは、外壁が劣化(ひび割れや剥がれ)している時です。
ひび割れや剥がれは外壁や塗装の経年劣化だけでは起きにくく、すでに外壁内部が損傷している可能性があるからです。
他にも以下のような症状が確認されたら業者に剥がし検査が必要か業者に確認しましょう。
剥がし検査が必要なケース
- 外壁にひび割れ、剥がれ、反り、浮きがある
- 室内に雨漏りによるシミがある
- 4〜6月に羽アリを見たことがある
- 20年以上外壁の塗り替えを行っていない
- 直貼り工法で施工されている
(通期工法は浸水・結露に強い)
剥がし検査は【約5万円】期間は約半日
剥がし検査にかかる費用と期間は下記を参考にしてください。
剥がし検査費用 | 3〜5万円 |
必要な期間 | 検査時間は3時間前後 |
あくまで相場なので、検査を実施する業者によって費用や期間は前後します。依頼する前に必ず詳細を確認するようにしましょう。
剥がし検査のメリット・デメリット
剥がし検査を行うメリットとデメリットを紹介します。
メリット1:外壁内部の損傷や劣化の早期発見できる
剥がし検査は、外壁の損傷や劣化を早期発見することができます。
劣化したサイディングを実際に剥がして内部の状態を確認できるので、どこに問題が起きて剥がれなどの症状が出たのかを分析できます。
内部の損傷や劣化
- 防水紙の穴や劣化
- 雨水進入による腐敗
- シロアリ被害
- 断熱材の隙間やズレ
- 窯業系サイディング材の膨張や劣化
- 施工不良
早めに対処しなければ外壁の劣化が進むため、剥がし検査による早期発見がとても重要です。
メリット2:適切な補修方法が選定できる
剥がし検査を行うと、劣化症状に最適な補修方法が選定できます。検査をしないと劣化部分のみの補修になりがちですが、検査をすれば劣化の原因を根本から補修することが可能です。
たとえば、防水紙に穴があいて雨漏りしていれば、防水紙の張り替え。シロアリによる被害が起きていればシロアリの防除を行えます。
部分的な補修で良いのか、全体補修が必要なのか判断できます。
メリット3:長期的なコスト削減につながる
剥がし検査は長期的なコスト削減につながります。
剥がし検査で劣化の原因を直せば、外壁のメンテナンス期間を伸ばすことが可能です。
詳細な検査をすることで将来的なリスクも予測できます。
デメリット1:検査費用が発生する
剥がし検査には検査費用が発生します。費用相場は3〜5万円ほどで、検査する業者によって差があります。
そのほかにも交通費や、2階以上であれば足場代を請求する業者もいます。修繕個所が見つかれば補修工事費用が別で発生するため、剥がし検査費用と修繕工事費用を合わせると一時的な費用の負担は重くなるかもしれません。
デメリット2:一部のサイディングを剥がす必要がある
剥がし検査は、外壁のサイディングの一部を剥がす必要があります。剥がした部分で必要な検査を行い、外壁トラブルの原因を究明するためです。
外壁のサイディングを切り取るのは大掛かりな作業であり、心理的なハードルが高いと感じる人や、割れなどの新しい傷ができる不安もあります。
信頼できる業者に相談できれば不安は軽減されます!
