「表面の塗装が剥がれている」
「ポコポコと気泡のような浮き上がりがある」
外壁に上記の劣化が生じた場合、原因に凍害が挙げられます。外壁の表面だけでなく内部の構造にも悪影響を与える凍害は、発見したら必ず補修が必要です。
この記事ではサイディング外壁の凍害について、症状が起こる原因や凍害を防ぐための対策、補修の方法と費用相場などを詳しく解説します。
おさえておくべきこと
- 凍害は冬の気温が0度を下回る地域ではどこでも起こりうる
- 定期的なメンテナンスで凍害は防げる
- 凍害が起きた場合、大規模な補修では300万円以上かかる
サイディングの凍害とは?
サイディングの凍害とは外壁内に染み込んだ水分が凍結し、外壁が劣化・損傷する症状です。
凍害は、外壁が劣化しているサインの一つです。
本来、塗膜が機能している外壁には雨水が染み込むことはありません。
塗膜の剥がれや外壁のひび割れ、シーリングのひび割れといった劣化部分から雨水が侵入し、凍害が起こります。
凍害が発生しているなら、外壁塗膜は本来の役割を果たせていません。
たとえ発見時の症状が軽度だとしても、水分の凍結と融解が繰り返されるごとに損傷が大きくなっていきます。
凍害で起こるサイディングの劣化症状
凍害が進行すると、サイディングには以下の症状が現れます。
主な凍害の劣化症状
- 塗装がぽろぽろと剥がれ落ちる
- 表面が剥がれてサイディング内部が露出する
- 気泡のようなぽこぽことした浮き上がりが現れる
- ひびが入る
放置していると建物の美観を損なうだけでなく、外壁内部へ雨水が侵入し、カビや腐敗につながります。内部の木材や断熱材にも影響を与えるため、発見次第早めの補修が必要です。
外壁内部で起きる凍害は早期発見が難しい
表面だけでなく、外壁内部でも凍害が起きている場合があります。内部の凍害は外見からだけでは状況がわかりにくく、早期発見が難しいです。
発見してから対応するのではなく、凍害被害になる前に防止策を講じましょう。凍害対策を先に読みたい方はこちらをご覧ください。
凍害が起きやすい建物・箇所
凍害が起こりやすい外壁には、特徴があります。対策と早期発見のために、凍害が起きやすい外壁の種類と箇所を知っておきましょう。
窯業系サイディング
凍害被害の多くは、窯業系サイディング外壁の建物で起こります。
窯業系のサイディングは、セメントやセラミックなどの素材で作られています。この素材は水分を吸収しやすく熱膨張率も小さいため、凍害が起きやすいです。また、つなぎ目のシーリング劣化も凍害が起こる理由です。
冬の気温が0度を下回る寒冷地の建物
冬季の気温が0度を下回る地域の建物は、外壁内部に侵入した水分が凍結しやすく、凍害リスクが高くなります。寒冷地はもちろん、冬場には毎年雪の降る関東エリアや中部エリアでも、凍害は起こりうる症状です。
寒暖差が激しい地域の建物
寒暖の差が激しい地域の建物も、凍害のリスクが高くなります。
水分の凍結と融解を繰り返し、短期間でも一気に被害が深刻化するケースもあります。
お風呂やキッチンなど水回りの外壁
水回りは室内からの湿気が溜まりやすく、温度・湿度の差で結露が起こることがあります。サイディングの内側から水が染み込みやすく、凍害を招きます。
シーリング周辺
サイディングの凍害は外壁内部に水が侵入しやすい場所で起こります。目地部分のシーリングは、劣化によって隙間ができやすい部分です。シーリングがひび割れしていないか、定期的にチェックしましょう。
窓サッシの下
窓サッシの下は、雨水の滞留しやすい場所です。サイディング塗膜の劣化が起こりやすいことから、雨水が外壁内部に侵入することが多くなります。
サイディングの凍害を防ぐための対策【6選】
サイディングの凍害を防ぐために、あらかじめできる対策があります。凍害を事前に防ぎ、余計な補修費用をかけず建物を適切に維持しましょう。
適切な時期の外壁塗装
凍害の原因である水分は、塗膜の撥水機能が低下した外壁から浸水します。塗装の耐用年数や劣化具合を見て、適切な時期にメンテナンスを行い、凍害を防止できます。
窯業系サイディングの場合、7〜10年に一度の周期で塗装メンテナンスを行なうことが推奨されます。5~10年置きに定期点検し、色あせ・ひび割れなどを発見したら外壁塗装をしましょう。
透湿性のある塗料を使用する
透湿性とは、雨を防ぎ湿気を通す性質のこと。サイディングの表面に透湿性のある塗料を使うと、内部の水分が外部に逃げやすくなります。外壁の乾燥状態を保ちやすくなるため、凍害のリスクを下げられます。
適切な時期のシーリングメンテナンス
隙間の空いたシーリングからの浸水も、凍害の原因です。一般的にシーリングは5〜10年でメンテナンスが必要になります。
シーリング材の劣化が進む前に、適切な時期に補修を行いましょう。
金属系・樹脂系サイディングを採用する
金属系や樹脂系のサイディングは水分が内部に浸透しない素材でできているため、凍害が起こりません。凍害が起こりやすいエリアの場合は、凍結融解の繰り返しに強い外壁材を選ぶことも凍害防止策のひとつです。
自宅に適したサイディングの選び方は?
