現在のサイディングに大きな不満はないものの、サイディング張り替えなどの際に同じサイディングを採用して良いのか悩みますよね。改めてメリットやデメリットを整理することで、自宅に最適な外壁材がわかります。
性能やコスパなど重視するポイントで外壁材は変えられるので、張り替えのタイミングは自宅に最適な外壁材を見直すタイミングでもあります。
今回は、サイディングのメリットとデメリットをさまざまな角度から比較し、解説します。どの外壁材にするか悩んでいる人はぜひ参考にしてください。
おさえておくべきこと
- サイディングは施工価格を抑えたい人におすすめ
- 他の外壁材よりデザインの種類が豊富
- 約10年毎のメンテナンスを怠ると寿命まで持たない
- 外壁のつなぎ目が気になる人には不向き
サイディングの特徴とは?
サイディングは日本の戸建て住宅の外壁材としてもっとも選ばれている外壁材です。種類は窯業系・金属系・樹脂系・木質系の4種類で、適切なメンテナンスを行えば30年持つ耐久性があります。
施工は一定サイズのサイディングボードと呼ばれるパネルを張り合わせ、つなぎ目にはシーリングを充填して防水性を高めます。既に完成しているサイディングボードを張り合わせるため作業時間が短縮され、特殊な技術を必要としないため工事費用が安く済む点が人気の理由です。
サイディングは、ほかの外壁材より種類やデザインが豊富です。
サイディングのメリット・デメリット【比較表付き】
サイディングが多くの建物で採用される理由や、あまり知られていない懸念点を解説します。サイディングが向いている人や向いていないケースも紹介していきます。
メリット
デメリット
メリット1:施工価格を安く抑えたい方におすすめ
サイディングはモルタルやタイルに比べて施工価格が安いため、工事費用を抑えたい人におすすめです。使用するサイディングボードは工場で大量生産できるので、製造コストを抑えられます。
サイディングの価格は、メーカーや種類・デザインによって異なります。できるだけ施工価格を安くしたい人は、安く施工できる種類やデザインを業者に相談しましょう。
メリット2:業者の技術力に左右されたくない方におすすめ
ボードは工場で生産されるので、完成時の品質を安定して保ちやすくなります。
ゆえに、モルタルのような職人の技術による意匠性を好む人には向いていません。モルタルはサイディングより施工費用が高くなりますが、独特な風合いの外壁に仕上がります。
サイディングの施工は簡単なので、ほかの外壁材に比べて対応できる業者も多いです。
メリット3:施工期間を短くしたい方におすすめ
サイディングはサイディングボードを張り付けていくので、現場施工の外壁材と比べて工期が短いです。周辺環境に配慮して施工期間を短くしたい人は、サイディングを選びましょう。
施工期間を短くすると、騒音や匂いなどの周辺住民への迷惑が軽減されます。新しい外壁の建物に早く住める点もメリットの一つです。
騒音トラブルが起きたらどうする?
周辺住民から外壁塗装中の騒音のクレームが来たら、騒音の時間帯やどんな音かを確認し、業者に相談しましょう。工事内容は変えられませんが、騒音がする時間帯をずらすなどの対応をしてもらえる場合があります。
騒音に関してはこちらで詳しく解説しています。
>>外壁塗装がうるさい!?騒音が発生する期間と音量を解説。近隣への説明は必須
メリット4:意匠性の高い外壁にしたい方におすすめ
サイディングは各メーカーから豊富なデザインの商品が販売されており、自分好みの外壁が作れます。高級感のある外壁やナチュラルな雰囲気など仕上がりをイメージすると、デザインが決めやすくなります。
たとえば、サイディングには下記のようなデザインがあります。
デザインに迷ったらどうする?
デザインに迷ったら、既に完成している建物のデザインを参考にしましょう。身近に好みの建物がない場合は、ニチハやKMEWなどサイディングメーカーの公式サイトをチェックしたり、洋風や和風など建物タイプから決める方法があります。
サイディングのおしゃれなデザインについてはこちらで詳しく解説しています。
>>おしゃれなサイディング外壁を作るコツは?建物実例【37選】つき
メリット5:火災にも強い家にしたい方におすすめ
サイディングには強い耐火性があるため、火災に強い家にしたい人におすすめです。窯業系サイディングは不燃・または準不燃材料で国土交通大臣の認定を受けています。
樹脂系サイディングは塩化ビニル樹脂を原料としているため、燃えにくい素材です。木質系サイディングは無垢な板材の表面を加工して耐火性を高めています。
サイディングは厚みがあればあるほど耐火性が高くなります。
デメリット1:定期的なメンテナンスが必要
サイディングは早いものだと10年ごとにメンテナンスが必要なため、メンテナンス頻度を少なくしたい人には不向きです。メンテナンスは外壁塗装やシーリングの打ち替えなどがあり、メンテナンスしないと建物の耐久性が低くなります。
また、サイディングはシーリングや塗装で防水性を高めており、素材本体に防水性はありません。メンテナンスを怠ってひび割れやシーリングの剥離を放置すると建物内部に水が侵入し、腐食や雨漏れの原因になります。
見た目に変化がなければメンテナンスはしなくていい?