デメリット3:検査後に補修する必要がある
サイディングの一部分を剥がして検査を行ったら、すぐに補修作業が行われます。剥がした部分の復旧はもちろん、剥がす際に割れてしまった部分もパテなどで補修します。
また、補修不可能な場合は部分張り替えが行われます。現在の外壁材と同じものがない場合は近いものを選定するため、色や厚み、柄などに相違があるかもしれません。
さらにその場合は別途費用が必要なケースもあるため、剥がし検査費用が高くなる可能性があります。
デメリット4:一時的な騒音・塵が発生する
剥がし検査を行うとき、一時的に騒音や塵が発生します。剥がし検査では養生を行わないため、サイディングボードを剥がすときの塵や釘を打つときの騒音が隣家にも伝わります。
内部が腐敗していたりシロアリが発生していた場合は、埃や塵の量も増えます。施工業者に事前に作業時間を確認し、隣家に伝えておきましょう。
内部はボロボロ!剥がし検査の実例解説【写真つき】
ここでが実際に外壁の剥がれがあり、剥がし検査を行ったところ外壁内部の劣化が発見された実例を紹介します。
こちらではバルコニー外壁の剥がれが問題でした。
バルコニーやベランダの外壁は水分が浸透し、外壁内部が腐食・劣化しているケースが多いため水分測定を実施しました。案の定、異常値(50%以上で異常)をしたたため剥がし検査を行いました。
剥がし検査の結果、外壁内部は水分で腐食してボロボロになっていました。この状態ではどんなにグレードの高い塗料で塗装しても、すぐに剥がれて状態は悪化していきます。
対応として必要箇所の交換・補強・張り替えを行いました。
剥がし検査は、トラブルに対してどんな補修工事を行えば良いか教えてくれるので、必要最低限の費用で外壁の修繕が完了します。工事後は外壁が劣化した原因が全て改善され、安心して住み続けられます。
剥がし検査のやり方【4ステップ】解説
具体的なサイディングの剥がし検査のやり方を紹介します。
ステップ1:養生などの準備
剥がし検査を行う場所を特定したら、周辺の養生を行います。養生を行えば剥がし検査以外の部分を保護でき、検査による傷や汚れを防ぐことが可能です。
養生は養生用ポリシートやマスキングテープ、マスカーなどを使用して行います。
そのほか、外壁の水分量の測定やサーモカメラ診断、チョーキングの確認など、現状の外壁からできる検査がサイディングを剥がす前の事前準備です。
ステップ2:サイディングを剥がす
劣化症状が多い個所のサイディングを剥がし、内部の検査をします。
サイディングボード同士はシーリングの木目材でつながっているため、丁寧に剥がせば修復を最小限にすることが可能です。
ステップ3:外壁内部の確認・写真撮影
サイディングを剥がしたら、内部を目視で確認します。防水シートを剥がして構造材などの確認をしますが、内部をさらに破壊するような検査をするわけではありません。内部検査の代表的な項目が下記です。
内部検査の項目
- 通気胴縁の確認
- サイディングが直張りされていないか
- 断熱材や木材が腐食していないか
- 防水シートや構造材が腐食していないか
- 施工不良個所はないか
また、検査中は内部の写真撮影を行います。撮影した写真は検査の記録として報告書に使用されるので、依頼主も確認することが可能です。
ステップ4:サイディングの補修作業
内部検査が全て終了したら、サイディングの補修作業を行います。
剥がした防水シートやサイディングボードをきれいに戻し、シーリングを打てば原状回復が完了です。もしも内部に問題があった場合は、剥がし検査を行った業者が報告書と共に、必要な工事を提案してくれます。
サイディングの剥がし検査でよくある質問
剥がし検査でよくある質問をまとめました。剥がし検査について不安や疑問点がある人は、下記を参考にしてください。
-
サイディングの種類によって剥がし検査の方法は違いますか?
-
剥がし検査は、サイディングの種類による違いはありません。ただし、検査を行う業者によって手順ややり方が異なる場合があります。
-
剥がし検査で見つかった問題がない場合、再度検査を受ける必要はありますか?
-
剥がし検査で問題が見つからなかったのであれば、すぐに再検査を受ける必要はありません。
現状で劣化症状がないということなので、外壁に劣化症状が見られるようになったら再度検査を受けるのがおすすめです。
-
剥がし検査を行わなかった場合のリスクは何ですか?
-
剥がし検査を行わなかった場合のリスクは下記が想定されます。
内部検査の項目
劣化症状の原因がわからない
損傷や劣化を早期発見できない
適切な工事を選択できない
長期的に見るとメンテナンス費用が高くなる
-
剥がし検査を受けた建物の耐震性や防火性にどのような影響がありますか?
-
剥がし検査を受けた建物は、現状の問題点を洗い出して改善するため、耐震性や防火性を含む耐久性を維持できるようになります。また、剥がし検査を行ったことによる建物の耐震性や防火性への影響はありません。
サイディングの剥がし検査のまとめ
剥がし検査は「外壁を破壊する」という不安があるかもしれませんが、一部分のみを丁寧に剥がして行うので、原状回復できないほど破壊されるリスクは低いでしょう。
さらに、剥がし検査を行うと下記のようなメリットがあります。
内部検査の項目
- 損傷や劣化を早期発見できる
- 内部検査の結果によって適切な工事を選択できる
- 長期的にみてコストを削減できる
安心を得るために行う剥がし検査ですが、メリットだけでなく下記のデメリットもあるのでよく確認するようにしましょう。
内部検査の項目
- 検査費用が発生する
- 検査後に補修する必要がある
- 一時的な騒音、塵が発生する
剥がし検査を行えば、現状の問題点だけでなく将来的なリスクもアドバイスしてくれます。
経年劣化を心配している人や、前回のメンテナンスから期間が空いている人は、この機会に剥がし検査を受けてみるのがおすすめです。