サイディング外壁には窯業系以外に、金属系・樹脂系・木質系があります。
金属系サイディングはコストがやや高いものの、撥水性や断熱性・耐震性に優れています。
樹脂系サイディングは耐候性に優れ、色あせに強いですが、施工業者が限られている課題があります。
それぞれメリット・デメリットがあるので、張替えなどのタイミングで比較し、ご自宅に最適な外壁材を選びましょう。
サイディング外壁の種類についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
>>サイディングのメリットとデメリットを徹底比較|自宅に最適な外壁はどれ?
サイディングの固定は通気工法を採用する
外壁内部の湿気を減らすために、通気工法を採用しましょう。建物の構造とサイディング外壁の間に空気の通り道を作り、壁内の水分を逃がし凍害を防ぎます。
従来の直張工法では空気層がなく、壁内部の高湿度や内部結露が生じやすいことが短所でした。2000年ごろから、現在は通気工法が主流となっています。
外壁を張替える際は、通気工法を選択している点を必ず確認しましょう。
外壁に雪が積もっていたらこまめに除雪する
外壁に雪が積もったままだと、長時間水分に晒されている状態になり凍害を招きます。特に日当たりが悪く雪が溶けにくい場所などに注意し、こまめに除雪しましょう。
凍害が起きたサイディングの補修方法と費用相場
凍害の症状が起きた場合、症状の進行具合によって補修方法が変わります。4パターンの補修方法と、その費用相場をお伝えします。
劣化状況 | 劣化範囲 | 補修方法 | 費用相場 |
---|---|---|---|
軽度 | 一部分 | 部分補修 | 1万円~ |
軽度 | 複数or全面 | 外壁塗装 | 80万円~120万円 |
重度 | 一部分 | サイディング部分張替え | 10万円~30万円 |
重度 | 複数or全面 | サイディング全面張替え | 300万円以上 |
部分補修【1万円~】
部分的に軽微な劣化の場合は、その部分だけを補修できます。外壁が剥がれているところをパテで埋め、上から防水塗装します。
ただし、あくまで応急処置です。凍害は外壁塗膜が劣化しているサインなので、外壁全体に劣化が及んでいないかを検査し、適切なメンテナンス依頼をおすすめします。
外壁塗装【80万円~120万円】
サイディングに全体的な劣化が見られる場合は、外壁塗装が効果的です。凍害によって起きた塗膜の膨れや剥がれなどを補修し、表面の塗膜を新たに塗り直します。外壁全体の防水機能や耐候性などを復旧させるメンテナンス方法です。
相場の価格差は、選択する塗料が主に影響します。
サイディング部分張替え【10万円~30万円】
塗装で補修できない凍害症状でも、一部分のみなら、劣化が重大な箇所のみのサイディング張替えが可能です。該当のサイディングを剥がし、新しいサイディング外壁を施工します。
費用相場は、サイディング1枚あたり10万円ほどからです。ただし、補修部分が2階以上、または縦張サイディングの場合には足場代がかかります。この場合も、外壁全体の塗膜に劣化がないかを確認し、必要であれば塗装と同時におこないましょう。
サイディング張替え【300万円以上】
凍害被害が重大な場合は、サイディングの全面張替えが必要になります。元々あるサイディングを剥がして、新しい外壁材に張替える施工方法です。
費用相場は300万円以上、工事期間は30日以上かかります。サイディングを一新するため、元々のサイディングの処分代など、他の施工方法よりも費用がかさみます。
サイディングの種類を変えたい場合や、張り工法を変えたい場合にも、全面張替えがおすすめです。
サイディングの適切なメンテナンスはいつ?
塗装の種類によって耐用年数が異なりますが、前の塗装から10年~20年経過していたら、メンテナンスを提案します。
また、耐用年数を経過していなくとも、不具合が起きている場合は劣化の恐れがあります。
外壁メンテナンスの適切なタイミングと方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
>>【プロ直伝】サイディングの正しいメンテナンス方法はこれ!適正時期や価格まで徹底解説
サイディングの凍害でよくある質問
サイディングの凍害についてよくある質問をまとめました。ご自宅の外壁に凍害のご不安がある場合の参考にしてください。
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サイディングの凍害に火災保険は利用できますか?
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一般的な火災保険では、サイディングの凍害による損傷は補償の対象外となっています。凍害による修繕費用は自己負担になるケースが多いです。
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凍害の劣化と紫外線劣化を区別するポイントはありますか?
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凍害の劣化と紫外線劣化では、症状の特徴が異なります。
凍害劣化では外壁表面の剥がれや浮き上がりが起こることが多く、紫外線劣化は変色や退色が特徴的。ひび割れなどどちらが原因でも起こる症状では区別が難しいです。
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雪の降らない地域なら凍害は起きませんか?
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雪が降らない地域でも、気温が0度を下回る日があれば凍害のリスクはあります。
寒暖の差が大きい地域では特に注意が必要です。
サイディングの凍害まとめ
サイディングの凍害は、外観を損なうだけでなく、放置していると高額な補修負担に迫られる大きな問題です。
この記事のまとめ
- 凍害は外壁劣化のサインのひとつ
- 凍害の原因は、サイディング内部の水分が凍結と融解を繰り返すこと
- 凍害は外壁内部に水が侵入しやすい箇所で起こる
- 適切な時期に外壁メンテナンスを行なうことで、凍害を防げる
- 凍害の症状を見つけたときは、早めに補修・塗装メンテナンスをおこなう
凍害は、寒冷地や寒暖の差が激しい地域の建物、水回りの外壁などで起こりやすい被害です。
適切な外壁塗装やシーリングのメンテナンス、耐凍害性の高い材料の選定など、さまざまな対策によって防げる症状です。
大規模な修繕にならないよう、定期的な点検と早期の補修が大切と心得ましょう。