ひび割れやチョーキングなどの劣化症状がない場合も、外壁のメンテナンスは必要です。外壁は日々紫外線や雨水・物理的な衝撃などによって劣化が進んでいるので、目立った劣化症状がない場合も、10年経ったら1度業者に点検を依頼しましょう。
サイディングのメンテナンスについてはこちらで詳しく解説しています。
>>【プロ直伝】サイディングの正しいメンテナンス方法はこれ!適正時期や価格まで徹底解説
デメリット2:外壁の継ぎ目が気になる方には不向き
サイディングはボードを張り合わせるので外壁につなぎ目ができます。つなぎ目は外壁全体の一体感を妨げるため、デザイン性が悪いと感じる場合があります。
外壁のデザインに一体感やすっきりとした高級感を求める人は、一般的なサイディングには向きません。シーリングレス工法やモルタル、タイルなどがおすすめです。
サイディング種類ごとのメリット・デメリット【比較表付き】
サイディングには窯業系・金属系・樹脂系・木質系の4種類があり、種類ごとに特徴が異なります。
種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
窯業系サイディング | 耐久性が高い | 断熱性が低い |
金属系サイディング | 断熱性が高い | 施工価格が高い |
樹脂系サイディング | 耐候性が高い | 施工できる業者が少ない |
木質系サイディング | デザイン性が高い | 耐火性が低い |
窯業系サイディングは耐久性が高いが断熱性の低さに注意
窯業系サイディングはデザインが豊富で防火性・耐久性に優れています。原料のセメントは衝撃に強いので、台風のような強い風にも耐えられます。
デメリットは断熱性が劣るため、夏場は室内の気温が上がりやすいことです。年間を通して気温が高い地域はおすすめできないので、窯業系を採用する場合は遮熱・断熱効果のある塗料で塗装しましょう。
断熱性が低いとエアコンを使う頻度が高くなり、光熱費も高くなります。
金属系サイディングは断熱性が高いが施工価格を抑えたい人には不向き
金属系サイディングはシャープなデザインが特徴で、撥水性や断熱性に優れています。軽量で耐震性にも優れているため、外の気温に左右されずに室温を保ちたい人や、地震対策に重点を置いている人に向いています。
ただし、施工費用が高いです。窯業系サイディングと比較すると1.3〜2倍の費用がかかるため、できるだけ施工費用を抑えたいと考えている人には向きません。
サイディングで施工価格が安いのはどれ?
サイディングで施工価格が安く抑えられるのは、窯業系サイディングです。モルタルやタイルなどサイディング以外の外壁材と比較しても、窯業系サイディングは施工価格を抑えられます。
サイディングの施工価格についてはこちらで詳しく解説しています。
>>サイディングの施工価格は?工法や種類ごとの価格差まで徹底解説
樹脂系サイディングは耐候性が高いが施工できる業者が少ない
樹脂系サイディングは塩害や凍害・酸性雨などの影響を受けないため、耐候性が高い外壁材です。また、塗装ではなく顔料を素材の内部まで染み込ませるので色褪せにも強く、綺麗な外観を長持ちさせたい人におすすめです。
デメリットは施工できる業者が少ない点です。樹脂系サイディングのシェア率は1%ほどで、実績のある業者を探すのに時間がかかります。
樹脂系サイディングを採用したくても施工業者自体が少ない地域に住んでいる人は、業者が見つからず樹脂系サイディングを施せない場合があります。
木質系サイディングはデザイン性が高いが防火地域の指定場所には不向き
木質系サイディングは木のぬくもりを感じる独特なデザインが人気で、外壁に温かさやログハウスのような落ち着きを求めている人におすすめです。
素材である板材を最大限活かした外観に仕上げられますが、防火性に劣ります。自然の木材を使用しているため、素材そのものが燃えやすいからです。
防火性が弱い木質系サイディングは、防火地域の指定場所には不向きです。採用したい場合は、特殊加工して準防火地域でも対応できる外壁材に変更しましょう。
木のぬくもりを感じるデザインにしたいけど防火性が心配な人は、木目調デザインの窯業系・金属系サイディングがおすすめです。
サイディングメンテナンスごとのメリット・デメリット【比較表付き】
リフォームでサイディングを張る場合は、塗装・重ね張り・張り替えの3つの方法があります。外壁の劣化状況によって、メンテナンス方法が変わります。
工法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
塗装 | 外壁色を一新できる | 外壁内部の補修はできない |
重ね張り | 断熱性が高まる | 耐震性が下がる・内部の補修ができない |
張り替え | 外壁内部の補修ができる | 費用が高い |
塗装は色やデザインを一新できるが、内部の補修はできない
外壁塗装は軽度のひび割れや色褪せなど表面の劣化を補修し、外壁色を一新できます。塗膜が新しくなると防水性や耐久性も高まるため、定期的な塗装のメンテナンスが必要です。
ただし、外壁塗装は内部の補修は行えません。あくまで塗膜を一新する施工なので、下地の劣化や防水シートの腐食などは対応できない点がデメリットです。
外壁内部の劣化を見逃して外壁塗装すると、防水性や耐震性が低くなるため危険です。
重ね張りは断熱性が高まるが耐震性が下がる
重ね張りはカバー工法とも呼ばれ、既存の外壁の上に新しいサイディングを重ねる施工方法です。外壁が二重構造になって熱や音を通しにくくなるため、断熱性や遮音性が高まります。
ただし、カバー工法は耐震性が下がります。外壁材を重ねると重量が増すので、地震が発生した時にかかる負荷が増えるためです。また、外壁内部の補修もできないため注意しましょう。
カバー工法では、建物への負荷を抑えるために金属系サイディングが使用される場合が多いです。
張り替えは外壁内部の補修ができるが費用が高い
張り替えは下地や柱・防水シートなど外壁内部の劣化状況を確認し、補修ができます。下地が劣化していると塗装しても劣化状況は改善されないため、内部の損傷を見つけたら必ず補修してもらいましょう。
ただし、張り替えは既存のサイディングを剥がして新しいサイディングを張るため、費用が高くなります。既存のサイディングを剥がすと工期が長くなり、撤去費用も上乗せされるためです。
サイディングの張り替えにかかる工事期間は、25坪の建物でおよそ30日です。
サイディングの張り替えが必要なタイミングは?
サイディングの張り替えが必要なタイミングは、前回施工してから30年が目安です。30年前後になったら、目立った劣化症状がなくても耐久性が落ちているので、業者に張り替えを相談しましょう。
サイディングの張り替えについてはこちらで詳しく解説しています。
>>サイディングの張り替えは必要?費用からタイミングまで徹底解説
サイディングの張り方ごとのメリット・デメリット
サイディングは全体の工法の違いだけでなく、細かな部分でも施工方法が複数あります。固定方法や張り方の違い、シーリングの有無などを細かく解説します。
固定方法は金具留め工法2つ・釘留め工法の計3種類
サイディングの固定方法は釘打ち工法と2つの金具留め工法(通気金具留め工法・非通気金具留め工法)があります。
工法 | 特徴 | 使用状況 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
釘打ち工法 | サイディングにステンレス釘を直接打ち付ける | サイディングの厚みが14mm以下の場合 | 初期費用が安い | ひび割れやすい |
通気金具留め工法 | 厚みのある金具で通気層を作って金具で引っ掛ける | サイディングの厚みが15mm以上の場合 | 耐震性が高い | 費用が高い |
非通気金具留め工法 | 厚さ数ミリ程度の金具で胴縁に引っ掛ける | サイディングの厚みが15mm以上の場合 | 破損の防止 | 胴縁の状況に左右される |
釘打ち方法はサイディングの厚みが14mm以下の場合に採用される工法で、使うサイディングが薄いので材料費や工事費が安くなります。ただし、直接釘を打ち付けるためひび割れやすいデメリットがあります。
釘で固定されているとサイディングが伸縮できず、反って隙間から雨水が侵入しやすくなる恐れもあるため注意が必要です。
通気金具留め工法は上下左右に隙間ができるので通気性がよく、隙間があることで耐震性が高まるのがメリットです。ただ、使用する金具はほかの工法に比べて高く、手間もかかるため費用が高くなります。
非通気金具留めは、数ミリ程度の厚さがある金具を使うため、釘打ち工法より逃げができて破損が防止されます。ただし、胴縁が適切な場所に設置されていないと湿気や雨水が滞留する恐れがあります。
おすすめはもっとも安全性が高い通気金具留め工法です。
結露が生じやすいサイディングの直張りはNG
防水シートの上に直接サイディングを張り付ける直張り工法は、内部結露が生じやすいのでおすすめできません。直張りすると壁内の通気層が作れず、水や湿気の逃げ道がなくなるためです。
そのほかにも下記のようなメリットとデメリットがあります。
浮きや膨れ、剥がれは、外壁内部に水が溜まることが原因で起こります。したがって、2000年以降は直張り工法ではなく、外壁内部に隙間を作る通気工法が主流となりました。
横張り・縦張りはデザインだけでなく通気性能も違う
サイディングを横張りで張るか縦張りで張るかは、デザインだけでなく通気性も変わります。張り方次第でサイディングを張るとき裏に敷く胴縁の通気性が変わるためです。
胴縁は、横張りのときは縦方向に、縦張りのときは横方向に取り付けます。基本的に胴縁は縦胴縁のほうが優れており、下地の腐食なども起こりにくいので、サイディングは横張りのほうが通気性能が優れています。
そのほかにも横張りと縦張りは下記の違いがあります。
張り方 | メリット | デメリット |
---|---|---|
横張り | 通気性がよく、湿気が溜まりにくい デザインの種類が多い 施工が簡単で工事費用が安い | つなぎ目が多い メンテナンスコストがかかる |
縦張り | つなぎ目が少ない 水はけがいい | 通気性が悪い デザインがシンプル |
横張りはつなぎ目が多くなるので、シーリングが目立ち、劣化によりメンテナンスコストがかかります。縦張りはつなぎ目が少なく水はけが良いのでメンテナンスしやすいものの、シンプルなデザインが多いので、デザインにこだわりがある人には向きません。
継ぎ目が目立たないシーリングレス工法
シーリングレス工法は、サイディングボードの端の厚さを加工し、特殊な方法で緊密に張り合わせる工法のことです。シーリングがないと1枚板のような美しい外観になりますが、ほかにも下記のような特徴があります。
目地に汚れがたまらなくなるので美しさが持続しやすく、シーリング補修などのメンテナンスコストを削減できますが、完全なシーリングレスは難しいです。窓や屋根だけでなく、ダクトや配管周りなども対応できない場合があります。
また、施工には高度な技術が必要です。職人の技術が足りないと外壁に歪みが生じるリスクがあります。シーリングレス工法を採用するときは、実績のある業者に依頼しましょう。
サイディングのメリット・デメリットでよくある質問
サイディングのメリットとデメリットでよくある質問をまとめました。まだサイディングについて不安がある人は参考にしてください。
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サイディングはほかの外壁材に比べて耐久性が低いですか?
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サイディングの耐久性はモルタルと比較すると高いですが、タイルやALCと比較すると低いです。サイディングの中でも木質系サイディングは特に低く、耐用年数は10年前後となります。
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サイディングのメンテナンス費用はいくらかかりますか?
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サイディングのメンテナンス費用は、メンテナンス方法によって変わります。下記が25坪の建物を想定した場合の費用相場です。
・外壁塗装 80〜120万円
・重ね張り 200万円〜
・張り替え 300万円〜
サイディングのメンテナンス費用についてはこちらで詳しく解説しています。
>>サイディングの施工価格は?工法や種類ごとの価格差まで徹底解説
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デザインの違いによる注意点などはありますか?
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デザインの違いによる注意点は下記があげられます。
・凹凸がくっきりしているデザインは汚れが溜まりやすい
・選ぶ色によって汚れの目立ち具合が変わる
サイディングのメリット・デメリットのまとめ
適切なメンテナンスを行えば30年もつサイディングですが、ほかにも下記のようなメリットがあります。
サイディングのメリット
- 施工価格が安い
- 安定した品質を保ちやすい
- 工期が短い
- 豊富なデザイン
- 耐火性が高い
反対にサイディングのデメリットは下記です。
サイディングのデメリット
- 塗装など定期的なメンテナンスが必要
- 外壁に継ぎ目ができる
メンテナンスは塗装だけでなく、重ね張りや張り替えがあり、劣化状況によってやり方が変わります。メンテナンスはサイディングを長持ちさせるために必要なので、方法がわからない場合は専門業者に相談しましょう。